AI駆動型プロダクトのためのストーリーボード作成― 第4回:AI駆動型プロダクト開発のためのストーリーボード製作+ 最終事例
「UX for AI」のグレッグ・ヌーデルマン(Greg Nudelman)氏のブログ記事の翻訳です。
原文:https://www.uxforai.com/p/storyboarding-for-ai-part-4
2024年8月16日
シリーズのおさらい
- 第1回:AI 主導プロダクトのためのストーリーボード
- 第2回:ストーリーボードの構成要素と描き方のベストプラクティス
- 第3回:「Subject-to-AI」でAIをストーリーに取り入れる
- 第4回:AI駆動プロダクトのストーリーボードを特別にする要素 + 最終事例(本記事)
AI駆動プロダクトのストーリーボードの3つのポイント
AI駆動型製品のストーリーボードの特徴は以下3つです。そして、ストーリーボードのプレゼンテーションは抽象的になります。
- サブジェクト・トゥ・AIを効果的に使う
- 「何を」「なぜ」にフォーカスする
- インターフェースは極力省略する
なぜ抽象的なプレゼンテーションが必要か
AIはすでに私たちの生活のあらゆる場面に浸透しています。そのため、一つの課題に対して複数の解決策が存在し、ときにはガジェットやデバイス、エージェントを組み合わせた方法も考えられます。
このような背景から、AI駆動型ユースケースのストーリーボードを作るときには、できるだけ抽象的に表現することが大切です。余計な要素を入れすぎると、チームの想像力を制限してしまいます。シンプルでありながら、全体の流れがうまくまとまっているかどうか。そのバランスを意識することが重要です。
ケーススタディ:運転中の電話応答
AIを活用した製品の事例として「運転中に電話に応答する」ケースを考えてみましょう。
現在の体験
たとえばApple Watchのデザインに基づくと、運転中に着信があると小さなボタンが表示されます。電話に応答するには、運転者は道路から目を離し、手元の時計を操作しなければなりません。これは大きな事故につながりかねない設計です。
(図:Apple Watchで電話に応答する方法)
(図:運転中に電話に応答するストーリーボード(現状))
AIを活用した新しい体験
では、この体験を映画「アイアンマン」の主人公トニー・スタークがリデザインしたらどうなるでしょうか。
新しいストーリーボードでは、AI搭載のウェアラブルデバイスが「Jarvis(トニー・スタークによって開発された人工知能システムの名前)」のように自然にサポートします。
- AIが音声認識やテキスト変換を使い、必要な処理をしてくれます。
- 運転者は両手をハンドルに置き、視線は道路から逸れません。
- 着信は邪魔にならない方法で通知されます(あえて抽象的に表現)。
- 運転者は自然な言葉で応答します。
例:「運転中なので後でかけ直します」
同じストーリーの新しいバージョンでは、次のようになります。
このストーリーボードの結末は、劇的な展開ではなく「無事に目的地に到着する」という日常的なものです。それこそが、現実の課題に即した優れたUXデザインであり、元の「事故につながる体験」との対比を際立たせています。
(図:運転中に電話に応答するストーリーボード(再設計版))
まとめ
AI駆動型プロダクトデザインは、インターフェースをデザインするのではなく理想的な結果をデザインします。つまり、ユーザーがボタンを押したり、メニューを選んだりそういう面倒なことが忘れさせるくらい自然でシームレスな体験を設計します。まるでAIがユーザーの意図を先回りして助けてくれるような魔法みたいな体験を目指します。
UXデザイナーは、抽象性とシンプルさを意識しつつ、現実の課題を解決するストーリーを描くことで、より良い未来の体験を形にしていくことができます。
ストーリーボードは、大人になっても「子どものように遊びながら価値を生み出す」ことができます。一緒に未来を描いていきましょう。