アプリケーションやシステムの課題を発見するために、ユーザーの行動を階層的に分解して視覚や操作レベルまで明らかにする方法。ユーザーが目的を達成するために必要な前提知識や環境条件、設備や関係者の要因も含めて分析できる。
現場での問題発見ができるため、人員配置や教育現場、業務フローの改善にも活用される。

階層型タスク分析の例
タスク分析をすることで、問題が発生する正確なタイミングや原因を特定できる。前提知識の不足やシステムトラブルなど、タスクが完了しない課題を解決するだけでなく、作業を自動化する、不要な操作を省略するといった利便性の向上も行える。
銀行のテレオペ業務を分析する
銀行の「キャッシュカード紛失窓口」オペレーターのタスクを例に、階層型タスク分析してみる。
1. 分析するタスクの特定
「キャッシュカードの再発行」をタスクとし、「0」の番号を振る。
2.ユーザー行動の調査
エスノグラフィー調査やシャドーイングを利用して、再発行手続きがどのように行われているのかを調査する。顧客とのやりとりだけではなく、PCの操作や上司への確認など周辺環境や業務フローの行動も調査対象とする。

シャドーイング風景 引用元:live work – tool-shadowing
3.調査を元にタスク分割
調査結果から、タスクを達成するための行動を4〜8個のサブタスクに分割する。
再発行する手続きには、「1.本人確認」、「2.紛失キャッシュカードの利用停止」、「3.キャッシュカード悪用履歴の確認」、「4.登録住所に差異がないか確認」、「5.再発行手続き」に分割した。
4.行動レベルまでタスク分解
次に、「見る」や「行う」など、行動レベルになるまでサブタスクを分割する。
階層的に連番を付けて親子関係がわかるようにしておく。「本人確認を行う」サブタスクであれば、「顧客の名前と漢字を尋ねる」、「顧客システムの検索画面の名前入力欄にマウスカーソルをいれる」など、行動内容がわかるレベルまで分解する。
5.課題の発見と改修
タスク分解することで、アプリケーションの課題や手順の問題を発見することができる。
UIでの問題発見
生年月日を入力する際、0〜100歳まで行きている方を考えるとプルダウンから選択するのは時間がかかることがわかった。また、ユーザーが西暦で解答するか、和暦で解答するかはその時々で事前に理解するのは不可能だ。そこで、西暦と和暦を分けて入力できるようにした。
オペレーションの問題発見
顧客から聞いた名前・漢字と顧客情報を照合する際に、漢字の再確認をすることが多かった。タスク分析の結果、顧客情報を検索して表示する間に、聞いた漢字を忘れてしまうことがわかった。顧客からはまず名前だけを確認し、顧客情報を検索してから漢字を聞くオペレーションに改善した。
ユーザー視点は必須!
階層型タスク分析を効果的にするには、徹底したユーザー調査が先になければならない。不明なタスクを憶測で記載し、都合良く解釈しないよう注意する。一度の分析で終わりにせず、改善したアプリケーションや業務フローを再度分析し、十分に課題が解消されたか、新たな課題が発生していないかを確認する。
参考サイト
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