UX Tokyoの前田さんにステファン氏についてお聞きしました。
自己紹介をお願いします。
はじめまして、UX Tokyo主宰の前田と申します。2006年に就職した会社にいまもいるんですが、Webユーザビリティからはじめて2006年ごろにUXに興味を持ち、現在はUXの延長でデジタルビジネス立ち上げ支援やCX領域のコンサルティングを行っています。
途中、1年半だけサンフランシスコ発のソーシャルゲーム会社にUXリサーチャとして参画しました。そこでの経験から、デジタルのUXデザインはゲームが常にフロンティアだなと感じました。
Seductive(魅惑的)なインタラクション
UX DAYS TOKYO 2017に出演されるステファン氏の書籍を読まれた感想を教えてください?
2011年頃に、彼の「Seductive Interactive Design」の本を読みました。
まずタイトルをみて、「seductiveって(聞きなれないけど)なんだろう?」と思いから興味を持ちました。
そしてamazonの紹介文が、自分の知りたいことと、とてもマッチしていたことを覚えています。いままでUX関係の書籍は30冊以上読んでいるのですが、その読んだ書籍の中でも、トップ3に入るほどのインパクトがありましたね。
心理学的なアプローチで書かれていて、ゲーミフィケーションだけでなく汎用的な考え方を提唱されていました。その頃、私はゲーミフィケーション的な発想をなにかに応用できないのかなと考えていました。すでに、外的報酬とよばれる、バッヂなどの具体的な報酬をつけるというアイデアは普通に存在していました。
しかし、僕は「ゲーム以外のことにコインとかバッジだけじゃない、人のモチベーションを本質的に高めるように適用できないのかな??」と思っていたところ、この書籍では外的報酬のことよりも内的報酬にフォーカスした内容を扱っており、非常に感銘をうけた記憶があります。
UXD meets 心理学の第2波が来たと感じた!
書籍の内容をより詳しく教えてください。
心理学的な考え方が丁寧に盛り込まれたUXDのためのフレームワークですね。自己紹介のところにもつながるんですが、当時は人の習慣形成にとても興味を持っており、特にゲーミフィケーションで起きていることをウオッチしていました(そしてまんまとゲーム会社に転職しました)。
でもゲーミフィケーションって、バッジだのなんだのって外的報酬の話ばかりで、これは普通のプロダクトには応用しにくいな。とどこか感じていたのですが、ステファンさんのこの本に出会って、内的報酬について理解をしました。読み終えた時には、UXD meets 心理学の第2波が来たんだ!と感じました。
この当時、内的報酬や心理学、メンタル部分について言っている人はこの人しかいなかったですし、この人完全にマニアだなとも感じました。と同時に、フロンティアで本質的なことが言える人でもあると思いました。褒め言葉として、UXオタクでありマニアでもあると。そして、最終インパクト(ビジネス的な結果)へのこだわりも感じました。
UXDの本質的な理解を
今回来日されますが、日本のUX業界の方に、彼からどんなことを学ぶと良いと考えられますか?
いままでは本能的に理解していたり、感覚的なものでUXを実践してきたものに、本質的な理解、言語化された論理をもたらしてくれるのではないでしょうか。
せこい話かもしれませんが、やはり「結果としての数字を上げなければいけない」というミッションを背負った方に、特におすすめしたいです。
職種的には、インタラクションデザイナーをはじめ、直接ものを作られる方々に参加してもらいたいです。UXDのための最新の観点やフレームについて、表層的でななく、本質的な理解をもたらしてくれるはずです。
もし、プロダクトオーナーであったり事業の数字をおっているような方も、いま様々な場面で顧客志向化が求められている中で、より少し踏み込んだ打ち手・アプローチを理解するために彼の話は参考になるのではと思います。
言葉を深く理解することが大切
UXに携わっている日本人に足りないものはなんだと思いますか?
自分も含め、横文字をそのまま使っているときってだいたいちゃんと理解してないなと思います笑。
色々な有益な言葉や情報も、結局、それらが何なのかを分かっていないともったいないですよね。
また、それらの言葉をどこにアウトプットするのかも重要です。相手に合わせて伝える言葉や内容を分かりやすくする必要があると思います。英語が苦手な人に横文字を並べて説明しても理解を得にくいですよね。
英語を使うことが悪い訳ではなく、まずは言葉を深く理解することが先決です。新しい概念に触れたらその日本語的な定義をもって理解すること。理解ができていれば、UXじゃなくて例えば「顧客中心」でもいいんじゃないかな。と感じています