こんにちは、スタッフの池田です。普段は事業会社でUIデザイナーとしてプロダクトマネージャーやエンジニアとチームで働いています。
先日5/27に「UX組織に役立つ読書会「みんなではじめるデザイン批評」を行い、参加者11名で書籍内容を発表し、仕事での経験や疑問点などのディスカッションを行いました。
デザイン批評=ダメ出し?怖い?
書籍をまだ読んだことがない方、「デザイン批評」と聞いてどんな印象を持ちますか?
私を含め、参加者から出たのは「ダメ出しされる?」「厳格なチェックリストがある?」「怖いイメージ」「音から批判・非難を連想してしまう」という身構えてしまう反応がほとんどでした。
辞書では”批評とは、ある事象をできるだけ思い込みを排して判断すること“とされていて、本のコンセプトを正しく表した言葉ではあります。
しかし「批評」という言葉だけを聞いて、チームを巻き込んでデザインの分析を建設的に話し合うというイメージを直感的に持てた方はほとんどいませんでした。
ディスカッション・デザインにマインドを切り替えよう
読書会冒頭に、今回の読書会開催を勧めてくれたUX DAYS TOKYOオーガナイザーの大本さんから「デザイン批評」という言葉よりも、原題の「Discussing Design」からとって「ディスカッション・デザイン」のほうが書籍で伝えたい内容である「製品を中心にデザインを分析するディスカッション」というコンセプトがスッと理解できるんじゃないか?という提案がありました。
恥ずかしながら、私は書籍を読み通した後だったのに、この2冊が同じ本であるということを知りませんでした。
イベントに参加しなかったら翻訳前の原著のコンセプトを社内に伝えられず、仕事に生かすことはできなかったと思います。
参加者の方からも「過去にこの書籍を読んで社内でデザイン批評をしましょう!と旗揚げをしたけど誰もついてこれなかった苦い思い出がある」と過去の失敗経験を共有してくれました。チームを巻き込むときにはコンセプトの名前も大切だと、書籍だけではわからなかった現場につながる学びが開始直後から得られました。
ディスカッション・デザインにマインドを切り替えて書籍の内容をスライド発表で咀嚼して聞けたことで、コンセプトをより理解できました。
伝え方ひとつで傷つけてしまう
著者のアダム・コナー氏とアーロン・イリザリー氏は、見た目は実績も自信もあり強そうな人に見えます。書籍ではそんな彼らでも落ち込んだり傷ついたりしたエピソードが紹介されていて、どんな人でも無神経なフィードバックには傷ついてしまうものとわかりました。
参加者の体験談でうなづきが連発した!現場で遭遇したツライ批評
特にデザイナーにとって「生み出したデザインは我が子のような存在で、デザインの評価=自分の評価と捉えやすいので、傷つきやすい」という話がディスカッションの中で出ました。
参加者から「デザインのフィードバックで人格否定をされてショックで体調を崩した」「フィードバックで傷ついて現場を辞める人をたくさん見てきた」といった現場でのつらい体験を共有してもらったとき全員が深くうなづき共感していました。
良いディスカッションは、人ではなく製品が中心
人を傷つけてしまうフィードバックは「あなたのレイアウトには改善点が多い」というように、無意識に人を対象にした言葉になっていると書籍にありました。デザイナーは自分が作った製品は子供や一心同体の様に思い、デザインについて言われたことも自分の評価として受け取ってしまいやすいです。
フィードバックを出す側も受ける側も、人ではなく製品に焦点を当てることが、ディスカッション・デザインで重要な心構えだと学べました。
私も過去に、作ったものにダメ出しをされたとき「自分はダメなデザイナーだ」と落ち込んでしまったことがありました。
チーム・社内に製品中心のディスカッション文化を作ろう
製品中心のディスカッション文化を社内に取り入れる簡単な一歩として、「書籍の中で印象的だったフレーズの『分析に基づく改善』『製品の改善に役立つことだけに集中する』を会社の壁に貼って常に意識してみては」と提案されるなど、社内メンバー全員で意識する取り組みをしようと話しました。
以前行った読書会のファシリテーション、フィードバックと学びがつながった
UX DAYS TOKYOで以前行った読書会でフィードバックとファシリテーションの書籍がありました。
その内容が今回のディスカッションデザインの中にも役立つと言うことが参加者の中でも感想として出てきました。
ファシリテーションも学びたくなった
デザイナーが、ディスカッションを怖がらずに改善のためにどんどん意見を出せるように、ファシリテーションのスキルもつけていきたいと思いました。興味のテーマが具体的になりました。
参加者アンケートより
デザイナーでなくても必読
まずは、「批評」という言葉が与える印象が大きいということを学びました。「批評」という言葉からは「ダメなところ」を指摘するという印象を受けていたのですが、実際にはデザインをよくしていくということでした。もっというと、「デザイン」という言葉から「デザイナーさんじゃないからいいや」という印象を受けたのですが、実際にはファシリテーションやフィードバックの話も出てきているので、デザイナーでなくても必読だと思いました。
過去の読書会で取り上げた「あなたを成長させるフィードバックの授業」や「ファシリテーションの教科書」と通じる内容でした。
参加者アンケートより
自分の言葉・ビジュアルで咀嚼した発表を聞けるから、難しい本も理解できる
UX DAYS TOKYOの読書会では、書籍の内容を咀嚼したスライドを参加者が作成して発表し、ディスカッションして理解を深めます。
ただ書籍を読むだけよりも理解ができると嬉しい感想を頂いています。
ちょっと難しい本だったんですが、参加者のちからで一冊読めたので自信になる
参加者アンケートより
実体験や感想も聞けるのが学びになる
毎度、課題図書に関して自分一人では理解の及ばない部分もあるのですが、勉強会に参加することで理解が追いついて、皆さんの実体験やご感想をシェアしていただけるのが毎回とても興味深いです。参加者の皆さんの発表も、ご自身の言葉とビジュアルに落とし込まれていて学びになります。次回はより自分もブラッシュアップしたいと励みになっています。
参加者アンケートより
分析を話し合うことが本質
イベントの最後に学べたことや感想を参加者全員で話しました。その中でも印象的だったのはスタッフの高橋さんが「デザインに意見を言われたとき自分の判断で目的に沿っているか意見を取捨選択をしていたけど、製品に焦点を当ててディスカッションして分析しているかって振り返るとあまりなかったかも」という言葉です。
ディスカッションデザインは問題解決の前の分析を話し合うことこそが本質だと、書籍を通じて学べました。
何のためにこれを作ったのか?目的にとって効果的なのか?を分析するディスカッションを、製作中から何度も繰り返しやることが大切だと認識を改めることができました。
まずは1人、仲間をチームに作ろう
とはいえ、書籍を読んだとしても最初からうまくはいきません。著者も書籍の中で「練習あるのみ。やればやるほど上達する」と繰り返し伝えていました。
参加者の体験を踏まえると、製品の目的・ペルソナやシナリオに効果的なデザインになっているか?と分析する文化は、日本の現場ではまだ当たり前になっているとは言えない状況です。
文化を変えていくのは大変です。具体的にどう取り組んだら良いかディスカッションした時に、「最初の仲間を1人作ること」という発言に共感が集まりました。
参加者からも「大変なことでも1人味方がいるとやる気が出るし、だんだん人が集まってくるきっかけになる」と1人目の仲間から得られる力が語られました。
小さな1歩からディスカッション・デザイン文化を取り入れよう
読書会の最後では明日からやることを参加者それぞれが宣言しました。
ちなみに私は、デザイン製作中にディスカッションをすると宣言し、早速次の日にプロダクトマネージャーと1対1で15分程度ディスカッションを実践しました。
小さな一歩から、ディスカッション・デザインを始めましょう!