2つの選択肢で迷っているユーザーに対して、片方の選択肢よりも見劣りする第3の選択肢(おとり)を提示することで、ユーザーの意思決定を変化させる心理効果。行動経済学では、吸引効果、非対称優性効果、対照的支配、と呼ぶ。
おとりがユーザーの意思決定を変化させる効果を検証するために2つの実験を行った。実験1では、2つの選択のみ、実験2ではおとりを含めた3つから選択させる。
【実験1】2種類の音楽プレイヤーからの選択
ユーザーは、2種類の音楽プレイヤーから1つを選ぶために悩んでいる。A機種は容量の多さ、B機種は価格の安さが魅力である。

特徴を考え製品を選ぶ
2種類の音楽プレイヤーの比較表
A機種(売りたい製品) | B機種(Aのライバル製品) | |
---|---|---|
価格 | 4万円 | 3万円 |
容量 | 30GB | 20GB |
大きさ | 業界最小 | Aよりも大きい |
特徴 | 容量の多い機種 | 価格の安い機種 |
【実験2】選択肢(おとり)を入れた3種類の選択
実験2では、実験1に[おとり=C機種]を追加する。C機種を入れることで、A機種は価格も容量も優れている、B機種は価格は優れているが容量は少ないという判断が付きやすい。
おとりを追加したことで「似ている性能を持つAとCを比べて優れたA機種を選ぶ」という思考に変化する。

C機種と比べ、Aを選ぶ可能性が高くなる
3種類の音楽プレイヤーの比較表
A機種 (売りたい製品) |
B機種 (Aのライバル製品) |
C機種 (Aを選択させるためのおとり) |
|
---|---|---|---|
価格 | 4万円 | 3万円 | 4万円 |
容量 | 30GB | 20GB | 25GB |
大きさ | 業界最小 | A機種よりも大きい | A機種と一緒(業界最小) |
おとり効果が証明されたエコノミスト誌の実験
学生のスマートフォンの所有率が少ない2009年に、マサチューセッツ工科大学Dan Ariely博士は、雑誌の契約方法として、[Web閲覧のみ]・[紙媒体のみ]の2つからの選択と、[Web閲覧のみ]・[紙媒体のみ]・[Web閲覧と紙媒体のセット]の3つの選択肢を用意し、学生にどの契約に一番魅力を感じるかをインタビュー実験を行った。
おとりを利用しない実験 [2つからの選択]
Web閲覧のみ | 紙媒体のみ |
---|---|
Webサイトの1年間の定期購読(1997年以降に掲載された全記事が閲覧できる) | 紙媒体の1年間の定期購読 |
$59(約6,608 円 1ドル=112円) | $125(約14,000 円 1ドル=112円) |
32% | 68% |
スマホやパソコンを持っている学生が少なかった時代なので、意思決定のポイントは一長一短となり、実験2の結果は「Web閲覧のみ」を選択した学生が68%「紙媒体のみ」を選択した学生が32%となったが、おとりがないと、「Web閲覧のみ」を選択する学生が多い結果になった。
おとりを利用した実験 [3つからの選択]
Web閲覧のみ | 紙媒体のみ | Web閲覧+紙媒体 |
---|---|---|
Webサイトの1年間の定期購読(1997年以降に掲載された全記事が閲覧できる) | 紙媒体の1年間の定期購読 | Webサイトと紙媒体の1年間の定期購読 (Webサイトでは1997年以降に掲載された全記事が閲覧できる) |
$59(約6,608 円 1ドル=112円) | $125(約14,000 円 1ドル=112円) | $125(約14,000 円 1ドル=112円) |
16% | 0% | 84% |
被験者の学生のうち16%は[Web閲覧のみ]を選択し、残りの84%は[Web閲覧+紙媒体]を選択した。[紙媒体のみ]を選択した学生はいなかった。
つまり、2つの実験を行った結果から、おとりを用意することで学生が選択する確率を操作し、売上を伸ばせることが証明された。おとりを用意するだけで16%も(被験者の学生が100名の場合、1,056ドル)売り上げが伸ばせる。
おとりを利用した結果
おとりがある場合:(59$×16名)+(125$×84名)=11,444ドル
おとりがない場合:(59$×32名)+(125$×68名)=10,388ドル 差分:1,056ドル

引用;wikipedia
おとり効果を証明した
ダン・アリエリー博士
おとり効果はダークパターンに注意
ユーザーには、損をしたくないという心理がある。おとり効果を使用して売上げが上がったとしても、無理に出費させるとブランドに対しての印象が悪くなる。おとり効果はダークパターンを生み出しかねない心理のため注意が必要だ。サービスを提供する時は、ユーザーに最適な価値と価格を提供できるよう設計することが大切だ。