一般的に知られている知識や事実に関する記憶で、「三角形の内角の和は180度」といったものがあてはまる。
すぐには忘れない記憶である長期記憶の中でも、思い出そうとして記憶をたぐる顕在記憶に分類される。
なお、個人の出来事や経験に関する記憶は、エピソード記憶と呼ばれる。
意味記憶の提唱者は不明であるが、意味記憶とエピソード記憶の区別はカナダの心理学者Endel Tulving氏が1972年に提唱した。
意味を覚える努力した記憶
意味記憶は「覚えよう」と意識して記憶する。かけ算の九九は一度で覚えられないので、何度も繰り返して覚える努力が必要がある。
記憶を定着させる能力は10歳を過ぎると衰えるため、九九は小学校2年生までに覚えさせている。
情報を整理して記憶する
意味記憶の記憶する方法として、「机」「村」「枝」を「木へんの漢字」のように情報をカテゴリー分けした状態で保持する事が多い。また、「結果」の反対語を「原因」として関連づけする。
意味記憶の情報構造は研究が進められており、代表的なものに「階層的ネットワークモデル」と「活性化拡散モデル」がある。
階層的ネットワークモデル
「階層的ネットワークモデル」は、情報が階層的に整理される記憶モデルで、アメリカの認知心理学者Allan M. Collins氏とM. Ross Quillian氏が提唱した。
図に記載されている「サメ」は「魚」に含まれ、「魚」は「動物」に分類されている。上位にある階層の特徴を引き継いでいて、「サメ」を「魚」と覚えていれば「エラがある」ことや、「魚」が「動物」の特徴である「呼吸する」ことを思い出すことができる。
活性化拡散モデル
「活性化拡散モデル」は、情報同士をさまざまな意味合いで関連付ける記憶モデルで、階層ネットワークモデルを提唱したコリンズ氏と認知心理学者のElizabeth F. Loftus氏が提唱した。
「赤」という単語から「火事があった」ことや「消防士に来てもらった」ことなどを芋づる式に思い出すことができる。
意味記憶の性質を利用して効率よく覚える
覚えても数日経つと忘れてしまう漢字や英単語のスペルは、カテゴリー分けしたり他の知識と関連づけたりすると覚えやすく忘れにくい。
画数が多く覚えにくい漢字の場合、ただやみくもに暗記するよりも、意味付けた方が効率よく覚えられる。
「契約」で使う「契」という字は、複数の漢字を組み合わせた会意文字で、人の体を刀で刻み付ける意味を持つ。人の肌や骨に印を刻み付けて破れない約束を誓うのが「契約」の由来だと記憶すると覚えやすい。
関連用語
参考文献
- 太田信夫 多鹿秀継、(2000)、記憶研究の最前線、45-67
- 山内光哉 春木豊、(2001)、グラフィック学習心理学、241-247