形容詞を用いて物事のイメージを数値化し、特徴や類似品との共通点、もしくは相違点を分析する方法。セマンティックとは「意味」、ディファレンシャルとは「差」という意味である。
「早い – 遅い」、「明るい – 暗い」など対となる形容詞の間に5~7段階の尺度を用いて、感じ方を測定する。心理学のひとつとして誕生し、異文化間での捉え方の違いを数値化するなど、社会科学、行動科学で活用されることが多い。
1950年代にアメリカの心理学者Charles E. Osgoodが、形容詞の感じ方を数値的に評価するため開発した測定方法である。
オズグッドは、数十の異文化研究をした結果、どの文化でも評価(良い – 悪い)、効力(強い – 弱い)、活動(活動 – 非活動)の3つの感情的側面を持っていることを発見した。
アンケート結果から印象構造を分析する
SD法はアンケート調査を元に、評価項目間の相関性や印象の強さを図ることで、評価対象同士の違いや類似性・特徴を発見できる。
代表的な分析方法として、複数の評価項目を2つの主成分にまとめて分析する主成分分析がある。製品の位置がグラフの中心から、各評価の方向に遠いほど該当評価の印象が強くなる。反対のベクトルであるほど対局であることを示すため、イメージが真逆にある製品や、類似する製品が何かを知ることができる。
フェルメールの絵画が評価される理由を分析する
フェルメールの名画「真珠の耳飾の少女」は、青と黄色のコントラストが印象的な絵画である。色の印象が絵画の評価に与える影響をSD法で分析した例がある。
学生12名を対象とし、元の絵と、ターバンの色を黄、赤、緑、黒、白の5色に変えた絵画を見せ、それぞれの絵画から受ける印象をSD法で比較分析した。
フェルメールの絵画に対するイメージ調査
質問に使う対の形容詞は、評価、効力、活動の感情的側面から選んだ。ポジティブな感情は+(プラス)、ネガティブな感情は−(マイナス)として、+3、+2、+1、0、-1、-2、-3の7段階評価で評価してもらった。
評価結果の平均値は以下のようになった。
青が与える特有の印象を特定する分析方法
次に青色特有の印象を調査した。アンケートをとった形容詞が、青色特有の印象である条件を「青色の評価点と、他の色の評価点の平均の差が大きい」かつ、「他の色同士の評価点にばらつきが少ない」と定義した。以下の計算を行った結果が「0.5以上」であれば、青色特有の印象と判定した。
分析した結果
計算の結果、「子供っぽい」「かしこい」「若い」「上品な」「穏やかな」という形容詞が青から強く感じることがわかった。描かれているモチーフの「若々しく知性的な少女」と青色の印象がマッチしていることが、絵の魅力の一つであると推測できる。
リッカート尺度との共通点と違い
類似する測定方法に「リッカート尺度」がある。共通点は、SD法もリッカート尺度も、「どちらでもない」などの回答の曖昧さを許容する点である。異なる点は、リッカート尺度は設問に対して「はい」か「いいえ」を多段階で回答するのに対し、SD法は対となる形容詞のどちらに当てはまるかを多段階で回答する違いがある。
マーケティングのポジショニングやUSPに活用できる
競合他社との製品の印象比較を行うことで、自社製品が独自に抱かれている印象や、類似した印象を持つ他社製品を知ることができる。SD法の分析結果を、自社だけが提供できる価値を示す「USP」に活用でき、競争優位性を高める「ポジショニング」につなげることができる。
関連用語
- USP
参考文献
- 辻田 忠弘, 長谷川 美和(2010)『「名画にある謎の解明」に用いたSD法とその限界」』甲南大学情報教育研究センター紀要