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RAGを使うこなすのが次世代のUXデザイナー

― AI時代に、プロダクトデザインが「価値を編み直す」

この記事で、UXデザイナーやプロダクトマネージャーがRAGについて理解することができます。RAGはプログラマーでなくても生成することができます。Part1・Part2・Part3Part4
原文:https://www.uxforai.com/p/escape-from-the-figma-titanic-part-2-uxer-s-guide-to-magic-rag

AIの進化は、もうツールの話ではありません。
あなたが「どんな情報を、どう織り込むか」でプロダクトの価値そのものが決まる時代です。

その鍵となるのが RAG(検索拡張生成:Retrieval-Augmented Generation)
これは、AIが“必要な瞬間に”正確な情報を呼び出し、最適なコンテンツを生成する仕組みです。

最新のRAGは、UXデザイナーにとってまさに「魔法のじゅうたん」――データという広大な砂漠の上を軽やかに飛び、ユーザー体験という“未知の地形”を自在に探索できるツールになりつつあります。

過去のように、ピクセルを整えるだけの時代はもう終わりました。
UXデザイナーは今、AIとともに「知識を設計する存在」へと進化しようとしています。

著者:Greg Nudelman(グレッグ・ヌーデルマン)
2025年7月10日

RAGとは何なのか?

RAGとは、LLM大規模言語モデル)やAIエージェントに「自社のデータ」や「最新のナレッジ」を安全に組み込む方法です。
これによりAIは、より正確で、文脈に合った、リアルタイムな回答を出せるようになります。

たとえば、ブログ記事をAIに読ませてFAQを自動生成する。
あるいは顧客サポートで、ユーザーの購入履歴をAIが参照して即答する。
こうした仕組みこそがRAGです。

RAGとは「Retrieval-Augmented Generation」(検索拡張生成)の略です。
LLM が特定の質問に答えたり、AI エージェントがカスタムの特殊なタスクを実行したりできるように、カスタム コンテンツを組み込む手法です。これは、システムが AI に何かを実行する方法に関する具体的な詳細を提供し、より関連性が高く、正確で、最新の応答が得られるということを言い換えたものです。

たとえば、ブログ記事をAIに読ませてFAQを自動生成する。
あるいは顧客サポートで、ユーザーの購入履歴をAIが参照して即答する。
こうした仕組みこそがRAGです

SF作家ロバート・シェクリイは、こんな言葉を残しました。

“To ask a question you must already know most of the answer”
― 質問をするためには、すでにその答えの核心を知っていなければならない。

まさにRAGは、「AIが良い質問をするための基盤」なのです。

なぜRAGが必要なのか?

LLMはすでに世界中のデータを取り込んでいます。
けれども、そこにあなたの会社独自の知識や顧客データは含まれていません。
RAGは、その「残された最後のピース」をAIに安全に渡すための橋渡しです。

「ファインチューニングではダメなの?」

良い質問です。
ファインチューニングも一時期は主流でしたが、RAGには圧倒的な優位性があります。

特徴RAGファインチューニング
データ更新ミリ秒単位でリアルタイム反映数時間~数日かかる
コスト低い(モデル再訓練不要)高い(再学習が必要)
柔軟性高い。必要な時だけ読み込み固定的。モデルに埋め込み済み
エージェント対応動的な呼び出しに最適静的な用途に限定

つまりRAGは、“AIを即戦力に変える仕組み” なのです。

1)ジャストインタイムのデータ読み込み

RAG により、カスタム LLM モデルの作成、トレーニング、ホスティング、管理が不要になり、コストを削減できます。主要なモデルであればどれでも使用可能で、質問の直前にプロンプ​​トに必要なデータだけを読み込むだけです。

2)動的更新が可能

RAGは、ミリ秒単位のリアルタイムデータを読み込むことができます。ファインチューニングされたモデルでは、数時間経たないと更新できません。その間にデータは陳腐化します。

RAG を使用することで、最小限のレイテンシでデータを読み込むことができ、わずか 1 ミリ秒前の最新の購入履歴を含むすべての顧客購入履歴を読み込むことができます。(対照的に、Fine-Tuned モデルは最大でも数時間おきにしか更新できないため、動的データはすぐに古くなります。)

3)最小限のデータで動作

RAGでは、最小限のデータのみを取得・ロードする必要があるため、高速かつ効率的です。これは、RAGファイルの各チャンクをエンコードし、タスクに基づいて取得するデータを決定する特別なベクトルデータベース(Vector DB)によって実現されます(この記事では扱いません)。

4)エージェントに優しい柔軟性

RAGの「無駄がなく、その場で最適化できる自己指向型の仕組み」は、エージェント型AIアプリケーションに特に向いています。
エージェントは自律的に行動するため、必要なデータを事前にすべて予測することはできません。実行中に「あるデータを取得しようとしたが行き詰まる → 方向を変えて別のデータを取りに行く」といった試行錯誤を繰り返すことがあります。その際、エージェントは状況に応じて異なるRAGファイルセットを呼び出し、動作を柔軟に切り替えていきます。

UXデザイナーこそ、RAG時代の中心に立て

かつてRAGファイルは、データサイエンティストだけが触れる「錬金術」でした。
しかし今、ルールは変わりました。

「1つのRAGファイル=1つのユースケース」

それはつまり――
ユーザーの文脈を最も深く理解しているUXデザイナーやPMこそが、RAGの主導者であるということ。

あなたの手で、AIが“誰のために何を語るか”を定義できる時代が来ています。

RAGファイルを作ってみよう

では実際に、RAGファイルをどう作るのでしょうか?例として、ChatGPTに以下のようなプロンプトを与えます。

「このページのレシピからRAGファイルを作って。JSONではなくテキストで。タイトル、説明、材料、作り方を含めて完全なRAGファイルとして出力して。」

すると、AIは一瞬で構造化された知識ファイルを生成します。
このファイルをアップロードすると、AIは“あなたのレシピ”を正確に理解して回答するようになります。

プロンプトに魔法はありません。
重要なのは、AIと協働しながら、最適な問いと構造を繰り返し磨いていくことです。

RAGを使いこなす人が、AIを使いこなす

RAG作成は、単なる技術ではなく、思考のデザインです。
AIが自ら学び、調整し、成長するための「指示書」を人間が設計する。

これはまさに、UXデザイナーの本質的なスキル――
理解し、構造化し、伝える力――が求められる領域です。

ただし、データ サイエンティストと LLM 向けのコンテンツを作成するには、データ サイエンティストと LLM と連携する必要があります。

RAGファイルを作ろう

具体的にどうやってRAGファイルを作るのかをご紹介します。例として、ChatGPTを使ってみましょう。

あなたが「Life Clock(ライフ・クロック)」というライフスタイルアプリのデザインに取り組んでいるとしましょう。このアプリには、自社オリジナルのタイ料理の健康レシピが含まれており、その中の「トムヤムクン」のレシピをユーザーに提供するという状況です。

ChatGPTへのプロンプト例:

以下のプロンプトをChatGPTに入力してください:

Create an individual RAG file from the recipe on this page. Make this RAG text, not JSON. IMPORTANT: make sure it’s a downloadable complete text RAG file you can use to create this recipe. Include file headers, id, title, description, ingredients, the works! https://hot-thai-kitchen.com/tom-yum-goong/

すると、以下のようなRAGファイルが生成されるはずです:

RAGファイル例:

alt: タイのスープ「トムヤムクン」のレシピを記述したRAGファイル)
caption: LLMが参照可能な形式で整備されたレシピRAGファイルの例)


# RAG DOCUMENT
id: tom-yum-goong-creamy
title: Creamy Tom Yum Goong(ต้มยำกุ้งน้ำข้น)
description: 海老、きのこ、香り高いハーブを使ったクラシックなトムヤムスープの濃厚クリーミー版。

tags: タイ料理, スープ, 辛い, クリーミー, シーフード

## 材料
- 水 5カップ
- 海老(10〜12尾、皮をむいて背ワタを取る)
- レモングラス 2本(下部のみ、叩いて5cmにカット)
- ガランガル 約25g(薄切り10枚)
- カフィアライムの葉 10枚
- きのこ(オイスターマッシュルーム推奨、約200g)
- 唐辛子(乾燥または生、適量)
- ナンプラー 大さじ3
- グラニュー糖 小さじ2〜3
- シャロット 2個(半分に切る)
- ※オプション:タマリンドペースト、ココナッツミルク、ナムプリックパオ
- 仕上げ用:ライムジュース、香菜、青ねぎなど

## 分量と栄養
- 4人分
- カロリー表示なし
- レシピ作者:Pailin Chongchitnant(パイリン・チョンチットナント)

## 作り方
1. 鍋に水を沸騰させる。
2. シャロット、ナンプラー、砂糖を加え、味をなじませる。
3. レモングラス、ガランガル、ライムの葉、唐辛子を加えて煮込む。
4. きのこを入れてさらに5分煮る。
5. 海老を加えて、火が通るまで加熱する。
6. (クリーミー版)タマリンドペーストやココナッツミルクを加えて軽く温める。
7. 火を止め、ライムジュースで味を調整。
8. ナンプラー、砂糖、水などで最終調整。
9. 盛り付け直前に香菜・青ねぎを加える。
10. ジャスミンライスと一緒に提供。

## メモ
- ハーブ類は冷凍保存してそのまま使える。
- 本格的な辛さを求めるならタイ唐辛子を。
- クリーミーな仕上がりにはココナッツまたはエバミルクを使用。

次に:RAGファイルを使って質問してみよう
生成されたRAGファイルをChatGPTにアップロードし、以下のような質問をしてみてください:

タイのスープを作ってください

すると、RAGファイルに基づいてトムヤムクンのレシピが出力されます。
さらに、タイスープに関連する質問であれば、LLMはこのRAGファイルを参照して回答します。

補足:ここで注目すべきこと

  • プロンプトに「魔法」はない
    いくつかの単語をわざとスペルミスしても(例:recipie, complate)、LLMは文脈から正しく意図を読み取り、柔軟に処理してくれます。
    つまり重要なのは、「どう書くか」よりも「何を伝えたいか」 です。プロンプトは呪文ではなく、設計図です。
  • RAG作成は反復のプロセス
    UXデザイナーにとって、反復は呼吸のようなものです。
    完璧なRAGを一発で作ろうとする必要はありません。
    まずは「これでRAGファイルを作って」とAIに指示し、出力を確認。
    足りない点や構造のズレを見つけて、何度でも調整していきましょう。
  • データサイエンティストに聞こう
    「理想的なRAGファイルの形がわからない」と感じたら、ためらわずチームに聞いてください。JSON形式で出力すべき?
    セクションの構造は?
    どんなデータ例がある?
    質問し、試し、修正する。
    この往復こそ、RAGをチームで育てる最も自然な方法です。
  • 公開ページでも練習できる
    ここで紹介した例では公開HTMLページを使っていますが、実際に価値を生むのは、自社特有のデータ(機密・動的・ユースケース特化型)を扱うときです。最初は安全なデータで試し、構造と手応えをつかむのがおすすめです。

「ロボットのための指示書を、人間がつくる」

まさにその通りです。
RAG設計とは、ロボットと協働しながら、ロボットの“考える手順”を設計する行為です。

問題を作った存在こそが、解決にも最も適している。
AIが正しく学ぶためには、あなたの問いの構造が必要なのです。

私が最もよく使うプロンプトは、これです:

“Hey LLM, you keep screwing up X. Whenever I ask A you say B and I want you to say C. What do I put in a RAG file to fix this?”
「ねぇLLM、君はXをいつも間違えるよね。Aって聞くとBって答えるけど、Cって言ってほしい。どうRAGファイルを作れば直るの?」

人間の価値はどこに存在するのか?

RAGファイルの作成は、言ってみれば「テキストベースの基本的なプログラム作成」に近い作業です。
LLMが自らの指示書を解説し、学習してくれるため、単純作業はすべてLLMに任せることができます。
しかし、最終的に「出力が正しいかどうか」を決定するのは人間の判断です。

その判断を正しく下せるのは誰か?

  • 顧客をよく知っている
  • 競合環境を分析している
  • 顧客のニーズと企業の機能や収益とを橋渡しできる

そんな人。つまり、あなたです。

結論:RAGには魔法なんてない。でも、UXerには魔法がある

RAGの作成は、ちょっとしたプログラミングに似ています。でも、UXデザイナーやPMにとっては、ずっと取り組みやすい世界です。LLMもデータサイエンティストもあなたを助けてくれます。あなたの最初の一歩を踏み出しましょう。

次回予告

次回は「RAGレジストリ」の作り方を紹介します。
これは、一般的な手法やエラー、バリエーションに関する情報を集めて保存するための共有リポジトリのようなものです。

参考リンク

P.P.S. その他のよくある質問

(注: このセクションはChatGPTを使用して作成されています)

RAGは安全ですか?ユーザーのプライバシーはどうですか?
回答: RAGは安全ですが、個人情報(PII)や機密データは適切に処理する必要があります。オンプレミスまたは暗号化されたベクターストアを使用し、データガバナンスのプラクティスに従ってください。つまり、ChatGPTのようなパブリックLLMに自社独自のデータをロードしないでください!テクニカルサポートにプライベートLLMインスタンスを依頼してください!(ただし、無料のChatGPTを使用してタイ料理で練習することはできます。または、パブリックドキュメントで練習することもできます。)

RAGファイルの作成を開始するにはどのようなツールが必要ですか?
回答: テキストエディタとChatGPTのようなLLMへのアクセスが必要です。RAGを本番環境レベルのシステムに拡張する場合は、オプションとしてベクターDB(PineconeやWeaviateなど)が必要です。

PDF、ドキュメント、HTMLページをRAGソースとして使用できますか?
回答: はい!ほとんどのLLMは、少しの前処理を加えるだけでPDFやWebページからテキストを抽出できます。また、手動またはプログラムで構造化されたRAGファイルに変換することもできます。

RAGファイルが機能しているかどうかをどのように測定できますか?
回答:プロンプトテストを使用します。RAGを読み込む前と後に質問をします。回答がより具体的で、関連性が高く、正確であれば、正しい方向に進んでいます。UX評価とユーザーからのフィードバックが重要です。

ワークショップのご案内

2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」のワークショップに参加して、RAGの内容も含めたAIプロダクトデザインを学びましょう!

>>2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」の特設ページでお申し込みください。

YouTubeで音声スライドも公開中!

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UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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