エリカ・ホール氏の「Get Your Research Questions Right」の講演レポートを担当させていただく、UX DAYS TOKYO2019受付スタッフの山本です。
エリカ・ホール氏は2017年のUX DAYS TOKYOでも講演・ワークショップを行われ、今回が2度目の講演となりました。
2017年のUX DAYS TOKYOでは私も、エリカ・ホール氏の講演・ワークショップの両方に参加することができ、リサーチの重要性、リサーチャーに必要なマインドセットやリサーチを行ううえでの目的の決め方など非常に深い学びを得ることができました。
今回の講演ではリサーチの目的についてや、組織の意思決定についてなどリサーチを現場で活かすために必要なトピックについて、2017年に引き続き、簡潔にわかりやすく説明していただきました。
最初の一歩=リサーチをスキップしないことがイノベーションへと繋がる
イノベーションのためには、現在と過去の両方を知る必要がある、とエリカ・ホール氏は言います。そのためにはリサーチが有効です。
リサーチを行うことで、正しい意思決定ができるようになります。
意思決定の質は、製品やデザインの質に影響するので、とても重要です。
ビジネスの現場ではときに、現実に基づいた意思決定が行われず、思い込みに基づいた意思決定が行われていることがあり、リサーチを行うことで、現実に基づいた意思決定ができるようになります。
しかし、ただ漫然とリサーチを行ってもよい意思決定ができるわけではありません。
そのリサーチは何を知るために行うのか?
よい意思決定を行うには、調査で何を調べるのか最初に決めておく必要があります。
「何を知らなければならないのか?」を決めずにリサーチをしてしまうと、一人のユーザーの声に振り回されて意思決定をしてしまうなど、ビジネスの成功のためのよりよい決定へと繋がりません。
リサーチをよりよい意思決定に結びつけるにはゴールの決定が不可欠です。
ゴールを達成するための問を決める
ゴールを達成するための問い「Question」を決めます。
「Question」というと、インタビューでユーザーに投げかける設問のようですが、設問ではなく、リサーチのゴールを達成するための大きな問を「Question」として設定します。
この「Question」は最も大切なゴールのための質問です。
時々、テーマまたは目的と呼ばれています。
よりよい「Question」は
- 具体的で
- アクションがとれ
- 実用的
なものだそうです。
例えば「最近の大学生は何を食べるかをどのようにして決めているのか?」のような、具体的で、ゴールをを達成するために把握しておかなければリスクとなる質問を設定します。
2017年のワークショップでも、このゴールのための問「Question」について、多くの時間を割いて学びました。
「Question」の内容次第で、ユーザーや顧客へ投げかける設問の内容も変わります。
2017年のワークショップではいくつかのチームにわかれて「Question」作りを行いました。
同じ課題に対しそれぞれのチームから出た「Question」の内容が異なっていたことがとても印象に残っています。
ワークショップは1日のみだったので、ユーザーへの調査は行いませんでしたが、もし調査を行っていたとしたら、チームごとに、ユーザーへの設問内容から、調査を経て得られるインサイトまで全く異るものになっていたであろうことは容易に想像がつきます。
組織の意思決定のあり方を問おう!
エリカ・ホール氏は最初の質問=「QUESTION 0」として
「うちの会社はどうやって意思決定を行っているか?」
という問を挙げています。
どんなによいリサーチができても、よい意思決定がなされなくては成功に繋がりません。
会社の環境(社風や考え方)などがUX デザインの意思決定に影響を与えます。
ただし、組織で疑問を投げかけるのは、例えば上司がルールとなっている組織では、上司に異を唱えることになる危険が伴うので注意が必要です。
自分の会社を理解し、味方をつくり、間違っていることを伝えられる信頼関係を作っておく必要があります。
学んだこと
ゴールの設定がやはり大切
私は普段Webサイトの制作を行っているのですが、サイト制作でもゴールや目的の設定・共有を大切にしています。
リサーチも漫然と行うのではなく、ゴールの設定、理解、共有が大切なのだと改めて学ぶことができました。
UX DAYS TOKYO オーガナイザーの大本さんから、「UXデザインを行っていると、ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成などツールを使うことが目的になっている人がいる」という話を聞いたことがあります。
私たちはついツールに目を向けがちですが、手段が目的とならないよう、「何のために行うのか」という目的やゴールを持たなければなりません。
これはリサーチだけにとどまらず、他のUXの手法を実践する際にも、意識していかなければならないことだと思います。
組織やチームづくりなど人との関係づくりも大切
もう一つ学んだことは、リサーチをより活かすためには、チームや組織の理解や雰囲気も大切なのだということです。
今回学んだリサーチの中にも、
- ゴールを決定する
- ゴールのための大きな問「Question」を決定する
- リサーチを分析して得たインサイトから意思決定を行う
など、様々な決定の場面が出てくるのですが、どの決定においてもチームや組織のあり方が関わってくるのではないかとエリカ・ホール氏の「QUESTION 0」の話や実際に自分自身チームで作業をした経験からも感じています。
リサーチの実践方法を学んでも、意思決定する組織自体が正しいマインドを持っていなければ、そのリサーチがビジネスに活かされることは難しいのではないかと思います。
どのようにして、周りと知識を共有し、巻き込んでいくか、組織やチームのあり方作りも含め考えていかなければいけないのだと思いました。
質問という強い武器を活かせるようにさらに学んでいければと思います。
最後に、カンファレンスに参加された方の感想をいくつかご紹介させていただきます!
- エリカ氏のリサーチは、マインドセットが繰り返し言われており参考になった。
- すぐに業務に活かせそうなポイントを知ることができた。
- リサーチの具体的な取り組み方が紹介されていてとてもためになりました。
- ユーザーを知る前に、自分達の事理解してる?ということと、やはりリサーチにもコンテキストの理解は必須なんだと学びました。コンテキストの理解と実践また行きます!