この記事はthink with Googleで公開されたStuart Hogg氏の「Customer journey mapping: The path to loyalty」を翻訳したものです。
理想的なロイヤルカスタマーを獲得するまでのジャーニー(道のり)は直線的なものと考えてしまいがちです。
プロダクトや製品を見て、購入し、リピーターになるというものです。
ところが現実のジャーニーは、立ち止まったり、探したり、場合によっては話をする、観光ツアーのようなものです。
その道中、どの場面においても人々が競合他社に移ってしまわないように、自分のブランドを顧客の手に取らせ、手放させないようにする必要があります。
顧客のそれら全ての場面に立ち会うことは計り知れないほど大変です。しかし、そんな時にカスタマージャーニーを描くことは有効です。
ジャーニーマップを描くことで、「顧客が自分達のブランドといつ接触し、関与しているのか」ということを理解できるでしょう。また、プロダクトやサービスが、顧客の生活、スケジュール、ゴール、そして熱望していることにどれだけフィットしているかをジャーニーマップは明らかにしてくれます。
それでは、あなたのチームが今からジャーニーマッピングに取り掛かるための、5つのステップを見ていきましょう。
①顧客が目指すゴールと、自分達のゴールが一致するスイートスポットを見つける
ジャーニーマッピングを始める前に、ビジネスゴールを明確にしましょう。
カスタマージャーニーにおいて、どんなマーケティングやコミュニケーションも、このゴールを達成できるかという点にフォーカスしなければいけません。
しかしながら、顧客のゴールが自分達のゴールと異なるという事実を受け入れるのも重要なことです。
例えば、自分達のビジネスゴールが、より利益率の高い新型レンズのサングラスを売ることだとしましょう。
一方、顧客の一番の判断ポイントは、彼ら個人のスタイルに合うサングラスを手に入れることだとします。
その場合、サングラスのレンズの質は彼らの2番目、もしくは3番目の優先すべき点になるでしょう。
マーケティングとコミュニケーション戦略がどのように顧客のゴール達成を支援し、自分のゴールにも導けるかということを考慮しましょう。
②カスタマージャーニーにおける、全てのタッチポイントを明確にする
あなたは普段いつ顧客とコミュニケーションを取っていますか?
その場面をリストにまとめ、カスタマージャーニーにおける購買前(pre-purchase)、購買(purchase)、購買後(post-purchase)に基づいたグループに分けてみましょう。
次に、そこから見落としていたかもしれないタッチポイントを明確にします。それぞれの段階の前後で、顧客と自分達のブランドの間でどのようなやりとりが行われているかを確認しましょう。
例えば、商品を購入する際に重要な場面は、顧客が商品を買うためにウェブサイトに訪れた時だと、あなたは感じているかもしれません。
しかし、商品を購入しようとする前の場面が、タッチポイントとして正しいのだと後に気づくかもしれません。具体的に言えば、商品がショッピングカートに追加され、関連商品を提案する場面こそが、顧客に影響を与えているということです。
これら全てのタッチポイントを洗い出すと、あなたのチームは多くの細部とマイクロインテラクションに捉われてしまうことになるでしょう。それを避けるために、ビジネスゴールを達成し得る場面の優先付けをしましょう。
③顧客が喜ぶ・不満を感じる場面を認識する
顧客がゴールを達成しようとする際、購買前、購買、購買後で彼らの心情はどう変化するのでしょうか?
例えば、ウェブサイトの文字の大きさや色などを変更し、商品の一覧画面を見やすくすることで顧客の満足度が上がるかもしれません。
しかし、商品を買う段階ではどうでしょうか?それが逆に紛らしくなり不満に感じられるかもしれません。
顧客がネガティブな体験を持ちうる場面を見つけましょう。
誰がそれらのタッチポイントに関わっているでしょうか?ウェブデザイナー?マーケティングチーム?もしくはコピーライターでしょうか?他のチームメンバーでその状況を改善できる人はいないでしょうか?
製品をオンライン広告でどのように表現すれば、顧客がそれを好むか一度言葉にしてみましょう。
しかし、実際の商品売場での顧客とのコミュニケーションも忘れてはいけません。
店員は製品に関してオンライン広告とは多少異なった表現で説明をすることもあるでしょう。
そのため、コピーライターや店員にとって、コピーライトとセールストークを揃えるよい機会になります。
④カスタマージャーニーを自分自身で体験する
顧客のジャーニーの間で、彼らの気持ちの変化を想像することは価値あることです。
しかし、本当に求められているインサイトを明らかにするために必要なのは、自分自身でそれを体験することです。
もしビジネスがオンライン上のものなら、ブラウザーを開き、顧客にとってそれがどういったものか体験するのがいいでしょう。同様に、店舗を持っているのなら、商品棚まで実際に行ってみるのもいいでしょう。
その後、あなたが遭遇した1番のタッチポイントについて自問してみてください。
「それらはうまく機能していたか?」「ジャーニーの目的達成を支援していたか?」「何が足りていなかったのか?」といったようにです。
競合相手のことについても忘れないでください。彼らの顧客の1人になり、彼らが作ったジャーニーを体験してみるのです。そして、同じ質問を自分自身に行いましょう。
⑤カスタマージャーニーマップを視覚化する
カスタマージャーニーとタッチポイントを書き出して、それらのビジュアルマップを作成しましょう。
これは時間をかけ、よくデザインされたビジュアルである必要はありません。ポストイットや紙にタッチポイントをシンプルに一つずつ書き、壁などに留めておきましょう。
このエクササイズを行うことで、チーム全員がカスタマージャーニー全体を俯瞰してみることができるようになります。
また、自分の考えを整理し、タッチポイントごとのコミュニケーションを変更したり加えたりするために、チーム全体で協調しあってより生産性の高いブレインストーミングを行うことができます。
大切なのは、新しいタッチポイントがカスタマージャーニーをなぜ改善できるかの仮説を作り、実行してテストすることです。もし仮説が間違っていればジャーニーマップに戻り、再検討、微調整をして、再び改善していきましょう。
このように、ジャーニーマッピングの過程は極めて集中力を要するものです。
しかし、ビジネスに大きなインパクトを与えることができます。まさにそれが1回だけのイベントとして行うべきではない理由です。顧客の嗜好は変わり有るものです。新たなテクノロジーは日々利用可能になり、あなたのブランドも進化していく可能性があります。そのため、ジャーニーマッピングは少なくとも1年に1回は行い、どのタッチポイントが今も有効で修正を必要としているかを判断することが大切です。