自律性バイアス
Autonomy bias

安心感・充実感を得るために自身の状況をコントロールしたいと感じる心理傾向

人は自分の生き方や生活に決定権を持ち、状況や選択肢を自分自身でコントロールしていると、安心感を感じたりモチベーションが上がったりしやすい。

自律性バイアスは、アメリカの心理学者Edward L. Deciエドワード・L・デシRichard M. Ryanリチャード・M・ライアンが発表した書籍「人間の行動における本質的動機付けと自己決定」(英名:Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior)(1975年)で紹介された、「自己決定理論」の「3つの基本欲求」(有能さ、関係性、自律性)のひとつである。

自律性が助長されていると内発的動機付けが上昇し、モチベーションが上がる。自律性が阻害されると、逆に内発的動機付けの低下によるアンダーマイニング効果を引き起こし、モチベーションが下がってしまう。

エドワード・L・デシ

エドワード・L・デシとリチャード・M・ライアン
引用元:Edward_L._Deci Richard_M._Ryan

自ら選択できることで満足度が上がる

事前に決められたものより、自分で選択してから取り組んだ方が満足度が高くなる傾向にある。

Simona Bottiシモーナ・ボッティAnn L. McGillアン・L・マギルは、体操キャンプに参加する88人の学生を2つのグループに分けて実験を行った。
4つのフィットネス・プログラムからどれでも選択できるAグループと、プログラムがランダムに割り当てられるBグループに分け、自分が受けるプログラムについて、予想満足度を9段階で評価してもらった。
どれでも選択できたAグループの方が、ランダムに割り当てられるBグループよりも予想満足度が高い結果となった。

選択できる環境だと満足度が高くなる

選択できる環境だと満足度が高くなる

選択肢が多すぎると満足度が下がってしまう

自分が選択できる状況であっても、選択肢が多すぎるとユーザーが選べなくなってしまい、満足度が下がってしまうため注意が必要だ。
アメリカの心理学者George A. Millerジョージ・A・ミラーによると、選択肢は5~9(7±2)に収めると、ユーザーは自信を持って選ぶことができ、自身の選択した結果について満足を得られるということが判明している。

自律的な変化を促す5つのA

人が他律的から自律的に変化する方法として「5つのA」(Ask問いかけAdvice助言Assess評価Assist支援Arrange調整)がある。
「5つのA」とは、Aで始まる5つの行動によって、相手の自律的な行動を促す方法である。

  • 行動を問いかける(問いかけ:Ask)
  • より良い行動について助言する(助言:Advice)
  • 変化を望んでいるか評価する(評価:Assess)
  • 変化を望んでいる場合は支援を行う(支援:Assist)
  • 約束を実行するために調整する(調整:Arrange)

例として、アメリカ医療研究品質局(AHQ)では喫煙者に自発的な禁煙を促すために「5つのA」を実践している。

問いかけ(Ask)

カウンセラーが禁煙希望者にヒアリングを行う

カウンセラーが禁煙希望者にヒアリングを行う

喫煙者に1日に何本タバコを吸うかを確認する。
問いかけに答えると喫煙者は自身の現状を整理することができる。

助言(Advice)

カウンセラーが禁煙の方法をアドバイスする

カウンセラーが禁煙の方法をアドバイスする

喫煙者に禁煙の方法をアドバイスする。
喫煙者の状況に応じて適切な方法をアドバイスすることで、禁煙への意識・関心を高める。

評価(Assess)

カウンセラーが禁煙の意志の強さを評価する

カウンセラーが禁煙の意志の強さを評価する

喫煙者が禁煙を強く望んでいるかを評価する。
意志が強いほど、喫煙者の自発的な行動を期待することができる。

支援(Assist)

喫煙者に禁煙をサポートする

喫煙者に禁煙をサポートする

喫煙者の禁煙に対する意志が強い場合は、禁煙できるようにサポートする。
喫煙者がより自発的に行動できるように定期的にカウンセリングを行い、禁煙を達成できるようにサポートする。

調整(Arrange)

禁煙を進められる様に支援する

禁煙を進められる様に支援する

禁煙を無理なく進められる様に状況を確認し、支援する。
つまづいていることや困っていることがないか定期的に確認し、継続できるようにサポートする。

ソフトウェアのバージョンアップへの応用

ソフトウェア・アップデートの選択肢

ソフトウェア・アップデートの選択肢

新しいバージョンをリリースする際に、強制的にアップデートをするのではなく、一定期間は古いバージョンのまま使えるようにする。
ユーザー自身が、アップデートするタイミングの選択権を持つことで、バージョンアップへの不安が軽減される。

自律性を採用した広告

NIKE Just Do It

NIKE Just Do It
(引用元:Sportie)

自社の製品によって自分の生活をコントロールできる、取り戻せるとメッセージを打ち出すことで、製品に魅力を感じてもらうことができる。

NIKEは、若者が前向きに活動し続ける意欲を支える“2019 Just Do It キャンペーン”を行った。キャンペーンでは、多くの女性に向けて、「他人の目を気にしたり失敗したりすることを恐れないこと」「自由にスポーツを楽しむことで、自信や力を手に入れることができる」というメッセージを送った。

関連用語

アンダーマイニング効果

フット・イン・ザ・ドア

ヒックの法則

参考サイト

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Tsuchida

システムエンジニアとして組み込みソフトウェアの設計・実装・評価を担当しています。ユーザーに寄り添ったシステムを作りたいという思いからUXDTに参加しました。慣れないことも多く大変ですが、楽しい日々を送っています。