TOP お知らせ UX DAYS 本編 賢い機能選定と優先順位の決定に役立つ「プロダクトツリーゲーム」のやり方

賢い機能選定と優先順位の決定に役立つ「プロダクトツリーゲーム」のやり方

本記事は、プロダクトマネージャーが利用する世界的に有名なツール「Prodpad」の共同創業者、Janna Bastow(ジャナ・バストウ)氏による翻訳記事です。

プロダクト開発において、適切な優先順位付けを行うことは非常に重要です。本記事では、プロダクトを成功させるためのスマートな機能選定、優先順位戦略をプロダクトツリーゲームを用いて紹介しています。なお、Janna Bastow氏は、UX DAYS TOKYO 2025 への出演のため来日予定です。

原文:https://www.prodpad.com/blog/product-tree-game/

Janna Bastow(ジャナ・バストウ)

「プロダクトツリーゲーム」は、ルーク・ホーマン氏が著書『Innovation Games: Creating Breakthrough Products Through Collaborative Play(イノベーションゲームズ:協働プレイで革新的なプロダクトを生み出す)』で提案した、機能の優先順位付け手法です。

プロダクトツリーゲームは、チームが意見を効果的に整理し、開発計画を視覚的にまとめるためのツールです。遊び感覚で取り組めるため、チームの創造性や協調性を引き出し、より楽しく戦略的にプロダクトマネジメントを進められます。

プロダクトマネージャーの重要な役割のひとつは、社内の多様な部門から集まる膨大なインプットを整理・優先順位付けし、一貫性のあるプロダクトロードマップに落とし込むことです。
今回は、そのプロセスを円滑に進めるための、実践的で効果的な機能優先順位付けフレームワークをご紹介します。

The output of a product tree session
ProdPadのプロダクトツリーセッションの成果物

プロダクトツリーゲームは、参加者全員がプロダクトを成長させるための優先事項を自由に提案します。最終決定は、チーム全体での議論と合意形成によってされますが、このプロセスを行うことで、チームはより深い理解と納得感を得ることができます。

議論やディスカッションを充実させ、機能の優先順位付けにしっかり取り組むためには、午前または午後の時間をまるごと確保することをオススメします。十分な時間を確保することで、表面的な意見交換にとどまらず、より本質的な課題やアイデアに深く向き合うことが可能になります。

できるだけ多くのメンバーをプロセスに巻き込むことと、プロダクトに対する理解が深まります。
メンバーの中には、社内のステークホルダーや実際のユーザーを参加させることで、プロダクトチーム内だけでは得られない、より価値のある洞察やフィードバックを収集できます。

では、楽しく視覚的なツールを活用した「プロダクトツリーセッション」の実施方法を、シンプルなステップでご紹介します。さらに、プロダクトマネージャーに役立つ優先順位付けフレームワークをまとめた無料eBookもあります。以下のバナーからダウンロードしてご活用ください。

プロダクトツリーゲームの進め方

用意するもの

  • プロダクトツリーのテンプレート
  • ポストイット(葉の形のポストイットが最適)
  • マジックペン(シャーピーなどの太めのペンがおすすめ)
  • 半日分の時間(午後または午前のまとまった時間)
  • コーヒー(リラックスした雰囲気づくりに!)

ステップ1:プロダクトツリーテンプレートを準備する

セッションの進行には、プロダクトツリーが欠かせません。無料のプロダクトツリーテンプレートをダウンロードするか、大きなホワイトボードに手描きで作成しましょう。プロダクトツリーは、以下の4つの要素で構成されています。

  1. 幹(Trunk)
    既にプロダクトに存在しているコア機能を示します。
  2. 枝(Branches)
    機能のカテゴリーごとの枝です。重要度に応じて枝の太さを変えると、視覚的にわかりやすくなります。
  3. 葉(Leaves)
    参加者が枝に貼り付ける個別の機能やアイデアです。幹に近いほど早期リリース予定、枝の先端にあるものは将来的な計画を表します。
  4. 根(Roots)
    プロダクトを支えるインフラや技術的要件です。木と同様に、プロダクトが成長するほど、技術基盤の強化が重要になります。

プロダクトツリーの活用ポイント

プロダクトの成長に伴い、テクノロジー面の拡張も忘れずに行います。視覚的に整理することで、優先順位の明確化チームの共通理解が深まります。

次のステップでは、実際のセッションの進め方をご紹介します。準備を整えて楽しいディスカッションを始めましょう!

プロダクトツリーの活用方法は、作りたいプロダクトの特性や目的によって異なります。
例えば、特定の分野に焦点を当てたい場合は、その分野をツリーの幹とし、プロダクト全体をとして捉えることができます。

一方で、複数のプロダクトを展開している場合は、プラットフォーム全体を幹とし、各プロダクトをとして表現することも可能です。

いずれの場合も、まずはプロダクトの主要な領域をリストアップし、それぞれのツリーの枝に適切なラベルを付けましょう。さらに、各領域において特に重要な機能がある場合は、それらを枝の付け根に追加することで、より明確な構造を描くことができます。

ステップ2:葉の準備

既存の機能や追加したい機能は、紙に印刷するか、ポストイットに書き出して準備しておきましょう。
新しいアイデアを書き込めるよう、ポストイットは多めに用意することをおすすめします。

すべての機能を無理に追加する必要はありません。
機能の数が多くなるとセッションが長引く可能性があるため、時間に余裕を持たせ、無理のない進行を心がけましょう。

ステップ3:参加者を集める

このゲームは誰でも参加可能であり、多様な関係者が集まることでより豊かなアウトプットが期待できます。
特に、顧客が新機能をどこに配置したいかを考える場面は、貴重な意見を引き出す絶好の機会です。

参加者が10人を超える場合は、複数のプロダクトツリーを準備しましょう。
理想的には、1本のツリーに対して4〜10人で作業するのが最適です。そのうち1人をオブザーバーとして参加させることで、ツリー上の曖昧な内容を整理し、議論をスムーズに進める役割を担ってもらいましょう。

ステップ4:葉をツリーに貼る

参加者全員に、葉型のポストイットに機能のアイデアを書いてもらい、それをツリー上の適切な場所に貼ります。

  • 幹に近い葉:リリースが近い機能。
  • ツリーの上部(樹冠):長期的な成長を示す機能。

参加者全員の意見が反映されたツリーが、視覚的に整理され、プロダクトの方向性が明確になります。

ステップ5: プロダクトツリーを剪定する

創造力を発揮して、プロダクトツリーを剪定しましょう。ツリーの枝や葉が整理され、機能の優先順位が明確に可視化されます。

剪定がこんなに楽しいとは思わなかったでしょう

さあ、ここからが本番です!才能ある園芸職人のように、プロダクトツリーの剪定を始めましょう。

ここでいう「剪定」とは、単にツリーから何かを取り除くことを意味するわけではありません。
「プロダクトツリーの剪定」とは、ツリーに載せたアイデアを再評価し、チーム全員で整理し直すプロセスです。

機能の移動や枝の太さの調整も、無理なアイデアを取り除くことと同じくらい重要です。
もちろん、実現が難しいアイデアは切り落とすべきですが、一度レビューの段階に残しておくことで、新たな可能性が見えてくるかもしれません。

チーム全員で各「葉」の配置について議論し、ツリー全体の最適なバランスを見つけていくことが重要です。
このプロセスを通じて、長期的な成長を妨げる枝や葉、さらには根本的な問題を発見し、適切に取り除くことができます。

成功するプロダクトツリーワークショップのためのヒント

効果的で楽しいプロダクトツリー剪定セッションを行うためのポイントをご紹介します。

ツリーを個性化して創造性を刺激する

参加者は自分のアイデアにマーカーを加えたり、特に気に入った機能の周りにハートを描いたりすることができます。これにより、アイデアが個性的に表現され、創造的な議論が生まれやすくなります。

葉の配置の重要性を忘れない

葉が幹に近いほど、その機能は短期的に実装されるべきものであり、外側にある葉は将来に向けた機能を示しています。葉の配置に注意を払い、どの機能が短期的にリリースされるべきか、どれが長期的なビジョンに基づいているかを考慮しましょう。

機能間のリンクや依存関係を示すためにラインを使う

機能間の依存関係やリンクを示すためにラインを引くのも効果的です。ただし、過剰にラインを引いてツリーが過密にならないように注意しましょう。『It’s Always Sunny』のチャーリーのように、ラインが複雑すぎないよう気をつけてください。

ツリーが不均衡になっても心配しない

ツリーが不均衡に見えることがあっても心配はいりません。通常、参加者や観察者がその不均衡に気づき、自然に調整が行われます。

ツリーの発展を写真で記録する

ツリーの進行過程を写真に収めておくと、レビュー時に役立ちます。進行中のツリーやその変化を記録することで、後で振り返ったときに貴重な情報となります。

ステップ6: 内部で発表とレビューを行う

セッションが終わったら、作成したプロダクトツリーとその写真を見ながら、現在のプロダクトロードマップと比較します。以下のような質問を自分たちに投げかけてみましょう:

  1. 「準備された機能」で剪定されたものは何か?
    特に顧客と直接やり取りしている場合、顧客が本当に大切にしていた機能が、実際には不要だと判明することもあります。
  2. ツリーの形は保持されているか?
    もし、特定の枝に葉が偏っている場合、ユーザーがその機能について知らない(認識の問題)か、または興味がない(プロダクト/マーケットフィットの問題)可能性があります。
  3. プロダクトの成長は十分か?
    幹に近い葉っぱが多い場合、機能のリリース速度が遅い可能性があります。一方で、外側に多くの葉っぱがある場合、ユーザーは将来的に素晴らしい機能が来ることを期待しているかもしれません。
  4. 根本的なシステムはどのようにすべきか?
    顧客がインフラの変更を求めている場合、それはプロダクトの長期的な信頼性を確立するために非常に重要な意味を持つことが考えられます。

私たちは、プロダクトツリーゲームが機能の優先順位付けを深掘りするための素晴らしい手法であると考えています。
優先順位付けフレームワークeBook」をチェックしてみてください。プロダクトツリーセッションの実施手順を詳しく解説した「無料マニュアル」もご用意しています。

これらのリソースは、リーンなプロダクトロードマップを作成するための強力なサポートツールとなるはずです。プロダクト開発をより効率的に進め、ユーザーにとって本当に価値のある機能を優先するためにご活用ください。


ワークショップのご案内

優先順位をつける行為は、無駄を省くリーン開発のベースになります。2025年3月30日には、リーン思考と、組織を成長させるためのOKR(目標と成果指標)のワークショップが開催されます。

優先順位の付け方のやり方をこの記事で理解できたとしても、オブザーバーがどのようにサポートするのか、また、剪定するのかの視点や考え方は、実際にワークしながら学ぶものです。ジャナ氏の考え方とレクチャーの仕方を1日で学びましょう!

プロダクトサクセスの設計図:リーンロードマップ×OKRで実現する組織変革ワークショップ
開催日時:2025年3月30日(日)9:00〜

BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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