ヒットは1%以下。だからこそ仮説検証(ワークショップ参加レポート)
こんにちは、スタッフでエンジニアの、かじしまさちこです。UXerとして成長すべく、日々学びを深めています。今年もUX DAYS TOKYO 2025 のマット氏のMVTワークショップに参加しました。
当初は、業務で活用している生成AIに関する
プロダクトが成功する確率は1%以下
Matt Lerner氏は、PayPalをはじめ300社以上のスタートアップを支援してきた実績を持つ方です。限られたリソースの中で、どうやってプロダクトを成功に導くのか ─ その秘訣を学べると期待していました。しかし実際のワークショップで得た学びは、予想を超えるものでした。
Matt Lerner氏からいきなり衝撃的な話を聞きました。それは「プロダクトが成功する確率は1%以下」とということです。つまり、トライのほとんどが失敗するとのことです。その中で成功するためには、どうすつべきか?という前提から、テストの必要性と重要性を語り始めました。
適切な検証(MVT)が成功の鍵
そのテストは一度きりでなく、数多くの検証を重ねて学ぶことこそが必要だと言います。ただし、なんでもかんでも検証する必要はありません。そこでポイントとなるのがMinimum Viable Testing(MVT:必要最低限のテスト)です。
商品を誰にも見つけてもらえないなどの顧客の障壁、プロダクトにとって特に致命的なリスク(Blocker)を優先的に検証すべきだと解説されていました。

印象に残った「偽の箱」検証
ワークショップでは、20種類もの検証手法が紹介されましたが、中でも、特に印象に残ったのは「スーパーに偽の箱を置く」という方法でした。

Gü創業者の
実際のスーパーに商品を並べるまで行う検証をすることに驚きました。しかし、本当の顧客にリサーチすることで、顧客の関心を知ることができると感じました。
検証は単一条件で行う
検証では、一度に複数の仮説を試さないことも重要です。ワークショップの演習には、「見た目が悪いから成果が出ない」という仮説をもとにUIを変更してA/Bテストをした時に、以下のバージョンAとバージョンBで良いテストができない理由を考えるものがありました。

この演習問題について、私はうまく理由を説明できませんでした。しかし、「ボタンのテキストと色を同時に変更してしまったため、どちらの変更が効果に影響したのか分からなくなっていた」という説明を聞いて納得しました。
A/Bテストでは、影響の原因をはっきりさせるために、一度に変えるのは1つの要素だけにするのが基本なのです。これは、バグの原因を調べるときに、一つずつ条件を変えて確認していくやり方と同じだと気づき、すっと理解できました。
正しい検証とは何か?
私がこれまで関わってきた現場、そして今回受講された方々の現場や案件でも共通していたことですが、日本の多くのプロダクト開発においては、「仕様が満たされているか確認するテスト」は徹底されている一方で、そもそもの「仕様」や「アイデア」のニーズ検証が不十分なまま進んでいるケースが少なくありません。
特に、チーム内での合意のみで進行し、実際のユーザーによるニーズ検証を行わないままリリースに至る例が多く見受けられます。
これはトライアンドエラーのマインドがない、そもそも検証方法を知らないことが背景にあるのではないかと気がつくことができました。
たとえば、お笑い芸人はネタを劇場で試し、反応を見て改善します。レストランも新メニューを常連客に試してもらいます。検証せずに一発勝負に出ることはありません。それと同じように、ヒットするプロダクトの背後には、数多くの「ボツ」プロダクトがあるのだと知ることができました。
小さく試して、早く学ぶ
私が関わる生成AIチャットツールの開発でも、仮説検証を積極的に取り入れたいと考えています。たとえば、ランディングページなどを 5秒間見せ、内容を説明してもらう「5秒テスト」やリンク(ダミー)を用意して、クリックされるか確認する「False Door Test」、ユーザーの操作に合わせて人が裏で操作する「オズの魔法使い」などを状況に応じて使い分けることで、早期の学びに繋げられると確信しました。
私はプロダクトマネージャーでもUXデザイナーでもありませんが、トライアンドエラーのマインドの文化を育てることはできます。失敗から学ぶことを恐れず、「早く・小さく試して・学び続ける」チームを目指したいと思います。
Matt Lerner氏のワークショップを勧めてくれた大本さんの意図は、「失敗を恐れず、学びに変えるマインドセットを育ててほしい」── そう受け止めています。
プロダクト成功の鍵は、検証にあることが学べました。エンジニアとして現場で働いていますが、ややもすると工数をこなすことに没頭してしまうので、プロダクトを成功させるためにも適切なテストの実施を現場でも問いていこうと考えています。