インタビューなどのユーザー調査で、ユーザーニーズや課題を深く掘り下げる手法。ユーザーの発言や行動に対して、「なぜそう思ったのか」、「どう感じているのか」、「どうしたいのか」などを質問したり、観察して、ユーザーの本当のニーズや課題を明らかにする。
ユーザーに限らず、クライアントや社内の経営陣など、ステークホルダーの要望を正しく理解する時にも活用できる。
探索する、調査する意味である「probe」が由来。プロービングは、絵画の分析手法、歯科治療のための診療、システムの脆弱性検査など他業種でも使われているが、ユーザー調査に絞って説明する。
プロービングでニーズを明らかにする
ユーザーの意見をプロダクトにそのまま反映させても、使われずに失敗することがある。ユーザーの意見の中にあるニーズを明らかにすることで、失敗を防ぐことができる。
例えば、「暑いから氷が欲しい」とユーザーが言ったとしても、単に涼しいところで過ごしたいだけかもしれない。
ユーザーも無意識に言動が異なってしまうことがあるため、表面的な言葉だけでなく、その本意を知るためにもプローピングが重要になる。
「5W1H」+プローピングでニーズを深ぼる
ユーザーニーズを確認する時に、「5W1H(Who,Where,WhenWhat,Why,How)」は足りない情報を明らかにするのに便利だ。しかし、それだけでは深掘りできないこともある。
5W1Hでユーザー要望を深堀りできないケース
漫画のニーズを調査するために、成人男性に「なぜ漫画を読むのか?」と聞いた時に、「漫画は、日常では経験できない世界に連れて行ってくれるから」と答えた。
5W1Hで整理すると「いつ?」「どこで?」が情報として欠けていることがわかるが、「会社帰りに電車で」と確認できたとしても、なぜ漫画を読むのか?を深く知ることができない。
言葉の本意を確認する(問答法)
ユーザーは、自分の考えを何となく言葉にしている場合も少なくない。ニーズを深く掘り下げるために、相手の言葉に対して、どんな意味で利用したのか問いかける「問答法」を使う。
漫画好きの成人男性に問答法を使う
先ほどの漫画のニーズ調査で成人男性が答えた「日常では経験できない世界を感じられる」と言う回答に問答法を使って深堀りする。成人男性が言う「日常」の言葉の意味を確認すると、男性の漫画に対して求めている願望が見えてくる。
問答法 | あなたにとって、「日常」とはなんですか? |
穏やかで退屈な生活と答えれば、ドキドキや緊張感が欲しい願望があるし、毎日同じことの繰り返しと答えれば、事件や滅多にない出来事を望んでいると考えられる。
男性にとっての日常の意味 | 漫画に求める願望 |
穏やかで退屈な生活 | ドキドキや緊張感が欲しい |
毎日、同じことの繰り返し | 事件や滅多にない出来事が欲しい |
退屈な時間を和らげるために漫画を望んでいることが深堀りできると、「帰りの電車の時間」(いつ、どこで)は、一日の中で一番日常的で退屈だと考えることができて、より一層理解を深められる。
問答法を効果的に行うための思考法
問答法は簡単そうに思えるが、問いかけをスルーしてしまうこともある。
例えば、聞き手が「日常」という言葉の意味を「普段の生活」と浅く理解してしまい、意味の確認を見過ごしてしまう。
浅く理解してしまうことを防ぐために、以下のような思考法も活用して問いができると良い。
素朴思考
言葉に対して、前提や常識を知らないつもりになって、素朴に考える思考法。
日常では経験できない世界とはどんな世界ですか?
天邪鬼思考
言葉に対して、ひねくれた視点になって考える思考法。
映画の方が、日常では経験できない世界にいけませんか?
哲学的思考
形容詞や動詞など、より抽象度の高い言葉に対して考える思考法。
「世界にいく」とはどういうことですか?
コンテキストの中で質問する(コンカレント・プロービング)
お腹が減っていれば食事を食べたいと思うように、ユーザーの要望はコンテキスト(状況)によって変化するので、会議室で話を聞くだけでなく、ユーザーの生活する環境の中でニーズを調査する。その場で質問するという意味でコンカレント・プロービングとも言われる。
コンカレント・プロービングを利用する調査法を以下に紹介する。
コンテクスチュアル・インクワイアリ
調査者が、ユーザーの実際の現場を観察しながら、その時に起こっていることに対して質問をする調査手法。
ユーザビリティテスト
ユーザーが実際のプロダクトやプロトタイプを操作しているところを観察し、行動に対して理由を確認することで、ユーザビリティをテストする手法。
誘導に気を付ける
質問者は意図せず、相手を誘導する可能性もあるので注意する。例えば、「便利だと思うのはどちらですか?」という質問は、「どちらも便利だと思わない」という第三の選択をさせない誘導に繋がる(ダブルバインド効果)。この場合は、「便利と思うようなものはありましたか?」とオープンに聞くことで、誘導せずに質問に答えてもらうことができる。
参考URL
- 「問答法」をわかりやすく解説【クリティカルシンキングを鍛える】
- Concurrent Probing in User Research | Think Design
- Probing in User Interviews (Video)
参考書籍
- 安斎 勇樹、塩瀬 隆之 「問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション」学芸出版社(2020)
関連用語
- ダブルバインド効果
- メタモデル