用語の由来

ロバート・マクナマラ:(引用)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%9E%E3%83%A9
彼はベトナム戦争時にロバート・マクナマラ米国防長官が、戦争の成果を、敵の死者数(ボディカウント)などの数値指標に基づいて戦況を評価し、戦争の戦略を判断した。その結果、ベトナム国民の愛国心やアメリカ国内の反戦感情といった定性的な要素を軽視した結果、戦争は泥沼化し、多大な犠牲を伴う敗北へと至った。
提唱者と背景
社会学者ダニエル・ヤンケロビッチ:(引用)Brownie Harris/Getty Images
「マクナマラの誤謬」の用語自体は、社会学者ダニエル・ヤンケロビッチ(Daniel Yankelovich)によって提唱された。
彼は、数値化できない要素を無視することの危険性を指摘し、マクナマラの戦略を例に挙げてこの概念を広めた。
デザイン・プロダクト戦略での例
- 顧客満足度の本質を無視して、NPS(数値)だけでUXを判断する。
- チームの士気や文化を見ず、単にKPIだけでマネジメントする。
デザインにおける活用方法と具体例
デザインの分野においても、数値指標だけに頼ることの危険性を認識し、定性的な要素を取り入れることが重要である。以下に具体的な活用方法と事例を示す。
1. ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイン
活用方法: ユーザーテストやインタビューを通じて得られる定性的なフィードバックを重視し、数値データと併せて総合的に評価する。
具体例: ウェブサイトのクリック率(CTR)が高くても、ユーザーが目的の情報にたどり着けずに離脱している場合がある。ユーザーインタビューを実施し、ナビゲーションの使いにくさや情報の見つけにくさといった定性的な課題を把握し、改善策を導入する。
2. プロダクト開発
活用方法: 市場調査の数値データだけでなく、ユーザーの声や使用状況などの定性的な情報を取り入れて、製品の改善や新機能の開発に活かす。
具体例: 新しいスマートフォンアプリの利用時間が短いという数値データがある場合、ユーザーインタビューを通じて、操作が直感的でない、機能が分かりにくいといった定性的な課題を明らかにし、UI/UXの改善を図る。
具体的な事例
シーン①: 教育分野での学習評価
課題: 学生の学力をテストの点数だけで評価すると、創造性や協働性といった重要な能力を見落とす可能性がある。
活用方法: プロジェクトベースの評価やポートフォリオ評価を導入し、学生の多様な能力を総合的に評価する。
具体例: ある学校で、数学のテストの点数が低い学生がいたが、グループプロジェクトではリーダーシップを発揮し、チームをまとめて成果を上げていた。このような定性的な評価を取り入れることで、学生の多面的な能力を正しく評価できる。
シーン②: 医療現場での患者ケア
課題: 患者の健康状態を血圧や心拍数などの数値データだけで判断すると、患者の主観的な症状や生活の質を見落とす可能性がある。
活用方法: 患者との対話を通じて、痛みの程度や不安感といった定性的な情報を収集し、治療方針に反映させる。
具体例: ある患者が検査数値は正常であったが、日常生活での疲労感や不眠を訴えていた。医師がこれらの定性的な情報を重視し、生活習慣の改善や心理的サポートを提供することで、患者の全体的な健康状態が向上した。
数値偏重バイアスとの違い
マクナマラの誤謬が「重要だが測定できないものの無視」に焦点がある。一方、数値偏重バイアスは「数値=真実」と思い込み、判断そのものが偏る現象。
まとめ
数値やデータに過度に依存することの危険性を示す重要な概念である。
デザインや意思決定においては、定量的なデータだけでなく、定性的な要素もバランスよく考慮することが求められる。
これにより、より包括的で効果的な判断や戦略を導き出すことが可能となる。