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社会的手抜き Ringelmann effect

共同作業を行うとき、人数に比例して1人当たりの生産性が下がる現象

集団で共同作業を行う方が効率的だと思われがちだが、1人で作業するよりも効率は落ち、1人当たりの生産性は下がってしまう。

私達の仕事で言えば、会議で「他のメンバーが発言してくれるからいいや。」、「Aさんと似たアイデアだし、言わなくてもまぁいいか。」と手を抜いてしまう状況が当てはまる。

社会的手抜きは、1931年にフランスの農学者Maximilien Ringelmannマクシミリアン・リンゲルマンが提唱した。リンゲルマン効果、フリーライダータダ乗り現象、社会的怠惰とも呼ばれる。

マクシミリアン・リンゲルマンの肖像

マクシミリアン・リンゲルマン氏
画像引用:Ringelmann effect

内発的動機の低下によって発生

社会的手抜きは、周囲の環境や心理的要因が元になり、責任感の欠如や、自発的に行動したくなる内発的動機の低下によって発生する。

以下、代表的な4つの要因を紹介する。

  1. 「他の誰かがやるから自分はやらなくていい」と感じるとき
  2. 「評価されていない」と感じるとき
  3. 「参加メンバーが怠惰で、自分だけ頑張っても馬鹿馬鹿しい」と感じるとき
  4. 「やりがい」を感じないとき

綱引き実験でわかった
「集団になると人はサボる」

リンゲルマン氏は、綱を結び付けた重りを引く際の、1人当たりのパフォーマンスを数値化する「綱引き実験」を行った。

1人で63kgの重りを引いた状態を「100%の力」と定義して、2人、3人、8人と人数を増やし、引けた重りの比較を行った。

結果は、人数が増えれば増えるほど、1人当たりのパフォーマンスは下がるものだった。8人の場合では1人当たり31kgしか重りを引けておらず、1人のときと比べて49%の力しか出していなかった。

リンゲルマンの綱引き実験

人数が増えるほど、1人が出す力が減っていった

綱引き実験結果

社会的手抜きを予防する方法

社会的手抜きが発生すると、プロジェクトの生産性や、事業の売り上げにも悪い影響を与えてしまう。いくつかの予防方法を紹介する。

人数制限を行う

Amazonで使われている「2枚のピザルール(Two Pizza Rule)」

2枚のピザ

ピザ2枚を3人で食べるのは大変だし、10人だと足りない感じがする

集団になると社会的手抜きが発生するため、AmazonのCEOジェフ・ベゾス氏は、チームの構成人数を「2枚のピザが行き渡る人数にする」ルールを提唱した。

チームメンバーを5人以上、9人以下での構成が推奨されている。9人以上だとメンバー数に比例して、メンバー間の摩擦や、情報の伝達ミスなども発生しやすくなり、生産性が下がる。

一方で、少人数(目安として5人未満)だと、明らかに間違っている意見だと感じても、多数派に流される集団思考に陥りやすくなってしまう。そのため、ピザ2枚を分けるのにベストな、5〜9人で構成している。

アジャイル開発でも適切なチーム人数は10人以下

短期間で開発とリリースを繰り返し行うアジャイル開発でも、10人以下の小規模のチームに分けて行われている。

アジャイル開発には、コミュニケーションやチームワークを重視した「スクラム開発」というフレームワークがある。スクラム開発では、3~9人でチームを構成することが推奨されている。

3人未満だと、メンバー間の相互作用が少なく、個人のスキルに依存しがちになるため、開発チームとしての動きが鈍くなり、生産性の向上に繋がりにくくなる。

また、10人以上だと、2枚のピザルールと同じく、メンバー間の摩擦が大きくなり、開発効率が落ちてしまう。そのため、3〜9人で構成している。

参考URL:The Scrum Guide

人数が増えるとコミュニケーションが複雑になる

チームメンバーが増えるほど、コミュニケーションの問題が増えてしまう

画像引用:What is two pizza rule? – Definition from WhatIs.com

個人に責任を持たせる

責任という文字を背景に、ガッツポーズをする人

自分の動きが他人に明らかになると、社会的手抜きがしにくくなる。そのため、メンバー1人ひとりの主体性が発揮できるようにする。

例えば、小タスクの責任者にする、役割分担を明確にする、仕事の意義や重要性を伝えるなどの方法がある。

人は、自分に裁量権があるときに主体性や創造性を発揮しやすく、自分の存在意義を感じられる。そのため、自分の裁量で出来る仕事に対しては熱量が上がり、やりがいを感じて積極的になる。

貢献実感を持たせる

他人に感謝されて嬉しがっている人

自分の働きや行動が、誰かのためになっていると実感すると、内発的動機の低下を回避できる。

人は、人に必要とされると、他人から認められていると感じ、自己肯定感や承認欲求が満たされる。そのため、より物事に積極的に取り組めるようになる。

貢献実感を持たせるためには、メンバーが何に貢献したいか把握したり、行動を具体的に褒めたりするのが効果的だ。

関連用語

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エンハンシング効果

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参考リンク

東京在住のWEBデザイナー。 趣味:映画鑑賞、気分がノってる時の料理 好きな食べ物:ビリヤニ、野菜、虫 マイブーム:テキスト読み上げ機能での読書

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