通常のプロトタイプよりも未来志向で、組織やプロジェクトの「あるべき未来の姿(ビジョン)」を、視覚的・体験的に示す試作物である。
具体的には、ユーザーインターフェースのモックアップや画面遷移、あるいは概念的なストーリーボード・動画などにより、「もしこうあったら良い/こうしたい/こうなるだろう」という未来の体験を、関係者(ステークホルダー、経営陣、開発チーム、ユーザー等)と共有・検証するためのツールである。
提唱者
明確な起源はなく、複数のデザイナー・UX/プロダクトマネジメント実務者/ブログ執筆者によって共有されつつある概念である。
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Design Methods Finder によれば、「Vision Prototypes」はモックアップ/スクリーンモックアップの線形またはインタラクティブな画面のシーケンスとして定義され、意思決定者/顧客をワクワクさせ、プロジェクトのさらなるフェーズへの資金調達などを目的とするものとして挙げられている。
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「Visiontypes(ビジョンタイプ)」という用語が比較的近く、「将来3〜5年先を見据えた組織のビジョンを示すインタラクティブなプロトタイプ」として用いられており、この用語を用いている著者には Sean Jalleh 等がいる。
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また、Medium や UX 系ブログで「Vision prototypes align the team using images in addition to words(言葉に加えてイメージを使ってチームの焦点を共通化する)」という形で、「vision prototype」という用語が広まりつつある。
具体的な事例
シーン | 利用目的 | 具体的な事例 |
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新規プロダクトや新機能のコンセプト提示時 | ステークホルダー(経営者、出資者、マーケティング部門など)に未来の体験を視覚的に示し共感を得るため | スマートホーム製品を企画するチームが、「未来の住まい」でどのようなIoTデバイスがどのように動くかを、高忠実度スクリーンモックアップ+擬似操作アニメーションで見せ、予算を承認してもらった例 |
UX/UI デザイン検討中 | 実際の完成まで行かない段階でユーザー体験の流れ・感覚を確認し、方向性のズレを早期に検知するため | モバイルアプリのオンボーディング・体験を vision prototype で作成し、ユーザーテストをして、ユーザーが迷いそうな画面遷移を改善した例 |
社内アライメント/組織戦略共有時 | チーム間で目指す方向性を共通化し、目標・品質基準を明確にするため | 経営ビジョンとして「5年後の顧客体験」を interactive vision prototype(画面+ナラティブ)でまとめ、営業部・開発部・カスタマーサポート部がそれぞれの役割を理解するためのワークショップを行った例 |
コンテンツデザイン(映画・ゲーム・エンタメ)企画初期 | 物語・世界観・ユーザー参加/没入感など抽象的な要素を体感レベルで示したいとき | ゲームのプロトタイピング段階で、ビジュアルノベル形式のダミー画面を用いてプレイヤーの視点で没入感を伝える prototypical demo を作成し、企画を通すためのピッチ資料に用いた例 |