TOP ツール・フレームワーク・方法論 大きなプロダクトビジョンを実現させるGIST フレームワークとは?

大きなプロダクトビジョンを実現させるGIST フレームワークとは?

プロダクトの目標が曖昧で施策が分散すると「どこから手を付けるべきか分からない」状態に陥ります。GISTフレームワークは、大きな目標を小さなステップに分解し、確実な成果へ導くアプローチです。
本記事では、GISTフレームワークがビジョンと実行のバランスをどう取るか、ステークホルダーを巻き込みながら素早くフィードバックを得る方法を解説しています。優先順位に迷う方にとって、推進の指針となるでしょう。

原文:https://www.prodpad.com/glossary/gist-framework/

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Dan Collins(ダン・コリンズ)

GISTフレームワークとは

GISTフレームワークは、プロダクトの計画・優先順位付け・実行を一貫して行うためのアプローチです。以下の4つの要素で構成されています。

  • 目標(Goal):プロダクトチームが目指す目的(成果)。会社の戦略やビジネス目標と一致させる。
  • アイデア(Idea):目標達成のための手段や解決策。プロダクトマネージャー、営業チーム、顧客など多様な視点から生まれる。
  • ステッププロジェクト(Step Project):アイデアを実現するための短期間のプロジェクト。明確な計画やロードマップがある。
  • タスク(Task):ステッププロジェクトを達成するための具体的な作業項目。影響力や実現可能性に基づいて優先順位を決める。
GISTフレームワーク

GISTフレームワークのメリット

GISTフレームワークは、リーンとアジャイルの原則を組み合わせることで、チームが価値の高いプロダクトやアイデアを優先し、効率的に実行できるようにするアプローチです。

まず、会社の戦略やビジネス目標に沿った明確な目標を設定します。これらの目標が、プロダクトチームの活動や意思決定の指針となります。

次に、目標達成に貢献し得るアイデアを、プロダクトマネージャー、セールスチーム、顧客などさまざまな情報源から収集します。集めたアイデアは、目標への貢献度や影響力に基づいて評価され、優先順位が決定されます。

優先されたアイデアは、具体的なステッププロジェクトへと落とし込まれます。ステッププロジェクトは、実行期間やロードマップを持ち、アイデアを具現化するための重要な取り組みとなります。

そのステッププロジェクトを支えるのが、細分化された「バイトサイズ」タスクです。各タスクはプロジェクト内で特定され、優先順位が付けられ、段階的かつ効率的に実行されます。

このプロセスを通じて、チームは変化する市場環境に柔軟に対応しながら、ビジネスの成長を促進する高品質なプロダクトを提供できます。では、GISTフレームワークの各要素について、さらに詳しく見ていきましょう。

GISTフレームワークの目標(Goal)

「目標」は、プロダクトマネジメントチームが達成を目指す基礎的かつ包括的な目的を指します。これはフレームワークの最初のステップであり、プロダクト開発全体の戦略的な方向性を定める役割を担います。

目標は、プロダクトチームの活動を導くコンパスのような存在です。チームが目指すべき具体的な成果を明確にし、それを組織全体やビジネスの戦略と整合させることで、プロダクト開発の指針となります。

目標を明確にすることで、チームが何に集中すべきかが分かりやすくなります。複雑な戦略やビジョンを、誰もが理解しやすい具体的で測定可能な指標に落とし込むことで、チーム内での認識を統一できます。その結果、各メンバーが自分の取り組みが目標達成にどう貢献しているのかを把握しやすくなります。

GISTフレームワークでは、具体的かつ定量的な目標を設定することが不可欠です。明確な指標を設けることで、進捗を可視化し、データに基づいた意思決定が可能になります。さらに、進捗が思わしくない場合でも、適切なタイミングで軌道修正や再計画を行い、柔軟に対応しながら目標達成を目指せます。

GISTフレームワークのアイデア(Idea)

「アイデア」は、定義された目標を達成するためにプロダクトチームが考案する創造的な解決策や戦略を指します。アイデア創出は、イノベーションや問題解決を推進する重要なステップであり、プロダクト開発の成功に欠かせません。

定期的なブレインストーミングセッションの開催を通じて、さまざまな視点からのアイデアを「アイデアバンク」に集約し、保管することを重視します。このプラットフォームを活用することで、チームメンバーは自由に意見や洞察を共有し、協力的な環境の中で創造性を発揮することができます。こうした環境は、多様で革新的なアイデアの創出を促します。

アイデアがアイデアバンクに蓄積された後、次に行うのは評価と優先順位付けです。この段階では、ICEスコアリング、MoSCoW法、加重スコアリングなどの評価手法を用いて、アイデアが目標にどれほど寄与するか、成功の可能性が高いかを客観的に判断します。

  • ICEスコアリング(Impact, Confidence, Ease):インパクト(影響力)、信頼度、実現の容易さでスコアを付ける手法
  • MoSCoW法(Must, Should, Could, Won’t):重要度に基づいて優先順位を分類する手法
  • 加重スコアリング:異なる要素に重みをつけ、全体的なスコアで評価する手法

これらの手法を通じて、高価値かつ成功の可能性が高いアイデアが優先され、開発のリソースが最適に配分されます。

GISTフレームワークでは、アイデアは静的なものではなく、状況に応じて動的に変化するものとして捉えられます。新しい情報の入手や市場の変化に伴い、アイデアは定期的に再評価され、必要に応じて調整や洗練が行われます。この柔軟なプロセスにより、常に最適なアイデアが開発プロセスに反映されます。

GISTフレームワークのステッププロジェクト(Step Project)

「ステッププロジェクト」は、アイデアと目標をつなぐ中間的なマイルストーンや計画を指します。これらのプロジェクトは、アイデアを具体的な行動に変換し、最終的なプロダクト目標へと着実に近づくための計画として機能します。各ステッププロジェクトには、通常独自のタスクと明確なタイムラインが設定されます。

ステッププロジェクトの重要な特徴は、大規模なプロジェクトやアイデアを小さな実験に分解する点にあります。これは、最小限の実行可能なプロダクト(MVP)と同様のアプローチで進められ、通常は最大10週間程度の期間で完了するよう設計されます。この期間は、元Googleエンジニアのイタマール・ギラドによって提唱されました。

プロダクトチームは特定のソリューションやプロダクトの側面に集中し、進捗を効果的に管理し評価できるようになります。プロジェクトを小さく管理しやすい単位に分けることで、チームは素早く反復し、学び、必要に応じて適応することができます。

各ステッププロジェクトは、実験の結果を迅速に評価し、その成功や影響を測定する機会を提供します。反復的なプロセスを通じて、プロダクトチームは試行錯誤しながら価値ある知見を得て、今後の意思決定に反映させることができます。

ステッププロジェクトが期待した成果を上げられなかった場合、チームはアイデアバンクに戻ります。ここでアイデアを再評価し、別の有望なアイデアを選んで次のステッププロジェクトを開始します。アイデアバンクを定期的に見直すことで、常に最も価値のあるアイデアが追求され、無駄な開発を防ぐことができます。

GISTフレームワークのタスク(Task)

「タスク」は、ステッププロジェクトを成功に導くために必要な具体的かつ実行可能な作業項目を指します。タスクは、フレームワーク内で最小の作業単位であり、個々のチームメンバーに割り当てられることで、プロジェクトの効率的な進行を支えます。

各ステッププロジェクトは、小さく分割されたタスクに分解され、チームメンバーが短期間で完了できるように設計されます。これにより、チームは複雑な長期目標に圧倒されることなく、日々の活動に集中できます。タスクの典型的な期間は1~2週間とされ、短期間での成果を積み重ねることで、チームは達成感と勢いを維持しやすくなります。

タスクは、継続的に評価され、必要に応じて調整されることが重要です。スクラムのスプリントプランニングなど、チームの好む開発手法を活用して、日々または週ごとにタスクをレビューし、調整することが可能です。これにより、変化する状況に柔軟に対応しつつ、効率的にプロジェクトを進めることができます。

効果的に実践する5つのステップの例

GISTフレームワークを効果的に活用するための5つのステップと具体例をしめします。

1. 明確な目標を設定

会社の全体戦略と整合する具体的な目標や目的を定義。
この段階で、注力すべき高価値のプロダクトや機能を明確にし、プロダクトチーム全体がその方向性を共有することが重要です。特に、測定可能な目標を設定することがポイントです。

  • 例: 「新規顧客獲得率を20%向上させる」など

2. アイデアを生成

チームでブレインストーミングセッションを行い、目標達成に貢献する可能性のある幅広いアイデアを集めます。アイデアバンクやその他のツールを活用し、あらゆる視点から創造的なアイデアを蓄積します。 会社の目標との整合性や潜在的な影響に基づいて、各アイデアを優先順位付けします。

  • 手法例: ICEスコア(Impact, Confidence, Ease)を用いる。
    ※影響力や実現可能性を数値化して評価するのが効果的です!

3. ステッププロジェクトを計画

優先度の高いアイデアを、短期間(通常1~2週間)で達成可能な小さなステッププロジェクトに分解します。このアプローチにより、進捗が測定しやすく、軽量で柔軟な開発が可能となります。

  • 例: 「プロトタイプのユーザーテスト実施」「新機能のベータ版リリース」などの具体的な小規模プロジェクトを計画。
    ※各ステッププロジェクトには明確な成果物とタイムラインを設定し、実行可能な計画に落とし込む

4. タスクを管理

ステッププロジェクトをさらに小さな具体的なタスクに分解し、チームメンバーに割り当てます。タスクは、各メンバーのスキルや専門性に応じて効率的に配分し、ステッププロジェクトの目標達成に直結するものとします。

  • ポイント: 各タスクは管理可能な規模であることが重要で、1~2週間以内に完了できるように設計
  • 例: 「ユーザーテストのインタビューガイド作成」「テスト環境のセットアップ」などの具体的な行動とする

5. 継続的な評価と適応

タスクやステッププロジェクトの進捗は定期的に見直し、必要に応じて調整します。ICEスコアなどの評価手法を活用して、各タスクの優先順位を柔軟に変更しながら効率を最大化します。また、データに基づく意思決定を行い、リアルタイムで進捗を把握します。

  • 例: スクラムのスプリントプランニングや日次のスタンドアップミーティングを通じて進捗をチェックし、必要であれば実行タスクの修正を行う。


GISTフレームワークは、静的なものではなく、プロダクトや市場環境の変化に応じて進化する必要があります。新たな情報が得られた場合や目標に達成が難しいと判断された場合には、柔軟に目標やアイデア、タスクの優先順位を見直し、適切に再計画を行います。

GISTフレームワークのメリットとデメリット

GISTフレームワークとは?

GISTフレームワークは、プロダクトマネージャーやチームにとって有益な手法です。目標主導の開発により、明確な目標を設定し、会社全体の戦略と整合させるのに役立ちます。

アイデアを影響度と目標の整合性で評価し、優先順位をつけることで、高価値なプロダクト開発を可能にします。また、アイデアを管理しやすいステップに分解することで、リーンでアジャイルな開発を促進します。さらに、継続的な評価と適応を重視し、データに基づいた意思決定を支援します。

ただし、GISTにはデメリットもあります。軽量なアプローチがゆえに、構造やガイダンスが不足していると感じることがあり、優先順位付けの方法がすべてのチームに適合するわけではありません。

GISTフレームワークのメリット

  1. 明確な目標設定と整合性
    • チーム全員が共通の目的を持ち、一貫性のあるプロダクト開発が可能。
    • 目的の理解が深まり、モチベーション向上につながる。
  2. 段階的な進捗管理
    • 大きな目標を小さなステップに分け、着実な成果を得られる。
    • フィードバックループを活用し、柔軟な調整が可能。
  3. 適応性と柔軟性
    • 市場変化や新たなインサイトに基づいて戦略を調整。
    • チームが迅速に対応しやすくなる。
  4. 効率的なリソース配分
    • 重要なステップに集中し、時間・予算・人員を最適化。
  5. リスク軽減
    • 早い段階で課題を特定し、適切な対応を実施。
  6. データ主導の意思決定
    • KPIやメトリクスを活用し、リアルタイムの情報で最適な判断が可能。

GISTフレームワークのデメリット

  1. 大規模プロジェクトでの複雑性
    • 多くの要素を管理する必要があり、負担が増加。
  2. 柔軟性の制限
    • 指示的すぎると感じるチームもあり、創造性を抑制する可能性。
  3. 短期目標への偏重
    • 短期的な成果を優先しすぎると、長期戦略が犠牲になるリスク。
  4. マイクロマネジメントの可能性
    • 厳密なタスク管理が自律性の低下につながる恐れ。
  5. 全体視点の喪失リスク
    • 目標やタスクに集中しすぎると、全体戦略の見落としが発生。
  6. 変化への抵抗
    • 既存の方法に慣れたチームからの抵抗が課題になることも。

まとめ

GISTフレームワークは、目標設定と進捗管理を効率化する強力なツールですが、チームの特性に応じた適用が重要です。柔軟性を持たせながら活用することで、より効果的なプロダクト開発を実現できます。

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こうした手法は、活字で読むだけではなかなか身につきません。料理のレシピと同じように、実際に実践することで初めて体得できます。

フレームワークの使い方を学ぶだけでなく、その目的やチーム内での効果的な会話の進め方、アイデアのまとめ方などを、ジャナさんから実践的に学びましょう!

BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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