オッカムの剃刀
Occam’s razor / Ockham’s razor

「問題解決を行うための仮説を提示する時、最も少ない仮定で解を得るべきである」という格言的な原則・思考法

問題解決を最も少ない仮定で解を得るをいう思考法は、古くは紀元前のアリストテレスやプトレマイオス、そして13世紀の初期哲学者らにも同等の提唱定説が見られる。しかし、14世紀イギリス オッカム村出身の神学者・哲学者であったウィリアム(William of Ockham)が、特に多く使用していたことから「オッカムの剃刀」として知られることとなった。

William of Ockham

William of Ockham(オッカムのウィリアム)出展:Wikipedia

オッカムのウィリアムが残した原則

「剃刀」という言葉は、哲学用語においてしばしば、不要な仮定を削ぎ落としたり、2つの類似した結論を切り離したりする様子の比喩として用いられている。

近年では「最もシンプルな解決法は、大抵の場合正しい」という意味で知られているこの法則だが、その解釈は長い哲学の歴史の中で様々な変化を遂げてきた。オッカムのウィリアムが残した原則としては、ラテン語および英語で以下のように表現されている。

Entia non sunt multiplicanda praeter necessitatem.
Entities should not be multiplied unnecessarily.
(実体(存在)は、むやみに増やされるべきではない)

 

Pluralitas non est ponenda sine neccesitate.
Plurality should not be posited without necessity.
(不要に複数の仮定を立てるべきではない)

 

Frustra fit per plura, quod potest fieri per pauciora.
It is pointless to do with more than what can be done with less.
(より少ないことでできること以上のことをやるのは無意味だ)

「オッカムの剃刀」原則の使用例

もともとは神学や哲学で用いられていたが、その後、経済学や科学など様々な分野でもこの原則は用いられている。ふたつの使用例を、以下に挙げる。

1.  神学における使用例

この原則は、スコラ哲学のような宗教哲学の中で古くから利用されていたものである。無神論者と神学者が、神の存在や崇高な力について証明と反論を行う際に用いられていた。
例えば、進化論と創造論が議題の場合、以下のような論争が両者の間で繰り広げられる。

まず、神学者からすると、膨大な事象の偶然の一致が重なったビックバンの発生よりも、神が全ての命を創造されたと信じるほうが、シンプルで明快であると説いたとする。

それに対し、進化論者は、神が存在することが前提として語られているが、そもそもとして、私たちはそれ自体への経験的、科学的証拠を持っていない、と反論する。続けて、神の存在というのは、科学的な理論と比べると膨大な仮定に基づく仮設から成されるものであり、その時点でシンプルさを欠いていると加える。

中世より、このような議論が繰り返し行われている。

2.医学における使用例

シマウマ

科学分野・医学の世界では、「シマウマ探し」という慣用句として知られている。
「蹄の音を聞いたら、まず考えるのは馬であって、滅多なことで遭遇することがないシマウマであることはまず無い」というもので、つまり“シマウマは探すな”ということである。

この慣用句はいくつかの意味があるが、その一つとして「医者は患者と対峙したときに、そこから読み取れる最もシンプルで可能性の高い症状および治療法を仮定するべきである」というものがある。

具体例を挙げると、頭痛や首のこわばり、発熱、混乱を訴える患者に対して、脳腫瘍やむち打ち症、結核、急性ポルフィリン症を同時に発症するよりも髄膜炎である可能性が高い、と考えるべきであるということなる。つまり、不必要に仮定を複数出してのではなく、可能性の高いひとつの仮定に絞り診察を行うべきということである。

複数の症例を疑っていては、正しいものに辿り着くことは困難になる上に、検査等により多くのコストが掛かってしまうからだ。

「オッカムの剃刀」原則の落とし穴

科学の分野においては、この原則を用いることは容易ではない場合も多い。「削ぎ落とす」ことに着目してしまうあまりに、必要なものまでもを排除してしまうことがあるからだ。

この点において、Albert Einstein(アルバート・アインシュタイン)は以下のように述べている。

Everything Should Be Made as Simple as Possible, But Not Simpler.
(すべては、可能な限り単純化にすべきだ。しかし、単純化すぎてはならない)

UXの現場で起こりうる「削ぎ落としすぎ」

UXデザインでもユーザーリサーチで見えてきた数多の情報を適切に削ぎ落として、最終的に平凡で想定できそうなリサーチデーターになってしまうことがある。その際に「シンプルにすること」だけに着目し追求をしてしまうと、ユーザーが本当に求めるているものまでもが欠落してしまう事がある。

取捨選択を行う時、予め、ユーザーが求めるものの本質を明確にしておくのも同時に必要なことと言える。

 

関連用語

ハンロンの剃刀
形態は機能に従う
KISSの法則
フィーチャー・クリープ
少数の法則

関連UX格言

シンプルは何もないことではない

この記事を書いた人:Kie Nakai

フリーランスとしてWebディレクター、プランナー、コンサルタントなど、様々な立ち位置で案件に携わっています。戦略策定から企画、サイト設計に携わることが多く、UXの重要性をひしひしと感じ目下勉強中です。