従業員が企業に所属している間に経験するあらゆる接点(採用、入社、日常業務、学習機会、評価、退職に至るまで)の総合的な体験を指す概念である。顧客体験(CX)が顧客との接点を重視するのに対し、従業員体験は組織の内側に焦点を当て、働く人のモチベーション・満足度・エンゲージメントを高めることを目的とする。
デザイン上に関わる利用方法・具体的事例
従業員体験は「職場を一つのサービス」とみなし、サービスデザインやUXデザインの手法を応用して改善することが可能である。
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オンボーディングのデザイン
新入社員が最初に触れる資料やシステムのUIをシンプルにし、サポートチャットやチュートリアルを導入することで、スムーズに業務を開始できる。 -
業務フローの体験設計
申請システムや日報入力などの社内ツールをユーザー中心に再設計し、使いやすさを高めることで従業員満足度が上がる。 -
学習・キャリア支援
社内LMS(Learning Management System)のUIをゲーミフィケーション化して、従業員が自発的にスキルアップに取り組みやすくする。
提唱者
従業員体験という用語は、特定の一人の学者による提唱ではなく、人材マネジメント分野やHRテック領域で発展してきた概念である。
特に広く知られるのは、ジェイコブ・モーガン(Jacob Morgan) が2017年に著書 The Employee Experience Advantage にて体系的に整理したことである。
プロダクトやコンテンツデザインで「使える場面」と事例
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HRシステム開発
勤怠管理や評価システムを作る際に、単なる入力欄ではなく「従業員が気持ちよく使えるUX」を意識する。例:Slackと連携して自然に休暇申請ができる機能。 -
社内コミュニケーションツール
社員同士のつながりを可視化し、ポジティブなフィードバックを送りやすいデザインを採用する。例:バッジやスタンプで感謝を簡単に伝えられるUI。 -
オフィス空間デザインとの融合
デジタルと物理空間を統合し、座席予約アプリやIoTを用いた快適なワークプレイス体験を設計する。
