こんにちは。UX DAYS TOKYO スタッフの高橋です。UX DAYS TOKYO主催の毎月恒例のUX読書会、今回は『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』を取り上げました。
今回の読書会で、オーガナイザーの大本さんよりこんな問いを投げかけられました。
「AIを使ってどんな世界を作りたいですか?」
この問いから、私自身の視野があまりにも狭かったことに大きな気づきがありました。
LLMの進化で「脳」ばかりに注目していた私
ChatGPTなどの生成AI(LLM)の登場以降、だれもが人間の「脳」の部分をAIで再現できるようになってきました。その中で、私たちは「AI=デスクワーク(デジタル)上の解決」だと思い込んでいます。
本書では、AIの本質的な進化の歴史と、未来への道筋が明確に記されています。驚くべきは、この書籍がなんと2018年に書かれたものであり、「大きな社会課題に取り組む視点」が盛り込まれていることです。私はAIの可能性を知っているつもりで、全然理解していなかったことを痛感しました。
早急に解決が必要な社会課題の取り組みについて書かれている
歴史からAIの大きな可能性を理解する
1950年代からの研究において、コンピュータは長らく「計算」しかできませんでした。しかし、その裏でAI技術は長い冬の時代を経て着実に進化していました。一つは、重工業などで人間以上の力と正確性を発揮する「産業用ロボット(体の再現)」の進化。もう一つは、カメラやマイクで視覚・聴覚を再現する「センサー技術(五感の再現)」の進化です。そして今、この「屈強な身体」と「鋭敏な感覚」に、ディープラーニングという「賢い脳」が追いつき、融合することができます。
このように歴史から成り立ちを理解していくことで、私の中でAIに対する解像度が一気に上がりました。「AIとは何か」を深く理解したことで、今の自分の仕事である「物流」における課題に対しても、全く新しい視点が持てるようになったのです。
これまでは「人手が足りない」「物理的に無理」と諦めていた現場の課題も、「脳・身体」が揃いつつある近年ならどう解決できるか?という可能性を書籍では具体的に提示しています。
高齢化・後継者不足を解決するスマート農業
熟練農家の「勘と経験」をデータ化し、AIやロボットを活用して効率的に農業を行います。高齢化や後継者不足といった深刻な課題を解決する切り札として期待されています。
配送の効率化・ドライバー不要の物流
最適な荷物の積載、ルートを自動で計算し、ドローンなども活用した自動搬送まで行うことで深刻化するドライバー不足を解決します。
手術の高度化を助ける医療・尊厳を守る介護
医療では「医師の技術をサポートし、より安全で精密な手術を可能にするための高度な道具」として活躍し、介護では移乗支援ロボットにより、介護する側の腰痛負担を減らすだけでなく、される側の「人の手を借りる申し訳なさ」を解消し尊厳を守ります。
このように、AIはデジタル空間を飛び出し「現実世界の深刻な課題」に直接介入できる存在へと進化しています。私たちが「人手が足りない」「物理的に無理」だと諦めていた社会課題の多くは、技術的にはもう解決可能なフェーズに入りつつあるのです。
思考のブレーキを外す「ドラえもん」の発想
AIのポテンシャルは私たちの想像を遥かに超えています。技術的にはすでに完成しつつあるにも関わらず、社会が劇的に変わっていないのはなぜでしょうか?
その理由は、技術的なハードルにあるのではなく、私たち自身の「思考が枠を超えられないこと(メンタルブロック)」にあるのかもしれません。AIが「今やっていること」だけにフォーカスするのではなく、「あらゆる課題をAIが解決するとしたら?」という発想で、社会課題に向き合うことが必要かもしれません。
日本には古くから、ロボットを友達として受け入れる特有の価値観があります。技術的な難しさは一旦脇に置いて、「こんなこといいな、できたらいいな」と無邪気に想像してみる。この「ドラえもん的発想」こそが、これからの社会を良くする鍵になるはずです。
AIは「ドラえもん」にも「ターミネーター」にもなる
一方で、AIとドラえもんには決定的な違いもあります。それは使い方を間違えれば、人類を脅かす「ターミネーター」になってしまう危険性があるということです。
強力な技術だからこそ、AIの使い方には倫理観と適切な規制が必要です。そして、それらを実現し、AIを正しく「ドラえもん」として社会に迎え入れるためには、一人でも多くの人がAIに関する正しい知識を持つ必要があります。
「社会全体の視点」に気づく——思考の枠を外せる読書会の魅力
UX DAYS TOKYOの読書会は、単に本を読むだけではありません。こうして問いを投げられ、多様なバックグラウンドを持つ参加者と議論することで、自分一人では気づけなかった「思考の偏り」に気づくことができるのが最大の魅力です。
AIで注目されている「仕事の効率化」だけでなく、もっと社会全体を見渡すことの重要性を学びました。また、「AIとはそもそも何で、これからどう進化していくのか」、2018年に記載されていた内容を現実的に捉えることで、これからの私たちが創るべき「本当の未来」について深く考えるとても大きなきっかけになりました。
技術の進化にばかり目を奪われるのではなく、「社会が変わるには、まず私たち自身の思考が変わる必要がある」——そんな大きな気づきを胸に、より良い世界を一緒に考える仲間を一人でも増やしていきたいと、強く感じた読書会でした。

