ワーキングメモリ
Workingmemory

感覚器官から得られた情報を保持しながら処理を行う概念

人間は視覚や聴覚などの感覚器官から得た情報を保持しつつ、考える処理を行う。認知心理学では、情報を記憶するだけではなく、処理することに重点をおいた仕組みのことをワーキングメモリという。作動記憶とも呼ばれる。
ワーキングメモリで記憶と処理を同時に行う容量は少なく、同時に処理できるのは7±2といわれている。(ミラーの法則
ワーキングメモリの容量を超えると、働きが低下してしまい「考え事をしながらコンビニに来たら、何を買うか忘れてしまった」といった、物事を同時に出来ない現象が発生する。
ワーキングメモリは、1974年にイギリスの心理学者Alan Baddeleyアラン・バドリー氏とGraham Hitchグラハム・ヒッチ氏が記憶の多重貯蔵モデルだけでは説明できない処理を持つモデルとして提唱し、その後も研究が継続されている。

ワーキングメモリを構成する中央実行系と3つのシステム

現在提唱されているワーキングメモリのモデルは、司令塔的な存在である中央実行系と情報の種類によって役割分担している3つの従属システム、音韻ループエピソードバッファおよび視空間スケッチパッドからなる。

ワーキングメモリの仕組み

ワーキングメモリの仕組み

中央実行系

3つの従属システムを制御する司令塔のようなもので、指示を与えたり情報に注意を向けたりするが、情報を保持する機能はない。
例えば、今日が何曜日かを意識していることで「休日なのにいつもの道をぼんやりと歩いていたら、職場に向かっていた」というような状況を回避する役割を持っている。

音韻ループ

言葉に関する情報を覚えるときに音韻ループを使う。音韻ループを使って記憶する際に、音節が短い単語の方が覚えやすい、音が似ている単語を間違えてしまうといった現象がある。
音韻ループは聴覚から得た情報を保持する音韻ストアと、文字で提示された単語を音声として再生する構音リハーサルメカニズムからなる。
「03-1234-5678」という電話番号を耳で聴いた時は音韻ストアに直接入力する。一方で、目で見た場合は「ぜろさんのいちにさんよん、ごろくななはち」というように頭の中で音を再生してから音韻ストアに入力される。

音韻ループ

音韻ループ

エピソードバッファ

過去に経験したことを日記に書く時や、誰と会話したかを思い出すときにエピソードバッファを使う。エピソードバッファでは視覚、空間、音声を統合したり、長期記憶で保持している情報と感覚器官から得た情報を照合したりする。
ワーキングメモリの研究が進んだことで追加された概念である。

視空間スケッチパッド

黒板の文字を書き写す時や、家具を部屋のどこに置くかイメージするときに視空間スケッチパッドを使う。
視空間スケッチパッドでは、色や大きさ、空間における位置など、言語化できない情報を視覚イメージとして保持する。

視空間スケッチパッド

視空間スケッチパッド

ワーキングメモリの容量には個人差がある

ワーキングメモリの容量は7±2といわれているが、個人差がある。ワーキングメモリ容量を計測するための研究が進められており、代表的なものがリーディングスパンテストである。

ワーキングメモリを測るリーディングスパンテストの手順

リーディングスパンテストは心理学者のDanemanダーネマン氏とCarpenterカーペンター氏が1980年に開発した、ワーキングメモリの容量を測ることができるテストである。

リーディングスパンテストは、以下の手順で行う。

  1. 提示された文章を読みながら、文の最後の単語を覚える
  2. 全ての文章を読み終わったら、覚えている単語を答える

覚えていた単語の数だけ、ワーキングメモリの容量があると推定できる。リーディングスパンテストで測定されるワーキングメモリの容量と読解能力には相関関係があるという研究結果が出ている。
リーディングスパンテストは日本語化されている。ここでは、心理学者の苧阪おさか直行氏と苧阪満里子氏が1994年に開発した日本語版のリーディングスパンテストを参考にして作成した4つの文を記載する。実際に文章を声に出して読みながら、下線が引かれた単語を全て覚えられるか試してみよう。苧阪氏らの研究結果では、文が4つの場合、覚えていられる単語の数の平均は3〜3.5個だった。

  1. 朝起きたら、信じられないような光景が広がっていた。
  2. 仕事の休憩時間中に、換気のためを開けた。
  3. 日本にはおよそ3000箇所の温泉があるといわれている。
  4. 連休で渋滞している中、実家へ向かった。

ワーキングメモリは容量を増やすことができる

ワーキングメモリの容量を増やす方法についても研究が進められており、ワーキングメモリを鍛えることとワーキングメモリを解放することが方法としてあげられる。

ワーキングメモリを鍛える方法

  • 記憶力を使う
  • 暗算をする
  • ボードゲームをする
  • 料理をする

ワーキングメモリを解放する方法

  • 十分な睡眠をとる
  • 有酸素運動をとる
  • 自然の中での運動
  • マインドフルネス瞑想

関連用語

参考文献

  • 服部雅史 小島治幸 北神慎司(2015)、基礎から学ぶ認知心理学
  • アラン・バドリー 井関龍太 齊藤智 川﨑惠理子(2012)、ワーキングメモリ

参考リンク

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かじしま さちこ

フリーランスのエンジニア。
2001年東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。独立系ソフトハウス(システム開発)、株式会社シンプレクス(金融機関向け取引システムの開発・運用)を経て2011年よりフリーランス。フリーランスになってからは、スマホアプリ、サーバーサイド(Java,Railsなど)と様々なプロジェクトで開発に携わる。現在は会社員時代にお世話になった企業様でRPAプロジェクトで開発を担当している。
ダイエットのためにランニングとヨガを5年ほど続けているが、どちらもガチになる一方で全く痩せないことが最近の悩み。