顧客を価値観や趣味といった心理的な背景をもとに分類する属性で、心理を意味する英単語(psychology)に由来している。
マーケティング戦略を立案する際に利用されるSTP分析では、始めに顧客を同種のニーズを持っているグループに分類する「セグメンテーション」を行う。
セグメンテーションで顧客を分類する代表的な方法は4つあり、サイコグラフィックはそのうちの一つで、「心理的要因」を元に分類する。
- ジオグラフィック:地理変数
- デモグラフィック:人口動態変数
- サイコグラフィック:心理的変数
- ビヘイビアル: 行動変数
外食するユーザーのサイコグラフィック例
「外食するユーザー」に対してサイコグラフィックで心理的要因をもとに分類すると、以下のような顧客グループに細分化ができる。
- 安くて量が多いものを食べたい
- お洒落な雰囲気で食べたい
- 時間がないので、早く食べたい
- 騒がしいのは苦手なので、静かに食べたい
デモグラフィックより効果的にターゲティングができる
サービスをプロモーションする場合、顧客の性別や年齢、年収といったデモグラフィックデータを利用してターゲットを選定し、広告を配信することが多い。
しかし、ユーザーは自分の趣味や価値観に合わない広告に対して興味を持たないため、デモグラフィックデータが同じでも、すべてのターゲットに対して効果的な広告になるとは限らない。
同じ30歳、年収400万円で趣味や価値観の違う女性2人に対して高級フレンチの広告を配信する例を考えてみよう。
高級志向の女性は、趣味が食べ歩きということから、食に対してお金をかけることに抵抗が少ないと考えられる。一方、節約志向の女性は、趣味が料理ということから、あまり外食志向ではないと推測される。よって、高級志向の女性の方が高級フレンチの広告効果が出やすいターゲットとなる。
サイコグラフィックを構成する要素
サイコグラフィックには、価値観やライフスタイル、パーソナリティなどの要素がある。
価値観
ユーザーは自分の価値観や志向にあった製品やサービスを選ぶ傾向にある。例えば、「食べるものはオーガニックがいい」という価値観を持つユーザーは、外食する際にファストフードでもオーガニック素材利用をアピールした店や商品を選ぶと推測される。
ユーザーの価値観を調査する方法に、価値構造を掘り下げていくインタビュー手法であるラダリング法があり、無意識に判断している価値観を明らかにすることができる。
ライフスタイル
ユーザーは自分のライフスタイルにあった製品やサービスを選ぶ傾向にある。「インドア志向で日頃家にいる時間が多いユーザーが、アウトドア用品を積極的に購入する」とは考えにくい。
ライフスタイルの例として、以下があげられる。
- 文化志向
- スポーツ志向
- インドア・アウトドア志向
ライフスタイルを分析する方法として、ユーザーのライフスタイルを3つの側面(Activites 活動、Interests 関心、Opinions 意見)でとらえるAIOアプローチや、ユーザーを価値観(Values)と社会に対する態度(Lifestyles)に従って分類するVALSといったフレームワークがある。
パーソナリティ
ユーザーは自分の性格や気質といったパーソナリティに合致した製品やサービスを選択する傾向にある。例えば、「神経質なユーザーは他人と物をシェアするのに抵抗を示す」というような予測ができる。パーソナリティの例として、以下があげられる。
- 神経質
- 社交的
- 権威主義的
- 野心的
神経質なユーザーには、保証の手厚さや実績など安心感を与える情報を見せ、野心的なユーザーには、会員ランクアップによる特典や称号を見せるといった、パーソナリティにあったアプローチを行うと、効果的なマーケティングになる。
サイコグラフィックデータを取得する方法
サイコグラフィックデータを取得する方法にはユーザーインタビューやGoogleAnalyticsなどのサイト行動データによる分析がある。
ユーザーインタビューによる取得方法
ユーザーに対して、興味の対象や趣味、志向、ライフスタイルなどをインタビューやアンケート形式で聞いて調査する。
サイト行動データ分析による取得方法
CTRや開封率の高いメールなどから興味のある分野を推定する。
例えば、フィットネスに関するバナーのCTRが高いユーザーは、「体型に気を配っている」「スポーツが好き」という志向が予測できる。ただし、あくまで予測によるサイコグラフィックのため、定性調査と合わせて検証することが重要である。
ペルソナ作成にも利用できる
ペルソナ作成では、年齢、性別のほか趣味や性格といったサイコグラフィックデータをプロフィールに組み込むと、人物像が具体的になる。
「24歳、女性、保育士」というデモグラフィックデータだけでは、ペルソナの性格や人となりがイメージしづらい。「大人数が苦手な性格」や「温泉旅行が趣味」「言いそうな言葉」といったサイコグラフィックデータがあると、人物像がより明確になり、ペルソナがとる行動の動機や思考について、チームメンバーの認識がズレにくくなる。
解釈がブレないように注意
サイコグラフィックデータはデモグラフィックデータのような明確な数値がなく、定性データをもとに作成するため、ターゲットユーザーを分類する言葉の表現によっては、人によって解釈が異なる場合がある。
「年齢30歳」は誰が見ても同じだが「高級志向」は基準や対象などが人によって異なってくる。例えば、高級志向を自認する人でも、すべてがA5ランクの肉を好むとは限らない。そのため、解釈に主観が入りやすく共通認識がブレやすくなる。サイコグラフィックデータを利用する際は、解釈に主観が入らないように言語化して共有する際に気をつける必要がある。