7月22日、アイスリーデザインにて「ユーザビリティテスト実施と分析方法」に関する勉強会を開催しました。モデレーターは、書籍『デザインかいぜんのためのユーザビリティテスト』の著者であるオオモトが担当しました。
この記事では、旅行サイトのユーザビリティテストをしてわかったことをご紹介します。
今回の勉強会には約20名の方にご参加いただき、そのうち3分の1は「ユーザビリティテストは未経験」という方々でした。業界に関わる方々であっても未経験者が多いという現実は、日本におけるユーザビリティテストの浸透の浅さを物語っており、改めて啓蒙の必要性を感じます。
実際にユーザビリティテストをやってみる

参加者は経験者と未経験者に分かれ、旅行サービス「HIS」のWebサイトを題材にユーザビリティテストを実施しました。
「ユーザビリティテストは誰でもできる」ということを体感してもらうため、あえてシンプルな課題を設定し、未経験者にもテストを体験していただきました。
その結果、「これは本物のサイトですか?」という声が出るほど、操作が直感的ではないことが浮き彫りになりました。
具体的な課題として挙がったものは以下の通りです。

- フライトの日程入力時、帰路のラベルが「現地出発日」となっており、直感的に理解しづらい
- 予算内での絞り込みができない
- 検索に時間がかかり、ユーザーがストレスを感じる
4チームで行ったテストの中で、共通して指摘された点も多く、課題の深刻さが明確になりました。
結果をどう活かすか ― 優先順位の重要性
本来、今回の勉強会のテーマは「ユーザビリティテストの結果をどう優先順位付けし、改善するか」でした。
テストを通じて得られる課題の中でも、心理的負担が大きいものや、複数の参加者が共通してつまずいたものは、早急に改善すべきです。
しかし、実際の現場では「知識の呪縛」というバイアスが働きます。つまり、一度操作方法を覚えてしまうと、初めて触れる人の視点を失い、改善の優先度を誤ってしまいます。
プロダクト改善の鍵は、このバイアスを認識し、いかに客観的に課題を捉えられるかにあります。
ユーザビリティテストの鍵は「コンテキスト」
今回の勉強会では、経験者の中にも「誤ったテスト方法」をしている例が見受けられました。
例えば「廊下テスト」を紹介した際、「ではトイレに急いでいる人に声をかけてテストすればいいのでは?」という意見が出ました。一見ユニークですが、JTBD(ジョブ理論)の観点から考えると適切ではないことが分かります。
旅行計画というタスクは、すぐに意思決定するものではなく、比較検討に時間をかけるケースが多いものです。このように、ユーザビリティテストでは「そのサービスが使われる文脈(コンテキスト)」を前提に考えることが不可欠です。
UX設計においても、ユーザビリティテストにおいても、コンテキストを無視した検証は本質的な学びにつながりません。
今後に向けて
今回の勉強会は「体験すること」に重きを置きましたが、改善の優先順位付けや、バイアスをどう克服するかといったテーマは十分に掘り下げられませんでした。
次回は「ユーザビリティテストの結果をどう分析し、どの課題から改善すべきか」をテーマに続編を開催することを検討しています。
ユーザビリティテストは特別な専門家だけのものではなく、誰でも始められる身近な方法です。実践と学びを積み重ね、日本におけるユーザビリティテスト文化をもっと広めていきたいと考えています。
あなたの現場でも「ユーザビリティテスト」、始めてみませんか?
今回の題材にした旅行サイトだけでなく、改善が必要なサイトは数えきれないほど存在します。ところが一度“作り手の目線”に立ってしまうと、「知識の呪縛」というバイアスにとらわれ、ユーザーの視点を忘れてしまいがちです。その結果、何から手をつければいいのかわからなくなってしまうことも珍しくありません。
私たちは、そんな企業の現場に出向き、ユーザビリティテストの実施や改善のサポートを行っています。ご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。(uxdaystokyo@gmail.com)
さらに、UX DAYS TOKYOでは定期的にユーザビリティテストの勉強会も開催しています。チームで参加された企業では「意思決定が早くなり、改善が一気に進んだ」という声も多くいただいています。
放置されたままのサイトは、ユーザーの離脱を招くだけでなく、「使いにくい」という体験を通じて企業のブランド価値を下げてしまいます。だからこそ、一刻も早く手を打つことが重要です。
ユーザーが迷わないサイト、選ばれるサービスを一緒に作っていきましょう。
ユーザビリティテストの書籍のご紹介
電子書籍でサク!っと。手軽に読めるユーザビリティテストの書籍、その名も「デザインかいぜんのためのユーザビリティテスト」は、人間心理や脳の仕組みも理解することができます。
一度慣れてしまったユーザーをターゲットにするのか、それとも新規なのかなどで悩んでいる方にも役立つ内容が入っています。
紙での書籍も販売されていますが、どこでもすぐに確認できるkindle版をおすすめします!
