2つの矛盾した内容で相手の精神を二重に縛りストレスがかかる状態を指す。
例えば、親が遊んでいる子どもに対し、「遊んでないで勉強をしなさい!」と言ったすぐに、「こっちに来て夕食作りを手伝って」と依頼すると、子どもは「勉強」と「家事手伝い」の2つのタスクを、どのように行動・選択をしたらいいのかわからなくなる。このような心理的拘束を指す。
私自身も高校受験の合格の連絡を先生から喜んでいる様子もなく伝えられた時、かなりのギャップを感じて今でも悪い印象として記憶に残っている。
「ダブルバインド」とは日本語で「二重拘束」を意味し、アメリカの精神科医グレゴリー・ベイトソンが1956年に提唱した「ダブルバインド理論(二重拘束理論)」に由来する。
提唱者が説明したダブルバインド
ベイトソン氏の例では、以下のように紹介している。
若い男性が分裂病で入院し、面会が許されていなかったのですが、回復して退院の準備が進み、母親との面会が許可されました。母親は個室の病室に笑顔で入り、息子を見て「よくなって良かったね」と言いました。息子は久しぶりの再会に喜び、母親に近づいて抱きつこうとしました。
しかし、アメリカの文化では一般的な抱擁ですが、母親は緊張して身体を硬くしました。息子は母親の反応から抱きつくことをやめ、母親が「お前はうれしくないのか」と言ったときに戸惑い、少し後ずさりしました。
ダブルバインドは心の現れ
職場でのダブルバインドの例を考えてみる。
例えば、いつも上司が「わからないことがあれば何でも聞きなさい。」と言ってくれる一方で、質問をすると「自分で考えてみなさい。」と言われることがあるかもしれない。しかし、部下が常に何でも聞いてくるような状況では、上司の言葉を矛盾しているとは感じずダブルバインドにはならないだろう。ただし、異なる内容を伝える場合には、その理由を説明することが重要だ。
では、どんな時にダブルバインドが発生するか?
提唱者の病院の母親の態度の例でもあるように、言葉だけでなく、ノンバーバルな要素(非言語コミュニケーション)でもダブルバインドが起こる。つまり、口頭で言っている事と異なる感情や態度を持っている場合に相手にはそれが伝わりダブルバインドが起こるのだ。
エリクソニアン・ダブルバインド
ミルトンモデルの「前提」という手法の中に、エリクソニアン・ダブルバインドがある。これは、相手の選択肢を意図的に絞らせることで、前提をつけるものだ。同じ言葉が使われているが、かなり意味が異なるので注意したい。
関連用語
- メタファー
- ミルトンモデル心理学
- ノンバーバル
- 帰納法
- 論理学
- ソリテス・パラドックス
- エリクソニアン・ダブルバインド