UX DAYS TOKYO 2024 のカンファレンスに登壇したビジュアルシンカー Eva Lotta Lamm（エヴァ・ロッタラム）氏に、図解の意義やデザインにおける即興性の重要性についてインタビューを行いました。
図解の出来栄えより、議論のプロセスをサポートすることが大事
Q:ビジュアルシンキングのメリットは何ですか？
（エヴァ・ロッタラム氏）：最も重要なのは、物事の関係性を視覚的に示すことです。言葉は、誰かの発言を元に、次の言葉を返すように、一連の順序に従って直列に並びます。 しかし、視覚的な表現では、要素を同時に見ることができ、それらの関係性を一目で把握することができます。全体像の中で問題を捉え、考えることが可能になるのです。
Q：ビジュアルシンキングを取り入れる際に、気を付けることはありますか？
（エヴァ・ロッタラム氏）：「気にしすぎない」ことです。私たちはしばしば、絵を描く能力やその出来栄え、他人からの評価を過度に気にしがちです。しかし、もっと勇気を持って実験してみることが大切です。話しながら図解を描くといった新しいアプローチを試してみましょう。
重要なのは、考える前にまず描き始めることです。 これは一見すると奇妙に聞こえるかもしれませんが、議論をスケッチする際、私は参加者が話し始めた瞬間から描き始めます。この時点では、どのような話になるのか、スケッチがどう展開するのかはわかりませんが、とにかく描き続けます。何かを描くこと自体が、会話を進めるのに大いに役立つのです。
最も重要なのは、最終的に完成したスケッチではなく、議論のプロセスをサポートすることです。スケッチは、議論を視覚的にサポートし、参加者がより良い理解を得るための手段です。
柔軟に変化するための「即興力」がデザインに役立つ
Q：なぜビジュアルシンキングに即興力が必要だと思ったのですか？
（エヴァ・ロッタラム氏）：私は15年以上にわたり、即興劇を趣味として続けています。即興劇は、台本なしでその瞬間を受け入れ、表現する勇気を持つことが求められます。演劇では、体と声を使って即興を行いますが、ビジュアルシンキングでは紙の上で行います。瞬時に反応し、その場で作業することを恐れずに行うことで、練習している技術や技法をすぐに活用できるようになります。
デザインプロセスも即興性を伴います。私たちは、どこから始め、何を作るべきかを完全には把握していません。要求事項や新しい情報が常に変化し、それに応じて柔軟に対応する必要があります。その瞬間にどのように反応するかを学ぶことは、デザイナーとして不可欠なスキルです。
Q：即興はとても難しく聞こえます。
（エヴァ・ロッタラム氏）：はい、多くの練習が必要です。ただ、私はデザインそのものが即興的なものだと考えることがあります。 なぜなら、私たちはデザインを始める際に、どこからスタートし、最終的にどのような形になるのかを完全には分かっていないからです。
また、私たちが絵を描くことを難しく感じる理由は、絵を「芸術」として捉えるからです。
しかし、文章にも、洗練されたコラムと簡潔なメモがあるように、絵も必ずしも完璧である必要はありません。素敵に見える必要もありません。重要なのは、絵を実用的な手段として目的を達成するために使うことです。
絵を初めて描くときは、少し難しいと感じるかもしれませんが、すべてのものには体系があります。少し練習すれば、誰でもうまく描けるようになります。
まとめ「ビジュアルシンキングのアプローチ」
エヴァ・ロッタラム氏は、視覚的表現の力を通じて、私たちの考えやアイデアをより効果的に伝える方法を提唱しています。彼女は、日常の作業にスケッチと視覚的思考を統合する重要性を強調し、その過程で得た知識を惜しみなく共有しました。
彼女の豊富な経験と深い知識は、あらゆるクリエイティブな職業に従事する人々にとって貴重なインスピレーションを提供します。視覚的なツールを活用することで、複雑な問題をより明確に理解し、効果的に解決する方法を教えてくれるのです。
スピーカー紹介
エヴァ・ロッタラム（Eva Lotta Lamm）
Google、Skype、Yahoo!などの企業で15年間UXデザイナーとして活躍した後、現在はドイツのベルリンでビジュアルシンキングとプロダクトデザインを教えています。彼女は、スケッチを通じて複雑な問題を視覚的に解決する能力により、世界的な評価を受けています。
また、彼女の多様な趣味—ヨガ、芝居、ローラースケート—は、ビジュアルシンキングの発想にも影響を与えています。カンファレンスでは、ビジュアルシンキングとスケッチを活用してアイデアを視覚的に表現することの価値について詳しく語り、その重要性を伝えました。
