人は過去のことを思い出し懐かしい気持ちになると、金銭への執着が薄れ、社会的つながりを求める傾向がある。
結果的に、購買意欲が高まり、消費が促進されることがある。
ノスタルジー効果の実証実験
ノスタルジー効果は、サウサンプトン大学で2014年におこなわれた実験で実証されている。
Nostalgia Weakens the Desire for Money
ある商品の2種類の広告のどちらかを見て、購入する値段を選択肢から選ぶよう実験を行った。
広告は、過去を懐かしむノスタルジーを呼び起こさせる表現を入れたものと、まったく新しい経験を想起させるものである。
69人が実験に参加した結果、ノスタルジーを感じさせる広告を見た参加者の方が、より値段の高い選択肢を選んだ。
広告で利用されるノスタルジー効果
消費者の購買意欲を高めるためにノスタルジー効果は広告に多く利用されている。
(引用:Coca-Cola uncaps global marketing plan for 100 years of iconic bottle | The Drum)
コカ・コーラでは昔懐かしのスターであるマリリン・モンローがボトルを飲む写真を広告に起用した。
若い人にとっても「古き良きアメリカ」を想起させる表現で、ノスタルジーを呼び起こしている。
その他にも広告には数多くノスタルジー効果の例がある。
・Nintendo Switch
https://youtu.be/yJched2MvZ8
ニンテンドースイッチのCMでは、「仲が良かった幼い兄弟が大人になり別々の道を歩むが、オンラインゲームでまた一緒に遊ぶ」という物語でゲーム機を宣伝している。
・Spotify
https://youtu.be/6paMSllCtjw
Spotifyでは、1980年代のヒット映画をパロディにした映像で、当時流行した音楽も聴けるサービスであることをアピールしている。
・Star Wars
https://youtu.be/5JcCnMaymCY
「スター・ウォーズ」ファンの思い出のホームビデオでノスタルジーを感じさせ、グッズのオンライン販売に興味を持ってもらえるようにしている。
ナッジとして利用されるノスタルジー効果
ノスタルジー効果は、広告だけでなく社会的行動を促進するナッジとしても利用される。
ノスタルジー効果は金銭への執着を薄れさせ、社会的つながりを促進する効果があるので、チャリティやボランティアへの参加を促すことができる。
英国の国民保険サービスNHSは、臓器移植を受けた子どもが元気に遊ぶ映像を通してノスタルジーを感じさせ、家族で臓器移植について話し合うことを促している。
https://www.youtube.com/watch?v=ovt1oGrrOEg
ノスタルジー効果のUIへの応用
ノスタルジー効果はサービス内での行動を促すために、UIにも応用されている。
例えば、Facebookでは「思い出」というメニューから自分の過去の投稿を振り返ることができたり、ニュースフィードに自分の過去の投稿を適切なタイミングで表示することで、ユーザーがFacebookにさらに多く投稿してもらうことをナッジしている。