著者|Shai(シャイ)Senseプロダクトデザイナー | 元Freshworks |Designfolio.meの構築など
出典:https://uxplanet.org/ux-skills-extinct-2026-3ab33ba9a7a8
UX PlanetのMediumの記事で、許可を得て翻訳・掲載をしております。
多くの人が「優れたUXデザイナーになるためのスキル」について語りますが、ここでは少し視点を変えて、2026年までに時代遅れになる可能性が高いUXスキル7選についてお話しします。
そう、これはあくまで私の予測です──しかし、近い将来、UXデザイナーにとって意味をなさなくなるスキルが確実にあります。
数年前まで、デザイナーの目標はシンプルでした。
Figma(フィグマ)を使いこなし、ピクセル単位で完璧なワイヤーフレームを作り、美しい画面を開発者に渡すこと。しかし、今やこのやり方は通用しません。
業界は成熟し、企業が求めているのは「見た目の美しさ」ではなく、投資対効果(ROI)です。
アジャイル型のワークフローでは、時間のかかる儀式的なプロセスに割ける余裕もありません。
そしてAIがデザインプロセスに本格的に組み込まれ、繰り返し作業を担い、非効率なワークフローを置き換えています。
UXそのものがなくなるわけではありません。
しかし、その従来の手法の多くは姿を消すでしょう。
ここでは、2026年までに廃れるであろうスキルと、代わりに身につけるべき新しいアプローチを紹介します。
①Figmaでのワイヤーフレーム作成はやめよう
かつて、デザインの第一歩といえば「ワイヤーフレーム」でした。
紙やデジタルキャンバス上にグレースケールのボックスを描き、画面構造を示す──そんな手法です。
しかし、現代の高速な開発サイクルにおいて、静的な画面は単なる“儀式”にすぎません。
レイアウトは示せても「ユーザーの流れ」は伝えられず、チームは実際の体験を検証する代わりに、四角の位置について延々と議論を続けることになります。
なぜこのやり方は廃れつつあるのか
- 静的なワイヤーフレームでは、ユーザーの操作を再現できず、問題が後工程になってから発覚する。
- グレーのボックスの意図を関係者が誤解し、認識のズレが生まれる。
- アジャイルな環境では、早期にクリック可能なプロトタイプが求められるのに、静的な成果物がスピードを阻害してしまう。
では、どうすればよいのか?
「構造と動き」を同時に示せるインタラクティブなプロトタイプへ移行しましょう。
たとえば Lovable、Replit、Bolt のようなツールを使えば、アイデアからクリック可能なデモまでを数分で構築できます。
初期段階で「Vibe Coding(実際に動くコードを使ったデザイン)」を行えば、
ユーザビリティを早い段階で検証でき、無駄な反復を大幅に減らせます。
なお、UX for AIのグレッグさんの記事では、AI駆動型プロダクトでは、AIの反応を見るので静的なデザインでのテストができないことを解説しています。
>AI駆動型プロダクトの設計革命!なぜ従来のUXプロセスとFigmaでは通用しないのか
②フラットな画面を渡すのはやめよう。動くコードで引き渡そう
これまで多くのデザイナーが、完成したUIデザインをFigmaやZeplinで「静的な画面」として開発者に渡してきました。
しかし、AIがコーディングを支援する時代において、静的な画面データの引き渡しは非効率です。
実際、開発者はコードの構造や状態遷移を理解したいのであり、見た目だけを確認しても意味がありません。
静的なUIはその橋渡しを果たせず、仕様の解釈ミスや手戻りを生みやすいのです。
なぜ廃れるのか
- LLMベースの開発環境では、テキストプロンプトやJSON定義から直接UIを生成できる。
- コード生成ツールが発達し、デザインデータを「動く形」に変換する工程が不要になりつつある。
- コードで共有することで、開発者との共通言語が生まれ、デザインの変更も迅速になる。
これからのやり方
「プロトタイプではなくプロダクトを渡す」という発想が重要です。
具体的には、UIコンポーネントをReactやFlutterで動かせる状態にしておき、
開発者がそのまま再利用できる形で引き渡します。
A) Builder.io to Lovable(Reactコンポーネント)
FigmaでBuilder.ioプラグインを使用→フレームを選択→Lovableで開く
B) Locofy.ai(React/Next/HTML対応)
Locofyプラグインを使用→コンポーネントやブレークポイントをタグ付け→コードを生成
→React/Next→プロジェクトとしてエクスポート→GitHubにコミット→(ボーナス)Replitで開く→プレビューをデプロイ
デザインツールからエクスポートするのではなく、最初からデザインとコードを一体化させて設計する方向に進むべきです。
③ユーザビリティテストに頼りすぎない
かつてユーザー体験(UX)の基盤だったのは、参加者をリクルートし、スクリプトに沿って進行し、行動を観察するという、従来型のユーザビリティテストでした。
依然として有益ではあるものの、現代のスピード感には対応できません。継続的デリバリーには迅速なループが求められ、手動のテストでは追いつきません。
なぜ廃れるのか
テストの準備や参加者のリクルート、結果の分析には数週間かかり現代のチームにはその余裕がありません。少数のサンプルでは、大規模な行動パターンを明らかにできません。結果が出る頃には、すでにプロダクトが変更されていることが多々あります
新しいアプローチ
ハイブリッドテストシステムを構築しましょう。AI駆動型のユーザビリティツールが大規模なシミュレーションを実行してパターンを発見する一方で、人間が介入して微妙な体験を評価します。これにより、開発を遅らせることなく、共感性を維持できます。
調査結果の「サマリー資料」は不要になる
AI活用ガイド:ChatGPTのDeep ResearchでUXを分析する方法
リサーチレポートをドキュメント化して共有する、というプロセスも減少しています。
なぜなら、AIが調査データを自動で分析し、チームメンバーが自然言語で質問できるようになっているからです。
ChatGPTでDeep Researchを有効化
↳ デザインを画像として共有してください。
↳ 次のプロンプトを入力します:
"Do a heurisitic evaluation of the onboarding flow of [App Info]. Benchmark it against [Competitor 1] and [Competitor 2]. Identify the top usability issues and higlight opportunities to improve"
↳ This will give a detailed report on how to improve the Usability of your design.「[アプリ情報]のオンボーディングフローについてヒューリスティック評価を行い、[競合1]と[競合2]と比較してください。主なユーザビリティ上の課題を特定し、改善の機会を明示してください。」↳ これにより、あなたのデザインのユーザビリティを向上のための詳細なレポートが得られます。
④線でつなぐユーザーフローより、状態でつなぐUX設計へ
従来のUX設計では、ユーザーの行動をフローチャートで表す「ユーザーフロー」が主流でした。
しかし、AI駆動型プロダクトでは、ユーザーの行動が予測不能で分岐の多い動的シナリオになります。
固定のフローでは対応しきれません。
なぜ廃れるのか
一律のフローは初心者と上級者の双方を排除し、フラストレーションを生みます。長期的には、小さな非効率が積み重なり、大きな財務損失につながります。
人々は多様な文脈でプロダクトを利用しており、「平均的なユーザー」という概念自体が非現実的です。
新しいアプローチ
これからは、「状態中心のUX設計」が鍵となります。
ユーザーが今どんな状態(例:入力中、AI応答待ち、再生成後、再編集中)にあるかを定義し、
それぞれの状態で最適な支援・情報・アフォーダンスを設計するのです。
つまり、フローを描くのではなく、状態をデザインするのです。
⑤クリック操作型ナビゲーション(Click-Based Navigation Patterns)
かつてのナビゲーションは、ハンバーガーメニューやドロップダウン、左上のナビゲーションバーといったクリック操作中心のUIに依存していました。
しかし、スマートフォンの大型化やユーザー行動の変化により、こうしたパターンは次第に使いにくくなっています。
隠れたメニューはユーザーの機能認知を下げ、親指での操作性を考慮すると従来のレイアウトは物理的にも不便です。
廃れつつある理由:
- ハンバーガーメニュー内の機能は利用率が低下しやすい
- 左上ナビは現代の大画面端末では指が届きにくい
- クリック数が多いと発見性が下がり、離脱を招く
これから取り入れるべきアプローチ:
スワイプや音声入力、コンテキストに応じた動的表示など、
ジェスチャー主導・予測型ナビゲーションを検討しましょう。
ナビゲーションは「機能を隠すもの」ではなく、
ユーザーの意図を先読みし、自然に導くものへと進化すべきです。
⑥データのないデザイン設計(Design Without Data)
長年、デザイナーは「これが正しい気がする」という**直感(gut feeling)**で意思決定をしてきました。
しかし、直感だけでは再現性がなく、製品の成功をスケールさせることはできません。
検証がないままでは、真のユーザーニーズを見逃し、時間とコストを浪費してしまいます。
廃れつつある理由:
- 検証不足により、手戻りや再開発が発生する
- 誰も望まない機能が作られるリスク
- データ駆動で設計する競合にスピードで劣る
今すぐ取り入れるべきこと:
**データインフォームド・デザイン(Data-informed Design)**を採用すること。
A/Bテストや分析ツールが使える環境では積極的に活用し、まだデータがない0→1フェーズでは、ChatGPTやNotebookLMを使って競合レビューや市場レポートを分析し、テーマを体系的に整理しましょう。
これにより、実データが得られる前でも仮説検証の出発点を持てます。
クイックAIガイド:NotebookLMでデータ駆動リサーチを行う方法
もし「情報が多すぎて整理できない」と感じたら、以下を試してみましょう。
1️⃣ GoogleのNotebookLMにアクセス
2️⃣ 新しいノートブックを作成
3️⃣ YouTube動画、ブログ、オンライン資料をまとめて追加
すると、NotebookLMがマインドマップ化・要約生成・データとの対話をサポートしてくれます。
AIを**リサーチの副操縦士(sidekick)**として活用しましょう。
↳ マインドマップの作成、ビデオ概要の生成、またはデータとのチャットが可能です。
⑦ビジネス文脈のないUX(UX Without Business Context)
UXデザインは長らく「ユーザーの声を代弁する存在」として位置づけられてきました。
しかし今日では、それだけでは企業の戦略的価値を示せない時代になっています。
経営層は、デザインに「楽しさ」だけでなく、
売上・継続率・効率改善への貢献を期待しています。
廃れつつある理由:
- ROIに結びつかないデザインは「装飾的」と見なされる
- 成果が数値化されないと、デザイン投資の正当化が難しい
- ビジネス指標を理解しないデザイナーは戦略議論から外される
今すぐ取り入れるべきこと:
ビジネスとプロダクトの指標に精通すること。
CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)、Churn(離脱率)、Retention(継続率)などを理解し、
それらに対するデザインの影響を説明できるようにしましょう。
「ユーザー体験を向上させることが、ビジネスの成功に直結する」
──そのつながりを語れるデザイナーは、これからの時代に不可欠です。
クイックAIガイド:Genspark AIでビジネスリサーチを行う方法
もしチームが「自分たちのデザインがビジネスにどう影響しているか」を
十分に理解していない場合、以下の手順で調査を始めましょう。
Genspark AIにアクセス
プロダクトや業界に関するキーワードを入力
ROIや市場動向、成功要因などの分析を生成
これにより、デザインの意義を経営指標と結びつけて語れる視点が得られます。
2026年までに時代遅れになるUXスキル7選
AI駆動型プロダクトをデザインする上で、心得ておいたい内容ですね。
以下にもまとめておきます。
- Figmaでのワイヤーフレーム作成はやめよう
- フラットな画面を渡すのはやめよう。動くコードで引き渡そう
- ユーザビリティテストに頼りすぎない
- 線でつなぐユーザーフローより、状態でつなぐUX設計へ
- クリック操作型ナビゲーション(Click-Based Navigation Patterns)
- データのないデザイン設計(Design Without Data)
- ビジネス文脈のないUX(UX Without Business Context)
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