ユーザー心理や行動経済学を利用してユーザーを騙し、(企業側の)意図的な選択や行動をとらせること。ユーザーを騙すデザイン、ディセプティブデザイン(ダークパターン)にもスラッジが利用されることが多い。
ユーザーの利益を考えない行動介入
意思決定や選択の際に、ユーザーの利益になる意思決定を介入することをナッジという。良い選択を促すナッジに対し、スラッジはユーザーの利益や幸せを考えずに、企業の利益やコンバージョンを考えて設計されている。スラッジの例を2つ挙げる。
航空会社の例:勝手に追加される航空会社の有料オプション
ある航空会社の予約画面で、3,980円の航空券を選択して次のページに進むと、なぜか2,750円の有料オプションが自動で追加されている。
このオプションの自動追加は、デフォルトで金額をプラスする設計で、ユーザーの利益を考えたものではない。また、選択されたオプションの説明に“人気のオプション”であることを記載し、「他の人が選んでいるオプションなら良いものなのでは?」と思わせるバンドワゴン効果も利用している。
ECサイトの例:知らずに登録してしまうメールマガジン
メールマガジン登録をデフォルトでチェック(登録)させるディセプティブデザインは有名だ。
以下は、ECサイトの購入画面で、下に続くコンテンツにメールマガジンを登録するチェックボックスが存在する。スクロールしないで見える領域に注文詳細画面と注文確定ボタンがあるため、購入することに専念しているユーザーはそのまま確定するボタンを押してしまう。ある種の非注意性盲目だ。
どちらにしても、スクロールさせないと見えない場所にあり、ユーザーの認識なく受信する設定をデフォルトにしているのは明らかにスラッジにあたる。メールマガジン登録がデフォルトでなければスラッジではないが、スクロールしないと気がつかないUIは顧客獲得のチャンスを逃すことになる。登録にはチェックを入れるUIを採用するのであれば、スクロールせずに、別の画面で表示しようとするはずだ。
ユーザーの信頼を失うスラッジ
ナッジは、本来はユーザーにとって良い行動を促すものである。逆にスラッジのように利益のために意図的に行動を操作されていることをユーザーが知ると、ユーザーはプロダクトやその会社に不信感を抱く。
スラッジを避けるには、誤解を招く表現をしていないか、簡単に拒否できるものであるか、会社の利益やCV(Conversion:コンバージョン)よりもユーザーにとって良いものと説明できる理由があるのか、を満たしているかを考えて設計する必要がある。