埋め込みAIアプリ:ChatGPTが本格対応へ
この記事は Luke Wroblewski 氏による「Embedded AI Apps: Now in ChatGPT」についての解説です。(2025年10月14日)
先週まで私は、「AIモデルの内部でアプリを動かすときに発生するUX面・技術面の課題」をまとめていました。しかし、OpenAI が発表した「ChatGPT Apps」によって、これらの課題の多くが解消される可能性が見えてきました。
アプリの作り方・使われ方が大きく変わろうとしている今、これまでの課題と、OpenAI が示した解決策を整理します。
チャットアプリ、リモートMCPサーバー、埋め込みアプリ──呼び方は違ってもポイントは一つ。
ChatGPT の中でアプリが動くようになると、ChatGPT の持つ機能がそのままアプリの能力になるということです。

ChatGPT が検索できれば、アプリも検索できる。
ChatGPT が Salesforce に接続できれば、アプリも接続できる。
一見すると大きな利点ですが、当然ながらいくつかのトレードオフも存在します。
最大の障壁だった「見つけてもらえない」問題
従来、Claude.ai や ChatGPT(開発者モード)に埋め込みアプリを追加するには、
リモートMCPサーバーを手動で接続する必要がありました。
設定画面の深い階層まで何度もクリックしてようやく到達するような構造で、一般ユーザーには導入が非常に難しいものでした。
OpenAI はこれに対して、
- アプリ申請・審査の仕組みを正式に導入
- 一定の品質基準をクリアしたアプリだけが使える仕組みを構築
つまり、ChatGPT版アプリストアの誕生です。
承認されれば、プライバシー同意を経て、ワンクリックでインストール可能になります。
もうサーバー設定を手動で行う必要はありません。
UIが“文字だけ”から大進化:Reactアプリがそのまま動く
これまでの埋め込みアプリは、テキスト表示のみで、
画像もUIも扱えない、ほぼチャット一辺倒の制限された世界でした。
今回のアップデートにより、ChatGPT アプリは
**「iframe 内で React コンポーネントをレンダリング」**できるようになりました。
これにより、
- 画像
- 地図
- 動画
- カスタムUI(ボタン、入力欄、ビューなど)
といった多様なUIを扱えるようになります。
さらに、この iframe は
- フルスクリーン表示
- ピクチャ・イン・ピクチャ(PIP)表示
にも対応し、アプリ固有のUI領域を確保しながら継続利用が可能になります。
とはいえ、アプリの“発見性”はまだ不十分
ユーザーがアプリを使うには、
- ChatGPT でアプリ名を呼び出す
- 「+」 ボタンから選ぶ
- ChatGPT が状況に応じて自動的にアプリを起動するのを待つ
といったステップが必要です。
「どれだけユーザーに見つけてもらえるのか」は、依然として課題として残ります。
技術面の制約も依然として存在
アプリとChatGPTクライアント間の通信には、まだ機能不足があります。
- 自動バックグラウンド更新なし
- サーバーからのプッシュ通知なし
- フロントエンドからサーバーへのファイル送信不可(テキスト文脈のみ渡せる)
デスクトップOSやモバイルOSなら当たり前の機能が揃っていない状況です。
とはいえ、このあたりは今後のアップデートで改善される可能性が高いでしょう。
「週8億ユーザー」という圧倒的な配布チャンス
どのプラットフォームでも、アプリ構築は“配布のしやすさ”と“技術的制約”のバランスで決まります。
ChatGPT は週8億人が使う巨大プラットフォームです。
今回のアップデートで、埋め込みAIアプリのUXと技術面の課題は大きく前進しました。
MCPリモートサーバーは「開発者の実験」から「本物のソフトウェア」へ進化できるか
この流れは、これまでのプラットフォームの歴史と同じです。
- 基盤技術が整備される
- その上に、一般ユーザー向けのUI体験が乗る
先週のアップデートは、この「第2段階」への大きな一歩と言えます。
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