文の中に数式が混じっていると、それが無意味なものでも権威を感じること効果で、特に数学や科学に馴染みのない人々が、数式の存在によって内容の信憑性を過大評価する傾向にある。
提唱・研究に関与した人物
キムモエリクソン:(引用)https://www.kimmoeriksson.se/
この効果は、スウェーデンの社会心理学者キンモ・エリクソン(Kimmo Eriksson)によって提唱された。
2012年に発表された研究では、200人の大学院修了者を対象に、実在する研究論文の要約を提示し、その中に無関係な数式を挿入したバージョンと挿入しないバージョンを比較した。その結果、数式が挿入された要約の方が、研究の質が高いと評価される傾向が見られた。特に、人文社会系の学位を持つ参加者においてこの傾向が顕著であった。
ジョン・アレン・パウルス(John Allen Paulos)
- 数学者・作家。
- 有名な著書:『数に弱い人たち(Innumeracy: Mathematical Illiteracy and Its Consequences)』(1988)
- この本で、「数式や統計が登場するだけで人は内容を信じやすくなる」とする現象に言及。
- 直観的な指摘として、このバイアスの早期の観察者ではある
エリカ・トムソン(Erica Thompson)
- 『Escape from Model Land』(2022)でこの現象を批判的に論じている。
- 現象の社会的・倫理的な影響に注目した論者。
論文情報
Eriksson, K. (2012). “The nonsense math effect.” Judgment and Decision Making, 7(6), 746–749.
デザインにおける活用方法と具体例
デザイン分野においても、「ナンセンスな数式効果」を理解し、適切に活用することで、ユーザーの信頼感や興味を引き出すことが可能である。以下に具体的な活用方法と事例を示す。
1. プロダクトデザイン
活用方法: 製品の説明や広告において、簡単な数式や統計データを挿入することで、製品の信頼性や効果を強調する。
具体例: フィットネスアプリの紹介ページで、「カロリー消費量 = 運動強度 × 時間 × 体重」という簡単な数式を提示し、ユーザーにアプリの科学的根拠を印象づける。
2. 教育コンテンツのデザイン
活用方法: 教育資料やプレゼンテーションにおいて、関連する数式やグラフを適切に挿入することで、内容の理解を促進し、学習者の関心を引く。
具体例: 経済学の講義資料で、需要と供給の関係を示す数式やグラフを用いて、理論の具体的なイメージを提供する。
「この場面に使えるかな?」というシーンと具体的な事例
ビジネスプレゼンテーションでの提案
課題: 新しいビジネスモデルや戦略を提案する際、聴衆にその有効性や信頼性を伝える必要がある。
活用方法: 提案内容に関連する簡単な数式や統計データを提示することで、論理的な裏付けを強調し、聴衆の納得感を高める。
具体例: 新しいマーケティング戦略の効果を示す際に、「ROI = (利益 − 投資額)÷ 投資額」という数式を用いて、戦略の収益性を明確に伝える。
まとめ
「ナンセンスな数式効果」は、数式や統計データが持つ説得力を示す一方で、それらが意味を持たない場合でも影響を及ぼす可能性があることを示している。
デザインやコンテンツ制作においては、数式やデータの使用が適切であるかを慎重に検討し、ユーザーに誤解を与えないよう配慮することが重要である。