提示したタスクに沿って、ユーザーにサービスを利用してもらいユーザビリティを検証する手法。サービスを操作している様子を観察して、ユーザーが操作しづらい部分を発見し、改善点を洗い出すことが目的である。
ユーザビリティテストの種類
ユーザビリティテストは大きく分けて「ラボ型」「リモート型」「簡易型」の3種類である。
それぞれメリット、デメリットが存在するため、目的に応じて適切なものを選択することが大切である。
ラボ型
インタビュールームなどで、被験者が操作している様子を3〜5人体制で観察したり、使った感想をヒアリングする。テスト中の被験者の発言内容を元にユーザビリティを評価するやり方。
取得データの質 | ユーザーの細かな動きや発言など、多くの情報が得られる |
準備時間 | 質問事項作成や日程調整などテストに向けて準備するものが多い | 費用 | 会場設営費など多くの費用がかかる |
リモート型
マイクや録画用のカメラを被験者に用意してもらい、自宅などでテストを実施してもらう。
事前に設計したテストメニューに基づいて、被験者一人でテストを実施する。完了したら録画していたテストの様子を送ってもらい、動画の内容を元にユーザビリティを検証する手法。
取得データの質 | 表情の確認や発言の掘り下げができない |
準備時間 | 当日実施してもらうテストメニューを作成する必要がある | 費用 | 対話型に比べ、低コストで実施可能 |
簡易型
同僚や友人・家族など、身近な人に被験者となってもらいテストする。
事前準備をあまり行わず、素早く始められる手法。
取得データの質 | 協力してもらう人がターゲット層でない場合、得られるデータ精度が落ちてしまう |
準備時間 | ほとんど時間をかけず、大まかなチェック項目を作成する | 費用 | 一番低コストで実施可能 |
ユーザビリティテストは何人で実施するべきなのか
Jakob Nielsenヤコブ・ニールセン氏は、被験者は5人で十分であると主張している。
以下のグラフはテストユーザー数と問題発生件数の関係性を表したものである。
5人のユーザーに対してテストを行うことで約80%の問題を発見することができる。
手の込んだユーザビリティテストはリソースや予算が多くなってしまう。
5人でのテストを一回だけで終わるではなく、見つかった問題を修正し、再度別の5人のユーザーで検証することで、一つのユーザビリティテストを10人のユーザーに対して実施することよりも、より多くの効果を得ることができる。
被験者を集めることができない場合は一人でもテストをすることができる
ユーザビリティテストはコストがかかると思われているが、Jakob Nielsenヤコブ・ニールセン氏が提唱したセルフユーザビリティテストであれば、コストをかけず1人でも実施できる。

提唱者:ヤコブ・ニールセン氏
写真:ヤコブ・ニールセン
セルフユーザビリティテストとは、自分が被験者となってテストをする手法である。テスト対象の開発に携わっていないことが条件であるが、特別な準備がなくても実施できる簡易型ユーザビリティテストである。
ニールセン氏は、何度もテストする重要性を説いている。課題を素早く見つけて、すぐに改善することが大切なので、ユーザビリティテストを実施する際は、時間をかけすぎないことが大事である。
UX DAYS TOKYOでは、プロジェクトメンバーや社内でできる簡易的なセルフユーザビリティテストを学ぶことができるワークショップを開催している。
実際のユーザーにテストしてもらうことが必要
セルフユーザビリティテストで不具合を見つけることもできるが、ユーザビリティを上げるには実際のユーザーにユーザビリティテストを実施してもらう必要がある。ユーザーにテストしてもらう理由は、「作成者がユーザー視点を持つことは難しいため」と「ユーザー視点を正しく伝えることが難しいため」の2つである。
作成者がユーザー視点を持つことは難しい
作成者はサービスを開発しているうちに、ユーザー視点から離れてしまうことがある。何度もサービスを見ているため、何も知らない状態のユーザーが抱く違和感に気づきにくく、自力で改善することは困難である。
ユーザビリティテストを行うことで、本当にユーザー視点で作られているかどうかを確認することができる。
ユーザー視点を正しく伝えることは難しい
チームで改善作業を行う際に、課題を言葉で説明してもチームメンバー全員に正しく内容を伝えることは難しい。
ユーザビリティテストでユーザーが操作している様子をチームメンバーに見せることで、ユーザーが困っていることを直感的に伝えられる。テスト結果を振り返ることで、チーム全体で改善するべき事柄を共有できる。