ユーザーが、プロジェクトやサービスに接触するポイントのことを示す。具体的には、メディアや販売店、製品、ウェブなど、様々なものが上げられる。タッチポイントは、UX設計を行う上で重要な要素で、企業ブランド設計にも利用され、ユーザーと企業・組織間の関わりも明確にすることができる。タッチポイントを最適化することで、ユーザーの定着率向上やファン獲得が期待できる。
世界的に有名なUXデザインコンサンルファームであるアダプティプ・パス社のCris・Risdon氏は、タッチポイントを「やりとりの周囲のコンテキスト」と定義している 。(Un -sucking Touch point)
タッチポイントの例
カメラアプリのタッチポイント図解
イタリアのUXデザイナー、Gianluca Brugnoli氏が「ユーザーエクスペリエンスの点をつなぐ」という記事の中で紹介したカメラアプリのタッチポイント図解は、「ユーザーが写真を撮影して共有する」行動をシミュレートしたもので、ユーザーの行動とデバイスが交差したタッチポイントがどこで発生しているかを表している。
カメラアプリを使用したときに発生する4つのタッチポイント
- デジタルカメラで写真を撮影
- スマホで写真を管理
- PC用アプリで写真を公開・他のユーザーの写真を閲覧
- PC用アプリで写真を共有
具体的なユースケースをマッピングし、ユーザーのタッチポイントを考えることで、どんな状況・心理で使用したのか、ユーザーが求めているもの、離脱の要因の特定に利用でき、同時に、組織のどの部署とユーザーが関係しているのかも示すことができる。
- 組織とユーザーが接触し、価値が生じる手段や方法
提唱者:ジム・カルバック(マッピング・エクスペリエンス著者) - ブランドとユーザーの間で起こる全てのやりとり
提唱者:クリス・リスドン(アダプティプパス社 )
スイスのアクセルロム社が作成した「360°タッチポイントマトリクス」は、代表的なタッチポイントをリスト化し図解したもので、チャネルごとにまとめられている。この場合は、POS、1対1、間接、およびマスコミで、ユーザーの周りにある手段・方法・場所を包括的に表している。
タッチポイントを分類する
タッチポイントがユーザーのニーズや要望に対応していなければ、ずさんな印象を与えてしまう。重要なタッチポイントを見極めることが要となる。
例えば、Googleは多くのサービスを提供しているが、電話窓口の問い合わせ対応を行っていない。その代わり、オンボーディング・FAQ・コミュニティを利用しユーザー自身で問題解決できる仕組みを提供している。そのベースは、誰でもわかりやすいサービス提供を心がけているからである。電話の一時的な対応よりも、時間とコスト削減になるシステム改善に重点をおくことが、結果的に会社の利益拡大になると考えられている。
タッチポイントを考えるための3つの分類
タッチポイントごとに、重要度や調査コストは変わるので、UX設計する時に選ぶ必要がある。タッチポイントを考えるための切り口は、大きく分けて3つに分類される。
- ブランドからの発信
- TVコマーシャル
- チラシ
- 新聞広告、パンフレット
- 販促メール
- ニュースレター
- デバイスを使用したやりとり
- ウェブサイト
- アプリ
- オンラインチャット
- ソフトウェア
- 電話
- 顧客用ホットライン
- 対人的なやりとり
- 販売員
- 営業担当者
- 電話でのカスタマーサポート対応
タッチポイントとチャネルの違い
タッチポイントとチャネルは混同されやすいが違うものだ。チャネルはTVやCMなど媒体を示すが、タッチポイントはチャネルを含むユーザーの行動・状況(コンテキスト)を指す。
例えば、TVコマーシャルを放送する時間とユーザーが閲覧する状況を踏まえることで、見えてくるものがある。トイレの洗剤のCMは、食事の時間に放送すると食事がまずくなりユーザーに良い印象を与えない。結果としてブランドの印象を悪くする可能性がある。媒体のチャネルという視点だけでなく、ユーザーの状況を把握して、コンテンツをどのように出すのかがタッチポイントなのだ。
ユーザーのタッチポイントを理解し最適化しよう
タッチポイントでユーザーが望んでいることを明確にし、対応に問題があれば、優先度の高いものから改善する。クリス・リスドン氏はタッチポイントが最適であるかを4つの切り口で確認する必要があると示している。
ユーザー満足度を調べる4つの切り口
- コンテキスト(状況や文化)に気配りがあり、ユーザーの目的が達成されているか?
- 実行された機能はユーザーの要件を満たしているか?
- ユーザーにとってその機能は意味があるか?
- ユーザーにとって好ましいか?
ユーザー体験はタッチポイントの積み重ねで作られる。ユーザーの興味を失ってしまう瞬間もあれば、ブランドのファンになり自ら宣伝をしてくれるような素晴らしい瞬間もある。
ビジネスを成長させるためには、ユーザーのニーズを理解し適切なタッチポイントを用意し「使い続けるユーザー」を増やすことが大切だ。
関連用語
- モーメント・オブ・トゥルース
- ナラティブ
- マイクロモーメント
- MECE
参考文献
- James Kalbach (2016)Fundamentals of mapping experiences
- James Kalbach,(2018)マッピングエクスペリエンスhttps://www.oreilly.com/learning/fundamentals-of-mapping-experiences
- Customer Touchpoints – The Point of Interaction Between Brands, Businesses, Products and Customers
- Cris Risdon(2013)Un-Sucking the Touchpoint
- Gianluca Brugnoli’ユーザーエクスペリエンスの点をつなぐ