ゲシュタルト心理学
Gestalt Psychology

全体性を重視して解明しようとする人間の心理現象・心理学の分野

部分や要素の集合ではなく、全体性や構造に重点を置いて捉える心理学の分野。全体性を持ったまとまりのある構造をゲシュタルト(Gestalt :ドイツ語で形態)と呼ぶことに由来している。

1910年にMax Wertheimerマックス・ヴェルトハイマーがゲシュタルト心理学の原点となる研究を始め、1912年にWolfgang Köhlerヴォルフガング・ケーラーKurt Koffkaクルト・コフカと共同で『運動視の実験的研究』を発表したことが発端となった。
その後も研究が続けられ、1935年にコフカの『ゲシュタルト心理学の原理』にて、ゲシュタルト心理学が体系化された。ゲシュタルト心理学の考え方やアプローチは、現代の心理学や知覚研究の基礎となり後世に大きな影響を与えた。

マックス・ヴェルトハイマーの肖像

マックス・ヴェルトハイマー
(引用元: Wikipedia

ヴォルフガング・ケーラーの肖像

ヴォルフガング・ケーラー
(引用元: Wolfgang Köhler – Publications

クルト・コフカの肖像

クルト・コフカ
(引用元: Britannica

人は最初から全体として認識する

ゲシュタルト心理学の基本的な考え方に「人がものを見るときは、部分の理解を積み重ねて全体を認識するのではなく、最初から全体を捉えて認識している」がある。これは古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉「全体は部分の総和よりも大きい」(The Whole is Greater than the Sum of its Parts)が元になっている。
例えば、大きな耳、太い脚、長い鼻、尻尾といった部分だけで全体が何なのか認識することは難しいが、全体を見て「象」と認識することは簡単である。

部分を見てもわからないが、全体を見ると象とすぐわかる

部分を見てもわからないが、全体を見ると象とすぐわかる

全体として認識しているゲシュタルトの例

部分や要素ではなく全体としてとらえて意味があるものと認識できるゲシュタルトの身の回りの例を紹介する。

曲やメロディ

1つ1つの音の集合と捉えず、音のまとまりをメロディやリズム・曲のようにまとまりとして認識する。

点と線の集合ではなく、うさぎとにんじんに見える。
点と線で構成されたうさぎとにんじんのイラスト

図形

中途半端な線や点であっても、パターンを補って丸や三角、四角と理解できる。
荒い丸と三角と四角でも認識できる

動画

複数のコマではなく、丸が動いているように見える。
複数のコマではなく丸が動いているように見える

ゲシュタルト原則

ゲシュタルト心理学の中でも特に知られている分野に、無意識にグループとして捉えてしまう視覚的な要因をまとめたゲシュタルト原則がある。
1923年にヴェルトハイマーによって、人間がグループと認識する6つの視覚要因を発見したことが、ゲシュタルト原則の発端である。

  1. 近接
  2. 類同
  3. 連続
  4. 閉合
  5. 共通運命
  6. 良い形(簡潔さ・簡潔さ)

その後の研究で要因や法則が追加発見されて、ゲシュタルト原則は時代とともに発展している。

デザインに応用されている

ゲシュタルト原則は、グラフィックデザインやWebデザイン、UIデザインで要素や構造を分かりやすく認識するために応用されている。

ゲシュタルト原則とプレグナンツの法則

ゲシュタルト原則の中でも、要因が複数あるときに、より簡潔に認識できる方を優先することを「プレグナンツの法則」という。プレグナンツとはドイツ語で簡潔さという意味である。
プレグナンツの法則は、当初は視覚に関する法則として定義されたが、後の研究で記憶や学習、思考などにも当てはめられる事が判明している。

心理学の考え方を変化させ、現代心理学の基礎となった

人間の心理現象を「要素に分解して別々に考えるのではなく、一体のものとして全体を捉えるべきである」としたゲシュタルト心理学の考え方は、20世紀初頭の心理学で主流だった考え方を変化させた。
ゲシュタルト心理学で最初に研究されたのは、複数の静止画像を切り替えて見ることで物体が動いているように見える「仮現運動」であった。
それまで主流だった心理学の要素主義や構成主義では、「部分を理解できれば全体を理解できる」としていたが、止まった画像の1つだけを見ても同じ効果がないため、仮現運動の体験を説明できなかった。

仮現運動の例

3枚の画像を連続して切り替えることで動いているように見える仮現運動

一枚の画像では動いているように見えない

一部の画像だけでは、動いているように見えない

そこでゲシュタルト心理学では「全体として捉えて認識している」という考え方を用いて説明し、当時の知覚経験と刺激に関する心理学の考え方を変化させた。

知覚心理学、社会心理学、認知心理学に影響を与えた

ゲシュタルト心理学は知覚心理学や社会心理学、認知心理学といった、現代の心理学に大きな影響を与えた。

ゲシュタルト心理学は1910年にヴェルトハイマー、ケーラー、コフカによる視覚の研究から始まり、後に聴覚など視覚以外の感覚刺激に関する研究に発展したことで知覚心理学の進歩に貢献した。

さらに、「ゲシュタルト心理学は知覚の理論だけではない」と、1935年にコフカによって出版された書籍『ゲシュタルト心理学の原理』にて示され、学習、動機付けといった認知や思考に関する分野でも研究が発展した。
1930年代にヴェルトハイマー、ケーラー、コフカと共に研究したKurt Lewinクルト・レヴィンは、ゲシュタルト心理学を個人だけでなく集団行動にも応用した。集団内での個人の行動は、集団がもつ性質やどんなメンバーがいるかに左右されると考え、集団での人々の思考や行動を研究する学問領域であるグループ・ダイナミックス(集団力学)を生み出した。グループ・ダイナミックスは、社会心理学や行動科学の発展に影響を与えた。

ゲシュタルト心理学の流れを汲む分野に、現代の心理学の主流となっている認知心理学がある。認知心理学は、1960年代にコンピュータの発展に伴って生まれた情報科学の考え方を、ゲシュタルト心理学から発展して生まれた行動主義・新行動主義という心理学分野に取り入れて生まれた。
ゲシュタルト心理学の流れ

関連用語

参考サイト

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イケダマリカ

千葉大学・大学院でプロダクト・サービスデザインを学び、現在はスタートアップ支援をしています。デザイナーとして調査、UX設計、UIデザインとフロントエンド実装をやっています。UXも技術も日々勉強中!趣味は片付け、インテリア小物とゲームです。