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AIインクルーシブUXとは?デザイナー必見の次世代手法

元の記事「https://www.uxforai.com/p/the-new-ai-inclusive-ux-process」を日本語に翻訳・要約し、読みやすく整理したものです。AIプロダクトに関わるUX/UIデザイナーやPdMの方にとって実践的な内容です。

AIインクルーシブUXの解説|顧客中心のAI時代のデザイン手法

AIへの取り組みは、これまでの業務とは根本的に異なります。しかしながら、ユーザーファーストの柔軟な発想と迅速な対応力は更に注目され、新たなレベルの能力が必要となります。こうしたニーズは、包括型(インクルーシブ)な新しいプロセス図に明確に示されています。

UX設計のプロセス図の今まで

UXプロセスの図式化は、極めて線形的なプロセス図から出発しました。これらの図表は、経営陣やクライアントがUXデザインプロセスに安心感を持てるように設計されたものです。初期のプロセス図はこのように線形構造を持ち、要件定義からプロトタイプ作成、プロダクトリリースまでの体系的な価値向上プロセスを表現しています。

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Source: https://powerslides.com/powerpoint-marketing/web-design-templates/design-process-diagram/

いいアイディアです。しかし、残念ながら、上記の図はほぼ実現しません。

実際のプロセスは、元Appleのデザイナーが作成した以下のような図表(参照元を見つけらなかったので作成しました)です。

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画像出典:Greg Nudelman

真ん中にある「創造的な混沌」は非常に威圧的に感じられます。そのため、私たちは「混沌」をより単純化したバージョンを作る傾向があります。例えば、私のお気に入りのUXデザイン手法のRITE:ライト(Rapid Iterative Testing and Evaluation:高速反復テストと評価)の循環的性質を説明する下記の図も以下のようになります。

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Source: https://www.slideshare.net/usableinterface/rapid-testing-ct-uxpa-slideshare

このように綺麗にまとまった図表は、残念ながら、AIドリブン型のプロダクトや機能を現実するための設計ではありません。実際の実装方法を図に示すことができていません。

この問題は、実装できない設計であることと同時に、デザイン業界の甘えと怠慢を表しています。長年にわたり、私たちの多くは自分のデザインがどう実装されるかなど気にしなくても良いという恵まれた環境にいました。UXの人たちは、ビジネス運営の厳しい現実から目を逸らし続けてきたのです。

そして正直なところ、それは往々にして事実でした。クラウドコンピューティングのような技術により、AからBへの道筋さえあり、実装コストがそれなりに妥当である限り、バックエンドで実際にどう動いているかなど気にしなくても良いという習慣が身についてしまったのです。私たちはUXに集中し、実装は開発者に任せるという贅沢を享受していました。

しかし、AIの登場により、これらすべてがひっくり返されます。

ユーザー中心思考の新しいあり方

その違いを説明し、新しいユーザー中心思考の方法を示すために、以下に示す「AIインクルーシブUXプロセス図」を開発しました:

手描きの図が、ビジネス・開発・データを結ぶAI製品開発の反復的なプロセスを示している。

上の図のプロセスは、戦略的な目標と市場調査から生まれたアイデアでスタートします。そのアイデアは、プロジェクト開始時に行う異なる部署のメンバーによる短時間のブレインストーミングで、すぐにプロトタイプとして形にされます。

アイデアがまとまって予算がついたら、この新しいやり方の中心部分に進みます。ここでは、問題を明確にして解決策を作ることを短期間で何度も繰り返します。この部分は従来のRITE手法とよく似ていますが、大きな違いが一つあります。それは、定期的にAI関連の技術検証(Spike)を行うことです。

スパイク(Spike)って、何?

アジャイル用語の「スパイク」は、あるアイデアが実現可能であることを示す動作するコードを作るための、素早く粗削りな概念実証プロジェクトを指します。スパイクの重要な点は、非常に軽量で粗削りであることで、本格的なプロダクションコードとは正反対のものです。

AIの場合、このようなスパイクは、とても基本的な入出力の「体験」を提供するシンプルなPythonノートブック環境を使って行うのが最適です。これは「このモデルは期待した結果を出すか?」という単純な質問に答えることを目的とした、AIの最も基本的な概念実証です。目的は、問題の定義を素早く確定し、解決策の「概念実証」を行うことです。

データの役割とは何か?

サイクルのもう一つの要素は「データ」です。データはAIモデルの訓練と検証に使われます。実際「AI」は相互に関連する2つの部分で構成されています。「AIモデル」と「データ」です。この2つは密接に結びついており、UXデザインの観点では、一つのシステムとして考えることができます。

このプロセスの仕組みは次のような循環になっています。まず、最初のアイデアからUXデザインを改善していく過程で、AIモデルに新しい要件が生まれます。そこでAIモデルをスパイク(概念実証)で検証すると、新しいデータが必要になることがわかります。

ところが、そのデータを調べてみると、重要な部分が欠けていたり、偏ったバイアスが含まれていたり、法的な利用制限があったりといった問題が発覚します。

これらの問題により、AIモデルが期待通りに機能しなくなり、結果として顧客が望むUX機能を提供できなくなってしまいます。そのため、デザイナーは別の方法を考えて設計を見直す必要があり、新しいアイデアや修正されたアイデアが生まれます。すると再びAIモデルの検証が必要になり、同じサイクルが繰り返されることになります。

この一連の流れの中で、顧客はどこにいるのでしょうか?

もちろん中心にいます。顧客が常にあるべき場所です。このプロセス全体は、顧客との迅速な反復テストを中心に展開されています。むしろ、このプロセスを使うことで、顧客からのフィードバックが開発プロセスのより早い段階に組み込まれるようになります。

なぜこの変化が必要なのか?

顧客は今でもプロセスの中心にいることに変わりはありませんが、AIが普及したことで、デザインを改善していく過程で技術面の検証も同時に行う必要が出てきました。これは、長い間技術が安定していたのに対し、AI技術はまだ完全に確立されておらず、何ができて何ができないかが明確でないためです。

AIの出力をモックアップで再現するのは非常に困難です。そのため、簡単な紙のモックアップとPythonノートブックを組み合わせることで、顧客にプロダクト全体のストーリーを正確に伝えられるなら、それを採用すべきです。

なぜでしょうか?それが、次に何をすべきかを教えてくれる正確で詳細なフィードバックを得る最も効率的な方法だからです。そして効率性は非常に重要なのです。

UXの役割への影響

UXの役割は常に3つの側面がありました。
顧客の障壁を取り除くこと(既存プロダクトのユーザビリティテスト)、イノベーションと競合分析の実行、そして最後に、顧客・ビジネス・テクノロジーを結びつける接着剤としての役割です。

これらの責任の多くは変わらずに残ると思います。

しかし、顧客・ビジネス・テクノロジーを結びつける「接着剤」としての役割は、AIの導入によってますます重要になるでしょう。なぜなら、この新しい技術は未知で、しばしば予測不可能だからです。この新しいAIインクルシブ(包括型)UXプロセスは、体験の不可欠な部分となった技術そのものを研究する必要性を証明しています。

新局面を迎えるAI時代では、UXデザイナーが効率化とコスト削減を推進する役割がより重要になります。それには、素早い試作品作り、お客様からの迅速なフィードバック収集、そして無駄を省いたスピーディーな意思決定によって実現されます。

UXの役割における今後の変化は、以下のわかりやすい図にまとめられています

イラスト UX Glue

Q) これは、データサイエンスチームのメンバーに良い質問ができるように、私もAIについて学ぶ必要があるということでしょうか?

A) はい

開発チームへの最終引き継ぎ

プロセスの最後は、開発チームに作業を引き継ぐステップです。これまでとは違う新しい考え方なので重要です。

従来は、デザイナーが設計している間に、開発者も同時に本格的な開発を始めていました。しかし新しいAI時代のプロセスでは、「試しに作ってみる段階」と「実際にお客様が使えるプロダクトとして完成させる段階」をはっきりと分けています

UXデザイナーの立場から見ると、お客様の声を聞きながら改善を繰り返すという基本的な仕事内容は変もう一つの変化は、実際に使われているプロダクトから情報が戻ってくることです。お客様の反応、AIの学習結果、新しく集まったデータなどが、また最初の開発プロセスに戻ってきます。

AIインクルーシブUXプロセス図が教えてくれるのは、AIプロダクトは普通のプロダクトと違って「完成」がないということです。そして、変化するスピードがどんどん早くなっているということです。わりません。ただし、「はい、これで完成です。あとは開発チームにお任せします」という引き継ぎのタイミングが、これまでより明確になったということです。

予想しない変化が訪れている

AIは、これまで私たちが見たことのないものです。私たちは、新しい常識の中で直面する可能性と要求を探求し始めたばかりです。継続的で迅速な調整が、UXでAIドリブンプロジェクトを成功に導く鍵となるでしょう。

新しいAIインクルーシブUXプロセス図についてどう思われましたか?ぜひ皆さんの意見をお聞かせください!

グレッグ&ダリア

ワークショップのご案内

日本では、2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」のワークショップを開催します。

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>>2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」の特設ページでお申し込みください。

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UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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