ビジネスにAIを取り込むには、AIファーストで行うべきという記事を記載しました。では、AIファーストはデザイナーの仕事にどのように関わってくるのか。今回は、そのような形で紐解いていきます。
私たちの生活やビジネスのあり方を根本から変える、新しい時代の幕開けを告げる重要なコンセプトを正しく理解し、スキルに活かせれば、デザイナーの仕事はより重要になります。
AIファーストのコンセプトが理解したトして、実践は簡単ではありません。実践に移すことができなければ、どんな良いコンセプトや思考・フレームワークがあっても、机上の空論になってしまいます。

図:amazonのRufus (Amazonの商品ページにあるAIチャットボット)
AmazonのRufusは日本のアマゾンのページでもすでに登場していますが、人によっては気づいてなかったたり、AIチャットボットぐらいにしか考えてるかもしれません。
しかし2026年に、この領域=ハイパーパーソナライズ化は爆発すると予想します。なぜなら、2026年はハイパーパーソナライズ化されたショッピングの幕開けの年とされ様々な研究が進んでいます。
つまり、Rufusのは現在は上記のように、「このフィルターは洗えますか」、「車内の空気をきれいにできますか?」、「取り付けは簡単ですか?」の3つが表示されていますが、購入者にあわせて表示される内容も大きく変わるというようなショッピング体験になります。
AIファースト企業はこのような体験を作り出すことができるとBCGでは説明をしています。
また、マッキンゼーの最新データによると、71%の消費者がパーソナライズを好み、76%がパーソナライズをされていなかった場合にイライラしています。そして、ブランドが成功すると、トップパフォーマーは同業者よりもパーソナライズから40%多くの収益を得られます。
AIファーストの核心:AIは「後付け(ボルトオン)」ではない
まずAIファーストとは、製品やサービス、さらには企業全体の戦略を、最初からAIを核として構築する考え方です。でも、この核にするというのが分かりづらいです。
従来チャットボットを単純にいれるだけというような「AI活用」が、既存のシステムにAI機能を追加する「後付け(僕はボルトオンといってる)」であったのに対し、AIファーストは、AIを企業のDNAに組み込み、問題解決、製品開発、顧客との対話など、あらゆる意思決定の中心に据えます。
モバイルデバイスの普及に伴い「モバイルファースト」が常識となったように、AIの進化は「AIファースト」への移行を加速させていると考えています。ただ、少々時間はかかります。言葉を知ってるだけでは理解にならないのです。
AIファーストがもたらす変革
AIファーストを導入した企業は、以下のような劇的な変化を遂げると期待されていますが、まだまだ事例が少ないのが現状です。Amazonの例も、AIファーストとしてはまだ十分ではないかもしれません。ただ、下記にリストしたようなことが期待されています。
- 超パーソナライズされた体験: AIが個々のユーザーの好みやコンテキストを深く理解し、一人ひとりに最適化された製品や情報を提供します。ネットショッピングなど。ハイパーパソナライズドとよばれます。
- 効率性の飛躍的な向上: これまで人間が行っていた複雑なタスクをAIが自動化し、従業員はより創造的で戦略的な業務に集中できます。
- 革新の高速化: AIによるデータ分析やシミュレーションを通じて、市場のニーズを迅速に捉えて、製品開発のサイクルを劇的に短縮します。
- 新しいビジネスモデルの創出: AIを中心とした全く新しいサービスが生まれ、競争優位性と新たな収益機会を拡大します。
AIファースト製品の台頭と課題点
すでに世の中には、事例が少ないと言いましたが、AIファーストを体現する製品も登場し始めています。従来型のSiriやAlexaのような音声アシスタントの進化形(HumaneやRabbit R1)や、スマートフォンアプリを介さずに様々なサービスをシームレスに連携させる新しいデバイスなどがその例です。ただ開発には、その道のりはそう簡単ではないようです。
- 技術的な課題: 複数のサービスをスムーズに連携させるには、高度な技術力が求められます。
- プライバシーと倫理: 個人データをどのように扱うか、AIの判断がもたらす影響など、倫理的な配慮が不可欠です。
- ユーザー体験の再設計: 従来のアプリ中心の操作から脱却し、より直感的でシンプルなインターフェースを設計する必要があります。
AmazonのAlexaやHumaneのAI Pin(HPに買収された)といった先行事例もありますが、AIファーストの可能性を示すと同時に、その難しさも浮き彫りにしています。後者のHPに買収されたHumaneは元アップルの社員のプロダクトでしたがサービスを2025年2月にクローズしてしまいました。
消費者としての未来へ関わり方
AIファーストは、単に企業だけではなく、当然、消費者の僕たちの生活にも大きな影響を与えます。

BCGのレポートの抜粋。
- 情報の探し方が変化: キーワード検索だけでなく、より自然な対話を通じて必要な情報やサービスにたどり着けるようになります。すでに消費者の20%がLLMに影響されている(上図参照)。
- 製品の選び方が変化: AIエージェントが、私たちの好みやニーズに合った製品を提案し、購入プロセスをサポートしてくれます。AmazonのRufasもそうかもしれません。
まとめ
AIファーストは、デザイン、エンジニアリング、ビジネス戦略のすべてを巻き込む、巨大なパラダイムシフトであり簡単にはたどり着けません。ただ、この新しい時代に適応し、その恩恵を最大限に享受するためには、個人レベルでAIの可能性と課題を理解し、変化を受け入れていく姿勢が求めらると思います。おそらく、無駄になることもたくさんありますが、トライすることが大切。
Metaがかつてモバイルファーストに適応するために、全社員を再教育したように企業は社員を再教育する必要があるのではと考えています。リーダーから変化できない企業はこの第4次産業革命では、自然淘汰されていくのだと思います。

