こんにちは、デザイナーとして事業会社で働いているスタッフの池田です。カスタマージャーニーマップは有名なツールで、使いこなしたい方も多いのではないでしょうか。
私もUXを学習し初めた頃に「UXをやるならカスタマージャーニーマップを描いてみたい!」と意気込んでいました。
海外のTop UXerから学べるUX DAYS TOKYOワークショップでカスタマージャーニーマップの基本を学んだことをきっかけに、普段の業務やUX DAYS TOKYOスタッフ活動で試行錯誤しながら実践してきました。
この経験から学んだカスタマージャーニーマップを作っても仕事に活かせない4つのNG思考を紹介します。なぜダメなのか、どうすればよかったのかも解説していますので、カスタマージャーニーマップが仕事の中で使いこなせるようになるヒントにしていただければ幸いです。
カスタマージャーニーとは何か?おさらい
既にご承知の方も多いと思いますが、カスタマージャーニーマップの言葉の意味を改めておさらいすると、理解しやすくなります。カスタマージャーニーマップのJourneyという英単語は、旅程、行程といった意味がありますが、UXやマーケティングで利用されるジャーニーとは「時系列のある一連の行動や経験」のことを指します。
顧客=カスタマーの行動や思考、感情といった経験を時系列に表したものが、カスタマージャーニーで、それを地図のように見える化したもの=マップということです。
カスタマージャーニーを理解して見える化するという基本を押さえることで、カスタマージャーニーマップを作って何に役立てたいのか?という目的を考えやすくなります
- 調査して理解する
顧客がどのようなジャーニーを体験しているのかを理解するため、ユーザーインタビューやアンケート、現場観察といった調査をします。 - 簡潔に見える化する
人ごとに、一本道になるように行動をふせんなどで簡潔に書き出して並べ、ジャーニーを見える化します - プロジェクトの指針として活用する
開発チームと共有してユーザーの利用する前後状況を伝えたり、ステークホルダーと見たりすることでユーザー視点のプロダクト・サービス作りに役立ちます。 - アップデートを繰り返す
顧客のジャーニーについて新しいことがわかったら、随時アップデートを繰り返します。
陥りがなカスタマージャーニーマップのNG思考 4選
ここからは、私の実体験から学んだ、カスタマージャーニーマップのNG思考を4つ紹介します。私だけでなく意外と良く陥りがちなNG思考なので、参考になればと思います。
1.目的を定めず描き始める
何に活かしたいのか目的を定めずにとにかく描き始めると、アウトプットしたジャーニーマップはその後の設計に活かせません。
カスタマージャーニーマップを作るとUXをやっているような気分になりがちです。自身の失敗経験を振り返ると、作っていくうちに何か洞察が得られると期待して、とりあえず始めてみることが多かったです。また作っている最中は何かユーザー理解に向けてがんばっているような気分になってしまうこともありました。しかし、目的が定められていないと、絵に描いた餅で終わってしまう行動につながらないジャーニーマップになってしまいます。
ジャーニーマップを使って何に活かしたいのか?を作る前に考えましょう。もっというと、「ここでは顧客はどんなことを考えて行動をしているんだろう。前後では何をしているんだろう。それがわかれば設計に反映できるのに」といった具体的なニーズが生まれてから、問題解決の最適なツールとしてカスタマージャーニーマップを選ぶ、といった考え方になるとカスタマージャーニーマップで何を知りたいのか明確になり、業務に活かせます。
2.手法に囚われた、枠を埋める思考
学び初めの頃は、事例を調べて『正しい』カスタマージャーニーマップを作ろうと考えていて、「これって正しく描けているのかな?」と描いてる最中は常に不安でした。
カスタマージャーニーマップは、作成する目的や得られた調査結果によってケースバイケースで、これが正解というものはありません。
何を知りたいのかを明確にせず枠だけを埋めても、活用できるジャーニーマップにはなりません。
UXコンサルティング会社で世界的に有名なAdaptive Path(現Capital One)のジャーニーマップが有名ですが、「長い期間のリサーチを経て作り込まれたラスボスのようなもので、いきなり目指すものではない」とカスタマージャーニーの第一人者であるBoon SharidanさんからUX DAYS TOKYOのワークショップで学びました。
学び始めのときは、もっとシンプルなフォーマットで作るとよいと学べたことが目から鱗でした。
3.見栄えを綺麗に作りすぎる
Boonさんのワークショップで学んだ中で一番驚いたのが、見栄えを綺麗にしすぎると美的なバイアスがかかってしまい、内容を見ても「すごいね」「いいね」という反応しか得られず、そこから議論につながらないという問題があるということでした。
例えば、よく顧客に接している営業担当者から見て、ジャーニーマップの内容にちょっと違和感があっても、美しく作り込んであると「作り直して」と言いにくいです。
カスタマージャーニーマップで大切なのは描かれている中身である「顧客がどんな経験をしているか」です。
内容がわかる程度に粗く作ることが大事で、社内で共有してディスカッションした内容や再調査の結果を反映して作り直すことを素早く繰り返すことが大切だと学べました。
こんな程度でいいんだとわかるような、私が実際に作ったジャーニーマップを2例ご紹介します。
手書きで粗く描いたジャーニーマップ
ユーザー招待の一連の体験を手書きで素早くジャーニーを描き起こしました。粗く描いているので、内容にアップデートが入った時は気兼ねなく修正できました。
オンラインふせんツールを使ったジャーニーマップ
オンラインふせんツールを活用すれば、並べ替えや新しい情報を付け加えるのも簡単ですし、リモートで働いているチームで活用しやすいです。
以下のジャーニーマップは、旅行先でお店を決めるまでの行動の流れをUX DAYS TOKYOスタッフ間でグループインタビューを行って作成したものです。
4.絵に描いた餅で利用しない
カスタマージャーニーマップを作っただけで終わりにすると、その後の設計に活用することができません。
しっかり調査をして作成しても、プロダクト改善の中心であり続けるジャーニーマップには出来ていないという方も多いのではないでしょうか。
私も過去に関わったプロジェクトで、調査に半年かけて介護現場のジャーニーマップを作ってお披露目会で大きな反響が得られたものの、日常の業務で参考にされることが次第になくなり形骸化していってしまったという失敗経験があります。
集めた情報は業務に生かしつづけないと意味がない
ジャーニーマップは、刑事ドラマの捜査本部の壁にある犯人の足取りやわかっていることを張り出している様子に近いです。どんな関係者がいて、どんな行動をしたのか?そのときはどんなことを考えていたのか?
せっかく情報を集めて壁に張り出しても、犯人を捕まえないなんてナンセンスです。日々の業務で顧客理解の中心にするほか、顧客理解が進む中でアップデートしないと意味がないと学べました。