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巨額投資された『無能』AIプラットフォームの悲劇

AIの技術や可能性に惑わされて、顧客の課題を見つけるよりも先に、AIシステムに大規模な投資をしてはいけません。この記事では、大きなコストやリスクを負うことなく、成功への近道を知ることができます。

元の記事「The Importance of Staying Lean」を日本語に翻訳・要約し、読みやすく整理したものです。

AIプロジェクトを頓挫させる最も確実な方法が「間違ったユースケースを選ぶこと」であるとすれば、2番目に確実な方法は…投資しすぎないことです。直感に反するかもしれませんが、読み進めると理解できます。

AIへの過剰投資が招いた悲劇

数年前、グレッグは世界有数の精密工業企業で、34人からなる大規模なUXリサーチチームを立ち上げ、率いるために雇われました。その理由は、企業が産業用AIの開発会社にシフトするためです。

しかし、そのチームは実現しませんでした。

その代わり、グレッグは入社からわずか数週間で、企業がAIシステムに回収不可能なほどの莫大な投資をしていることに気づきました。1年後、企業は複数の部門を売却し、15,000人以上を解雇することで、かろうじて倒産を免れました。失敗の理由は常に複雑ですが、AIシステムへの過剰な投資が大部分を占めていたことは間違いありません。

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「無能」にとなった「万能」AI

失敗の原因は明確でした。彼らは、特定のビジネス課題を解決するための少数精鋭チームを作る代わりに、様々なケースで利用できる万能な「AIプラットフォーム」の構築に何十億ドルもの資金を注ぎ込んだのです。

何十億ドルも投じたからには、経営陣は数百億ドルの利益を期待しました。AIチームが事業を根底から覆す特許やイノベーションを次々と生み出す 、そんな壮大な夢を描いていたのです。

その期待に煽られるように、マーケティング部門は「データが富を生み、シリコンの川を金貨が流れる」といった、きらびやかなイメージでプロジェクトを大々的に宣伝しました。そのマーケティングによる誇大広告は、さながら映画『エクス・マキナ』を見ているかのようでした。力と威厳と目的を持って闊歩するセクシーなロボットが、ジャクソン・ポロックの絵画に火をつける、といった具合に。誰もが巨額の投資と「AI」という言葉の響きに酔いしれ、成功以外の結末を想像すらしていませんでした。

しかし、AIチームが生み出したのは期待された万能ロボットではなく、見当違いで役に立たない代物でした。それは、作家アリー・ブロッシュが描いた「おバカな犬」さながら。ドッグフードを食べては吐き出し、それを自分の「創造物」だと勘違いする、そんな自己満足なシステムだったのです。

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ひとつの顧客の課題に集中せよ

この失敗から学ぶべき教訓はシンプルです。小規模で、同じ場所に集まり、謙虚に、そして一つの課題に集中し続けること。 そして何よりも、時期尚早な成功を吹聴しないことです。

理想的なチームは、以下のメンバーで構成されるべきです:

  • プロダクトマネージャー
  • UXデザイナー
  • エンジニア
  • 特定分野の専門家(SMEs)
  • …そして最後に、データサイエンティスト。

重要なのは、データサイエンスが単独で暴走しないことです。ビジネス、UX、エンジニアリングの専門家たちと密に連携し、常に「顧客の課題は何か」を最優先できる環境が不可欠です。明確な課題設定もないまま、曖昧な「AIプラットフォーム」に大金を投じるのは、失敗への最短ルートに他なりません。

明確なユースケースもなく、夢みがちな「AIプラットフォーム」に大金を投じるのは、失敗への最短ルートです。

UXがAIを成功させる鍵

リーン(無駄がない状態)でいることは重要ですが、それはUXへの取り組みを軽視するという意味ではありません。むしろ、その逆です! UXは、コストと時間を節約し、AIプロジェクトの成功を確実にする手助けとなります。 ここに、Daria (Siegel) Kempka氏からの、リーンなAIプロジェクトにUXを取り入れるためのヒントをいくつか紹介します。

1. ユーザーの声から始める

まず、ユーザーと対話し、彼らの課題を深く理解することが全ての原点です。どのような製品を作るかを決める前に、彼らが直面している本当の課題を理解してください。そうしなければ、最新トレンドを追いかけ、誇大広告と無駄遣いの沼に沈んでいくだけです。

2. 安易な模倣や流行に飛びつかない

Web 1.0の古き良き時代に、どの会社の上司もホームページに載せたがった、あの歩きながら話す動画(ビデオオーバーレイ)を覚えていますか?訪問者が現れると同時に再生され、誰もが見ずに閉じていた動画を覚えていますか?あの過ちを繰り返してはいけません。他社のアイデアを安易に真似ても、あなたのユーザーを満足させる革新的な解決策は生まれません。

3. 思い込みではなく、現実をテストする

検証されていない思い込みから製品開発をスタートさせてはいけません。ユーザーを巻き込み、そのアイデアが本当に価値あるものかを素早くテストしましょう。グレッグ氏の著書『The $1 Prototype』では、このための軽量なプロセスが紹介されているので参考にしてください。

手軽な検証方法として、「この作業、既存のツールのほうが簡単じゃないか?」と自問してみてください。

例えば、テキスト入力でデザインを生成するAIプラグインは便利ですが、簡単な図形を描くだけなら、手で配置する方が圧倒的に速いでしょう。AIが解決すべきユースケースを正しく見極めることが肝心です。

結論:これまで以上に、あなたのUXスキルが必要です!

忘れないでください。AIがどれだけ進化しても、あなたがデザインしているのは「人間が使うためのツール」です。顧客とビジネスへの深い理解、多様な専門家との協業、そして徹底したユーザー中心のアプローチ、あなたが持つUXのスキルセットは、AI時代において、これまで以上に重要な価値を持つのです。

ワークショップのご案内

AIの技術と革新は目覚ましいものですが、どれだけ投資しようとも、使い道次第でいとも簡単に「無能」な代物になってしまいます。

2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」のワークショップに参加して、顧客の課題を解決するAIプロジェクトを、無駄なく提供できる方法を学びましょう!

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>>2025年11月15日「AIと共創する次世代プロダクトデザイン」の特設ページでお申し込みください。

YouTubeで音声スライドも公開中!

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BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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