本物とは別に、そっくりなものが存在することで、現実と虚構が区別がつかなくなる現象や、実在しないものや本来の意味や形とは異なるものが、他のものに見える現象を指す。
たとえば、3つの点が集まった図形が人の顔に見えるようなことが当てはまる。また、芸術作品や、人工物であるはずのものが、現実のもののように見えてしまうことも含まる。
シミュラクラ現象として、芸術家の絵画や彫刻なども、それ自体が現実のモチーフを再現するものであり、シミュラクラ現象の一例とみなすこともできる。
シミュラクラ現象の特徴
シミュラクラ現象は、現実と虚構の区別が曖昧になることが特徴。
シミュラクラ現象の例
シミュラクラ現象には様々なものがあり、ディズニーランドの山などのオブジェ、岩や木の形が人や動物の形に見える、蛇口などの部品が顔に見える、コンピューターグラフィックスやロボットが人間に見える等がある。
引用:「馬ロック(うまろっく),日本の奇岩百景+」「蛇口顔」
シミュラクラ現象とパレイドリア効果との違い
シミュラクラ現象はパレイドリア効果の一種で、本来の形状や意味とは異なり、他のものに見える現象や、実際には存在しない形や意味を、見た目や構造に対応させて認知する現象である。
両者は似たような現象であるが、パレイドリア効果は、不明瞭な・抽象的な形状や模様から人間が具体的な形象や対象を認知することに主眼があり、シミュラクラ現象は、本来の形状や意味とは異なるものが、他のものに見える認知の歪みを表す現象を指す。
つまり、シミュラクラ現象は、より具体的な形状や構造が必要とされるため、パレイドリア効果よりも厳密な意味での認知現象である。
ジャン・ボードリヤールの著書「シミュラクラとシミュレーション」
シミュラクラ現象の用語の発祥については明確な起源が不明だが、一般的には、フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールが1970年代に発表した著書「シミュラクラとシミュレーション」によって知られるようになった。
ジャン・ボードリヤールの「シミュラクラとシミュレーション」は、1970年代に発表された哲学書で、ポストモダン思想の代表的な作品の一つとして知られている。
この本では、現代社会における「現実」と「シミュレーション(模擬)」の関係性について探求され、ボードリヤールは、現代社会において「現実」が失われ、代わりに「シミュラクラ」という模擬物が支配的な存在になっていると主張している。
シミュラクラとは、本来存在しないものを現実のように見せかけるもので、人々がこれに惑わされてしまうことがあると述べています。
また、ボードリヤールは、現代社会においてテクノロジーが急速に進化することで、現実とシミュレーションの境界が曖昧になっていると指摘し、現代社会が原初的な現実とシミュラクラ(模擬)の境界を失っていると主張した。
例えば、テレビや映画、コンピューターゲーム、仮想現実などが、現実の代替物として人々に提供され、現実との区別が難しくなっていると訴えている。
このように、ボードリヤールは現代社会における「シミュラクラ」の重要性を強調し、それがもたらす影響について考察し、彼の思想は、現代社会の象徴的な変化を捉える視点として、現代哲学や文化理論に大きな影響を与えている。