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TTS(Text-to-Speech) Text-to-Speech

文字情報を人工の声に変換して読み上げる技術であり、AIによって自然な音声で情報を耳から伝えることができる。

TTS(Text-to-Speech)はテキスト(文字)情報を人工の声に変換して読み上げる技術である。コンピュータやスマートフォンに入力された文章を機械が音声として出力するので、目が不自由な人や文字を読むのが苦手な子どもでも情報を耳から理解できる。AIを使った音声合成により自然な声の読み上げが可能になり、音声アシスタントやカーナビ、ニュース読み上げなど多くの製品やサービスに組み込まれている。

TTSの仕組み

TTSは主に三つの処理を行う。まず、入力されたテキストを「言語解析」で分析する。言語解析では文の構造や単語の読み方、記号や省略語の展開、アクセントや区切り位置を決める。次に「プロソディ生成」で抑揚やリズムなど、読み上げる際の感情やリズムを決める。最後に「音声波形生成」で、設定された声のモデルを使って音声波形を生成する。現代のシステムではディープラーニングを用いてテキストからスペクトログラムを予測し、それをボコーダーが音声波形へ変換するため、自然な声質が得られる。

TTSの仕組み

TTSの仕組み

特徴

  • 自然な音声
    最近のTTSはニューラルネットワークを利用しており、人間らしい自然な抑揚や感情を再現できる。利用者は声の種類や性別を選び、音量やスピード、ピッチを調整できる
  • 多言語対応
    多くのTTSシステムは複数の言語に対応しており、国際的なサービスや外国語学習に活用できる。
  • 即時生成
    入力されたテキストをほぼリアルタイムで音声に変換できるため、チャットボットやナビゲーションなど即時応答が求められる用途に向いている。
  • アクセシビリティ
    視覚障害者や読み書きが苦手な人が文字情報にアクセスする手段として重要である。教育現場では子どもの理解を助ける補助技術として利用されている

提唱・開発の歴史

人工的な声を作ろうとする試みは18世紀までさかのぼる。1791年にハンガリーの技術者ヴォルフガング・フォン・ケンペレンが「話す機械」を制作し、手動操作で母音や子音を出せる装置を考案した。19世紀にはジョセフ・ファーバーが改良版の「ユーフォニア」を発表したが、操作が難しく普及しなかった。
1937〜1938年にはアメリカのベル研究所の技術者ホーマー・ダッドリーが、電子的に音声を合成する「Voder(ボーダー)」を開発し、1939年のニューヨーク万国博覧会で公開実演して世界中の注目を集めた 。Voderは振動源となるブザーとホワイトノイズをフィルタに通して母音や子音の音色を作り、鍵盤とフットペダルで制御する装置であり、電子的な音声合成の先駆けとなった。
1970年代以降、コンピュータの発展に伴って文字を入力して自動的に読み上げるデジタルTTSが登場した。MITで開発された「MITalk」やDEC社の「DECtalk」(1984年)は実用的なTTSとして知られ、物理学者スティーブン・ホーキング博士の発話装置として使われた。21世紀に入ると深層学習を使ったニューラルTTSが登場し、より自然で流暢な音声が生成できるようになった 。

デザイン上での利用方法

デザインにおいてTTSは、文字情報に音声というもうひとつの表現手段を追加する機能として活用できる。WebやアプリのUIにTTSを組み込むことで、ユーザーがテキストを読まなくても内容を把握できるようになる。特に以下のような活用が考えられる。

  • アクセシビリティ向上
    視覚障害者向けに、ページの主要な文章やボタンのラベルをTTSで読み上げる仕組みを設ける。スクリーンリーダーだけでなく、Webサイト内に「読み上げ」ボタンを設置して、すべての利用者が簡単に音声を利用できるようにする
  • 教育コンテンツ
    読み聞かせ教材や語学アプリで、テキストと音声を同時に提示することで子どもの学習を助ける。日本語と外国語の音声を切り替えられる機能もデザインに組み込める。
  • チャットボット・音声アシスタント
    入力した文章を即座に音声で返すことで、目線を画面に向けられない状況でも対話が可能になる。TTSを使う場合、キャラクターやブランドに合った声のデザインを検討すると、ユーザー体験が向上する。
  • 記事やニュースの朗読
    長い記事を読む時間がないユーザーに対して、記事本文をTTSで朗読する機能を提供する。再生速度調整やバックグラウンド再生などUXに配慮した設計が重要である。
  • プロトタイピング
    コンテンツデザイナーやUXリサーチャーがテスト段階で文章を音声化し、ユーザーがどのように受け取るかを検証するためにTTSを利用する。

    「この場面に使える」シーンと具体例

    • 通勤や家事をしながらの学習
      Podcast感覚でブログや記事を耳で聞けるようにすると、電車やバスでの移動中や料理・掃除中にもコンテンツを消費できる。
    • 視覚障害者のウェブアクセス
      文字サイズを大きくしても読みにくいユーザー向けに、記事本文を自動で読み上げるボタンを設置する例。例えば、自治体のウェブサイトで災害情報を読み上げることで、緊急時にも多くの人が情報を得られる。
    • カーナビゲーション
      画面を見る余裕がない運転者のために、TTSで曲がり方や案内を読み上げる。案内文の長さやタイミングを調整するデザインが重要である。
    • スマートスピーカーのニュース読み上げ
      朝の支度をしながら最新ニュースの要約を聞けるサービスで、ニュース記事のテキストをTTSで変換して配信する。ユーザーは「今日のニュースを教えて」と話しかけるだけで良い。
    • 商品説明の音声化
      ECサイトにある洋服や家電の説明文をTTSで読み上げることで、ユーザーが目を休めながら情報を得られる。特に高齢者向けサービスでの利便性が高い。
    • ユーザー調査の読み上げ
      インタビューやアンケートの質問文をTTSで読み上げることで、調査対象者が設問を聞きながら答えられるようにする。読み上げの速度や声のトーンを調整してストレスを減らす。

    関連用語

    GAN

    ディープラーニング

    参考リンク

     

    フリーランスのエンジニア。 2001年東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。独立系ソフトハウス(システム開発)、株式会社シンプレクス(金融機関向け取引システムの開発・運用)を経て2011年よりフリーランス。フリーランスになってからは、スマホアプリ、サーバーサイド(Java,Railsなど)と様々なプロジェクトで開発に携わる。現在は会社員時代にお世話になった企業様でRPAプロジェクトで開発を担当している。 ダイエットのためにランニングとヨガを5年ほど続けているが、どちらもガチになる一方で全く痩せないことが最近の悩み。

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