一般的に「モダニズム」という言葉は、最新の趣味や流行を追う傾向のことで、特に芸術分野では、伝統主義に対立して新しいスタイルを求めることを指す。建築分野では歴史的な様式(ギリシャ・ローマ・ゴシック・バロックなど)を規範とした伝統主義を捨て去って、機能性や合理性を求めることを指す。
産業革命とモダニズム
19世紀後半のヨーロッパでは、産業革命を経て工業化が進展し、急速に人口が都市部へ集中した。人口の移動に伴って、住宅や日用品といった生活に必要なものが大量に必要となった。生活用品は機械により大量生産され、それまでの手工業生産とは異なる機械化に適した規格が必要となってきた。
建築においては、鉄やガラス(20世紀に入ってからはコンクリート)といった新しい材料が盛んに使われるようになり、素材にふさわしい造形が求めらるようになった。同時に、新しい材料や機械の浸透とともに、機械化に適合した合理的な形態へと変化した。合理化によって無駄となる装飾や手作業を捨て去っていき、必要とされる機能が形態を決定するようになったのである。形より機能を優先させるモダニズムは、機能主義とも言われている。
機能美を徹底的に追求したモダニズム建築の代表作として、ル・コルビュジェが設計したサヴォア邸があげられる。
モダニズム建築と伝統的な建築様式の比較
モダニズム建築は、装飾や個性が捨て去られ、機能が最優先で実現されるようになった。下の写真のように、モダニズム建築(バウハウス校舎)はバロック建築(ヴュルツブルクの司教館)と比較すると、機能的で装飾がないデザインになっている。
モダニズム建築: バウハウス デッサウ校 校舎(ドイツ)
バウハウスは20世紀初頭の芸術学校で、合理主義的・機能主義的なモダンデザインの流れを生み出した。校舎はモダニズム建築の代表作として知られる。
バロック建築(伝統的建築様式): ヴュルツブルクの司教館(ドイツ)
18世紀に領主司教の宮殿として建てられた。バロック建築は、複雑な装飾を多く取り入れ荘厳さ・華美さが特徴の建築様式である。
日本のモダニズム建築
日本でも明治時代末から大正時代に鉄筋コンクリート造という新しい技術が伝えられた。若い建築家たちが新しい動きを求めていった。伝統主義との対立を経て1930年代にモダニズム建築が定着した。
下の写真のように、現存するモダニズム建築がある。
ポストモダン建築
1960年代に入ると合理的で機能主義的なモダニズムに対して、「都市や建築があまりに味気なくなった」と言う批判が出てきた。その反動として、装飾性や過剰性の回復を目指した建築が登場し、1980年代を中心に流行した。代表的な建築に、東京都庁などがある。
東京都庁と国立代々木競技場は両方とも丹下健三による設計だが、装飾性には大きな違いがある。
参考文献
関連用語
- 形態は機能に従う(Form Follows Function)
- 少ないほど豊かなこと(Less is More)
- KISSの法則