同じような財布でも、ノーブランドの安い財布より、高級ブランドの財布の方が欲しくなったり、「そのブランドを持っている」という自己顕示欲を満たすために高級なものを購入する。
1950年にアメリカの理論経済学者であるHarvey Leibensteinが、「消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、及びヴェブレン効果」という論文で消費者の衒示的消費(顕示的消費)として発表した。
ハーヴェイ氏がヴェブレン効果を提唱する以前に、アメリカの経済学・社会学者のThorstein Bunde Veblenが「有閑階級の理論(The Theory of the Leisure Class)」(1899)という論文の中で、消費者の行動における特徴を発見した。
ヴェブレン氏が発見した特徴とは「社会階級が高く働かなくても金銭が入手できる人々は、顕示欲を満たすために高額の商品を購入する」というものである。ハーヴェイ・ライベンシュタインが発見した消費者の行動にちなんで、ハーヴェイ氏は自らの論文で、「ヴェブレン効果」と名づけた。
高級車の価値だけでなく社会的なステータスにもなる
車にこだわらない人は、フェラーリに乗る人を「お金持ちの人」と考える。
フェラーリを手に入れることは、車自体の価値を得るだけでなく「フェラーリを所有している人はお金持ちだと周りから思ってもらえる」「他者より勝っているという優越感に浸れる」というステータスを得ることでもある。
フェラーリを購入する理由の一つは、自己顕示欲を満たすステータスを得られるためであると言える。
ヴェブレン効果の必須条件
衒示的消費を起こすための必須条件は2つある。
- 希少価値があり価格が非常に高いために入手が困難である。
- モノ自体の価値が社会的に広く認められている。
フェラーリの例を当てはめると、一つ目の条件はフェラーリの価格は高いため満たしている。二つ目の条件も、フェラーリは社会的に認められているブランドなので満たしている。
そのためフェラーリを購入することが、自己顕示欲を満たすステータスを得られるということになる。
ヴェブレン効果の応用
ヴェブレン効果を使う2つの方法は以下があげられる。
- 「高級ブランドというポジションを確立させる」
- 「多くの人が欲しくなる付加価値をつける」
高級ブランドというポジションを確立させる
高級ブランドのポジションを確立し、ユーザーに対して「あのブランドだから欲しい」という動機づけを行う。簡単には手に入らない特別感を出すことで顕示的消費が発生する可能性が生まれる。
ストーリーテリングの手法を使って、モノの価値を伝える方法を工夫することで、多くの人に「欲しい」「共感できる」部分を感じてもらうことも効果的だろう。
ポジションを確立させる方法のデメリットは、「高級ブランド」という社会的価値を確立するまでに非常に時間がかかることである。
多くの人が欲しくなる付加価値をつける
付加価値とは多機能だとか、他社製品と見た目が違うという単純なものではなく、その製品・サービスが本質を追求しているかどうかが重要となる。
例えば、前述したフェラーリは1947年の創業当初からフォーミュラ1(世界最高峰の自動車レース)に出場し、「レースに勝つ」ことに焦点を置いて、車の開発や関連商品の販売を行ってきた。
「フェラーリ=勝利」というシンプルでわかりやすいブランドイメージは、車そのものだけではなく、跳ね馬のエンブレムや、特徴的な赤色など細部にまで浸透している。いわば、フェラーリは勝利の具現化であり、勝利を欲する人々にとって唯一無二の価値を持っているといえる。
見た目の良し悪しだけではなく、細部にまでこだわりクオリティの高いものを提供し続けることが、結果的にブランドとしての価値に繋がっていくことになるだろう。