凄腕エンジニアが紹介する書籍から見るエリカホール像:UI/UXリサーチャ/コンサルタント 久松慎一さん

自己紹介をお願いします。

久松 慎一

UI/UXリサーチャ/コンサルタント 久松慎一さん

株式会社テオでWeb・モバイルアプリのエンジニアとUI/UXリサーチャ/コンサルタントをしています久松慎一です。

以前は東京大学の研究員として教育工学を学び、開発研究を軸としていました。主にインターネットやスマートフォンを使った教材開発をしていました。

Webサイトや救急車の中で救急隊の方々が用いる医療クラウドシステム、最近ではGame/VRコンテンツなどのUI/UX設計・実装も行っていて、フリーでもコンサルテイング等を行なっています。

現場で使えるリサーチ方法が学べた

UX Days Tokyo 2017に出演されるエリカ氏の書籍を読まれていると聞きましたが、いかがでしたでしょうか?

案件を頂く場合に開発の仕事から入ることが多く、それまでにも開発をしていて10年以上の悩みがありました。そのため、フリーランスをはじめた頃に、海外の書籍を読み漁っていました。ちょうどその頃、UXとUIの知識をつけるためにいくつかの書籍の1つとして出会いました。

2013年頃に手にした彼女の「JUST ENOUGH RESEARCH(最適なリサーチ方法)」という書籍は、特に後半が面白いです。

前半は、入門向けでもあるのでよくある感じのUI本で少し退屈かなと思ったのですが、章を追うごとに核心に入ってきて、”is what”と”is not what”,”should” と”should not”(何がリサーチで、何がリサーチではないのか?何をすべきか、何をすべきでないのか。)が、具体的に提示されているので日頃のUXサーベイ(インタビュー、アンケート)にもすぐに応用可能です。

彼女はこの書籍を通して、リサーチは、一貫して”good question”ではなく”right question”(良い質問ではなく、適切な質問)と言っているのが印象的でした。論理的で一貫性のある質問をすることによってこそ本質を掘り当てるのだ、と言う意図が感じられました。

Section 8「Analysis and Models(質的データーの分類)」は、本書の山場で必読です。質的データの分類の仕方は毎回大きく悩むところです。それによって、続く因子分析のアプローチ、ひいてはアクション・説得力が大きく変わるからです。Section8を読んですぐにその解が手に入るわけはないですが、トライアルのためのよい準備になると思います。

book

エグゼクティブにリサーチ結果を説得させる”オーガ二ゼーションリサーチ”

手にとった理由は何ですか?

“パソコンオタク”だった私がそもそもユーザビリティのコンサルタントになったのも、「長く使ってもらえるようなものを作りたい」「説得力を持ってデザイン(設計)を説明したい」という思いでした。

特に後者はコンサルタントになってからも大きな課題であり、本書はそのアプローチに役だつと思って手に取りました。

参考になった点をより具体的に教えてください。

この本は定量的評価についてより定性的評価についてのほうが先に書かれており、また多くの章(ページ)が割かれているのが特徴的だと思いました。

かつて大学の研究員をしていた頃、論文にするには定性的評価を汲み上げることよりも定量的評価を積み上げることでしか認められない苦い経験がありました。

論文にはならずともプロダクトの現場では本章の後半で示されているようなフレームワークがあれば現場で説得力を持って定性データを利用できるのではないかと思います。

またこの本では、通常ユーザビリティテストで使われるビデオカメラの収録は意味がないと記載していたので、読んで以来、やめました。実際、スクリーンショットと発話の録音で十分と書かれていたのですが、その通りでした。

スマホのユーザビリティテストにノートPCやiPadを使う方法も紹介されており、(まだやったことがないけれど)やってみたいと思っています。

mailChimpでのリモートユーザビリティをスマホで行う様子の記事

Remote Usability Testing on Mobile Devices

特に印象的だった部分として、企業や組織においてステークホルダーをどうやって巻き込んでいくか?についてにしっかり書かれている本はない中、この書籍では、オーガ二ゼーションリサーチというタイトルがあり、”エグゼクティブに現場からどのようにリサーチ結果を説得させるか”というのもしっかり書かれています。

リサーチャーとして優秀な彼女の視点に興味

書籍やWebを通して、彼女の人物像についてどのようなイメージを持っていますか?

過去、目を引くような特別な機能や演出があるわけではないのだけれど、読んでいくうちにサイトが近づいてくるような、もしくは襟首を捕まれて引き摺りこまれるような感覚に襲われるWebサイトに出くわし、調べてみたら「Mule Design」が関わっているサイトだと言うことが何度かありました。

そう言ったことから、彼女の書籍の他に彼女のMediumもチェックしたり読んでいます。
更新頻度は多くはありませんが他の読者の反応にしっかり答えていてこういうところにもリサーチャー/ユーザービリティテストができる人としての気質が出ているなと思いました。

今回来日されますが、日本のUX業界の方に、彼女からどんなことを学ぶと良いと考えられますか?

インハウスでコミュニティが上手な方が参加すると組織の中の課題がクリアになるのではないかと思います。中でも、UXデザイナー,UI設計者ならば、ユーザテストでの質問の仕方・観察すべき点など徹底的に具体的に理解できるはずです。

特に調査からアクションに繋げていくプロセスで、彼女の書籍の中ではコンテキストを理解しろ、と何度も言っています(“Research is all about context”とまでも)が、コンテキストの捉え方というのがとても難しいと思います。

人間科学的なアプローチをする上では常について回る課題です。取り込むべきパラメータと無視すべきパラメータなど、彼女の視点に強く興味あります。

日本のUXに足りないものは感じますか?もしあれば、教えてください。

UXリサーチのためのチームビルディング、というのが日本では上手く出来ているところがあまり多くないのかなと思います。

agile,Leanと言う言葉が独特のニュアンスを持って普及したからかもしれないですが、

  • 外部に丸投げ
  • 内部チームでマーケティング的な視点に固執してしまっている

極端な実践が多いと思います。

内部スタッフ・外部スタッフ(コンサルタントやフリーランス)がうまく協調した中長期的な成功事例が蓄積されると変わってくるのかもしれないとは思います。

その際に、成功事例だけにフォーカスせず、ミスしたことを価値にできる組織が重要ではないかと考えています。また、内部では問題や課題がわかっていてもそれを言い出しにくい状況にある場合が多く、そのようなケースで私の様な外部のコンサルティングを上手に利用するのは良いのではないでしょうか?(笑)

 

インタビュー後記

インタビューを終え、私も改めてエリカさんに興味が湧きました。彼女が4年前に執筆した本には、今、日本の現場で起こっている組織の課題が既に具体的かつ明確なアプーローチ法が書かれているということ。4年経った現在では更にパワーアップしたエリカさんをまじかで見ることができ、具体的な話を聞くことができると思うと、当日が楽しみです!