無意識にできる動作の記憶や、反射的に思い出してしまう記憶といった、内容を意識的に言葉で表現することができない記憶を潜在記憶という。非陳述記憶、非宣言的記憶とも呼ばれる。
潜在記憶の中でも、「家から最寄り駅までの道を歩く」というような意識しなくても自動的に行えるようになるまで繰り返された動作の記憶を「手続き記憶」、自分の意思と関係なく思い出してしまう記憶を「プライミング効果」「古典的条件付け」と呼ぶ。
手続き記憶のみを指して、潜在記憶として説明している場合もある。
潜在記憶で行われる行動は、認知資源をほとんど消費しないため、行動をしながら注意を他のことに向けることができる。
例えば、毎日運転している人は、運転の動作が意識的に考えずにできる潜在記憶(手続き記憶)となっているため、ドライブ中に同乗者とおしゃべりをするなど、別のことに注意を向けることができる。
記憶の分類の位置付け
潜在記憶は、長期記憶の中の分類のひとつで、記憶の二重貯蔵モデルでの長期記憶に分類される。長期記憶には、潜在記憶と顕在記憶があり、「記憶の内容を言葉で表現できるかどうか」「自分の意思で思い出せるか」の違いがある。
潜在記憶には、手続き記憶、プライミング効果、古典的条件付けが含まれる。
潜在記憶を無意識に呼び出す3種類の記憶方法
潜在記憶は、自分の意思と関係なく思い出してしまう性質があり、手続き記憶、プライミング効果、古典的条件付けによって自動的に潜在記憶が呼び起こされる。
手続き記憶
物事を行うときの手続きについての記憶。例えば、自転車に乗る・水泳・キーボードタイピングといった「体で覚える」記憶がこれにあたる。
記憶内容が自動的に動作に変換されるため、動作過程を言葉で表現することが難しい。主に運動能力の習得に用いられており、動作を繰り返すことで習得できる記憶。
プライミング効果
無意識に思い出す潜在記憶の中でも、言葉や物体の認識による先行刺激(プライム)が、後の行動に影響を与える記憶を無意識に思い浮かべてしまうことをプライミング効果と呼ぶ。言葉や環境といったほんのわずかな影響を受けると、特定の情報を思い出しやすくなる効果。
古典的条件付け
潜在記憶に働きかけて、特定の刺激に対して無意識に反応してしまうようにする学習方法を古典的条件付けという。
関連用語
- 顕在記憶
- 記憶の二重貯蔵モデル
- プライミング効果
- 深層心理
- 手続き記憶
- 認知資源