人間は、規則性のあるものに対して無意識に「美しい」と感じる性質があり、自己相似性もその規則の一つとされている。
自己相似性は図形、音楽、映像、自然界など様々な場面で見ることができる。特に図形の場合は、細部と全体の形が相似であることを指す。
一方で、単純すぎる情報や刺激には美しさを感じない性質があり、単純なパターンよりは少し複雑な方が美しさを感じやすい。
上の図の場合、一番左は単純な三角形だが、右に行くほど複雑になっている。大多数の人は一番左の単純な図形よりも一番右の図形を美しいと感じる。
自己相似性は海岸線や草木でよく見られる。「細部を拡大すると全体と似る複雑な図や現象」の事をフラクタルという。図形として目に見えるものだけでなく、株価やインターネットトラフィックのような統計結果に自己相似性が見られることも多い。
自己相似の例
身の回りに存在する自己相似の具体例を紹介する。
海岸線の自己相似性
海岸線を拡大すると、縮尺が小さい時にはわからなかった微細な凹凸が測定されるようになり、拡大前の形状と似たものになる。
動画の自己相似性
動画にも、表示する図形に自己相似性を使用したものが存在する。下の動画では似た形の図形を繰り返し表示している。
音楽の自己相似性
「カノン」のように小節内の音の動きがブロックや曲全体の大きな音の流れと似た形になっているものがある。全く同じ音階を繰り返すのではなく、開始音が変わっていたりリズムが変更されたりしている。
金融市場における価格変動の自己相似性
測定する時間軸を変えた値動きに自己相似性が認められる。分足(時間軸が1分単位)で値上がり傾向にある場合は、日足(時間軸が1日単位)でも値上がり傾向にある場合が多い。この性質を利用して、トレーダーは利益をあげようとしている。
下の図は時間軸の異なるドル/円の値動きを表したチャートである。①から④の時間軸はそれぞれ1分、30分、1日、1週間で、時間軸は異なってもチャートの形状は似ている。