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知識の呪い:その影響と対処

この記事は、「The Curse of Knowledge: How It Impacts You, and What to Do About It」の翻訳です。

顧客に会社や商品を初めて紹介する立場にある時、注意すべきことがあります。

それは知識の呪い(The curse of knowledge) というものです。ブランドメッセージ、ウェブサイトのコピー、チュートリアル、オンボーディング・プロセス(ユーザ定着のための仕組み)を作る人全員に影響があります。

知識の呪いとは、自分がよく知っていることほど、それについてあまり知らない人の身になることが難しいということです。

学習したことを学習しなったことにはできませんし、見たことをまだ見ていないことにすることもできません。加えて、あることを全く知らない人に基礎から説明することはさらに難しいことです。はじめて抱いた疑問が思い出せないからです。

「リズムを鳴らす人」と「リズムを聴く人」の曲名当て実験

1990年、スタンフォード大学の博士課程の学生エリザベス・ニュートンは、曲当て実験によって、コミュニケーションの確信度を調査する研究を行いました。

この研究において、参加者を2つのグループに分けました。「リズムを鳴らす人」と「リズムを聴く人」です。それぞれペアになります。「リズムを鳴らす人」は、「ハッピーバースデー」のような有名な歌を選び、テーブルの上でそのリズムを刻むよう指示されます。「リズムを聴く人」には、その音を聴いてその曲名を当てるよう指示します。

また、「リズムを鳴らす人」には、どのくらい「リズムを聴く人」が曲を当てられるか予想してもらいました。

「リズムを鳴らす人」は自信があり、曲を半分聴いただけでわかると予想しました。しかし、「リズムを当てる人」は120曲のリズムを聴いても、3曲しか正解できませんでした。

なぜ「リズムを鳴らす人」は予想を間違ったのでしょうか?

この問題は、「リズムを鳴らす人」は頭の中でメロディを聴くことができますが、「リズムを聴く人」にはできないからです。「リズムを鳴らす人」は曲の知識のせいで、「リズムを聴く人」がある場合く把握できなくなってしまうのです。

知識の呪いはビジネスにどのように影響するか?

現実の世界でも知識の呪いに遭遇したことがあるかもしれません。

新しい業界で仕事を始めると、はじめはその業界の言葉や言い回しの意味が分からないことがあります。しかし、しばらくすると、自分の頭にそれらの言葉が無かった時のことを忘れてしまい、更にはそれを他人が知らないということですら忘れてしまいます。

そのことを気をつけなければ、あなたのメッセージングやコンバージョン率に悪影響を及ぼすことがあります。

会社の人なら全員、特定の概念、業界の言葉、商標名を理解しているかもしれませんが、顧客はそうとは限りません。

これは単に専門用語だけの話ではなく、全体的なバリュー・プロポジション(提供価値)も知識の呪いにより崩れてしまいます。よくわからないソリューションを提供する企業を見かけたことがありませんか?

説明をされたとしても、実際それがどう機能するか、どのように使用したらいいか、なぜそれが必要か疑問が残ることがあります。その企業の従業員は、毎日そのソリューションを扱っていているため、それを新しく目にする人の疑問が分からなくなります。

特にB2B企業、専門性の高い製品を売る企業、その分野に長年経験がある人には注意が必要です。

幸運なことに、自分の専門分野におけるメッセージが悪影響を与えないように、できることが幾つかあります。

知識の呪いに対処するにはどうすれば良いか?

新しいユーザーのように考える

製品を初めて目にした人の立場で考えるようにしてみましょう。製品を理解するために必要な情報は何でしょうか?ユーザーがすぐに直面する疑問や不満点は何でしょうか?

ターゲットとなる顧客の専門知識を理解する

顧客に正しい情報を(正しい情報量で)確実に提供するために、ターゲットとなる顧客が自分の企業、業界、製品をどれくらい知っているか確認しましょう。

あなたの業界にとても詳しかったり、特別なスキルを持っている顧客ならば、言葉をかみ砕いて説明する必要はありません。とはいえ、買う人が自社製品についてどれくらい知っているか想定しすぎないようにしましょう。
異なる専門レベルの異なる顧客ペルソナが考えられます。

そのため、専門知識のない顧客については丁寧に対応し、専門知識のある顧客についてはそれを読み飛ばせるようにするといった工夫が必要です。

具体的な例を使用する

多くの場合、説明するよりも見せたほうがより正しく伝わります。マーケティングの素材には、お客様の声を使用し、製品が実際にどのように使用されているか説明しましょう。スクリーンショット、アニメーション、製品が実際に稼働しているビデオは、あなたのウェブサイト、チュートリアル、オンボーディング体験(ユーザを定着させる体験)をはっきりとしたものにさせてくれます。

新しい視点を得る

偏りのない考え方をするために、製品のことをまだ知らない人からのフィードバックを集めると良いでしょう。

1.新しい従業員
新人が仕事を始めて2週間は、皆さんの会社が一般に公開している資料で特によくわからないような所を報告するようにしてもらいましょう。新人さんは、「前の会社だと、これではなく[XYZ]と言っていました」、「この業界で5年働いていますが、この言葉は聞いたことがありません」というようなことを言うかもしれません。

2.初めてサイトに訪れた人
初めてサイトに訪れた人は、新鮮な視点を持っているので、ウェブサイトのコピーやバリュー・プロポジション(価値提案)を検証するのに適切です。ターゲットとなる顧客でユーザーテストを行い、次の質問をしてみましょう。

・あなたの企業が何であるか顧客の言葉で説明してもらう
・よくわからないメッセージがあれば、指摘してもらう
・購入前やサインアップ前に、必要な追加情報があれば述べてもらう

3.既存顧客
既存顧客は、製品を長く使い続けようと決めるためのオンボーディング・プロセス(ユーザを定着させるプロセス)ついて改善のアイデアを与えてくれることがあります。既存顧客は、チュートリアルやヘルプセンターが本当に役に立つか、製品を長く使い続けてもらうには、どのような情報が必要か教えてくれます。また、ユーザーテストを実施したり、アンケートを送信したり、新しい顧客から寄せられる典型的なフィードバックかどうかをサポート部門に告げることができます。

事業会社でサービス開発をおこなっています。 元々はエンジニアとして働いていましたが、現在ではスクラムマスター、QA、UXライティングなど様々な分野に挑戦中です。 UX DAYS TOKYOの活動を通じて、ユーザーの視点やスクラムに関する本質、共創のマインドなどを学び、現場でも多くを取り入れています。

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