あなたはあなたのユーザーではない

最新のThunderbolt(I/Oインターフェイステクノロジー)でインターフェイスを設計しても、ユーザーは1997年のThinkPadを利用して世界を見ています。無限スクロールの実装に手間をかけている間も、ユーザーは最初のビューで止まっているかもしれません。

もしかしたら、ユーザーは色盲かもしれない。そしてもしかしたら、ユーザーはハンバーガーアイコン(モバイルで利用されるるナビゲーションを示すアイコン)を一度も見たことがないかもしれません(あるいは開発者の一人が言うように、ユーザーはベジタリアンなのかも)。

いかに、スキルが素晴らしく、デザインが神がかり的でも、自分のユーザーを理解していないと、人が愛するエクスペリエンスは創り出せません。あなたはDribbble.com(デザイナーが自分のデザインを紹介するギャラリーサイト)上で他のデザイナーに「いいね」をしてもらっているにすぎないのです。

ユーザーが、究極のステークホルダー

私は「Infor」という世界第三位のソフトウェア会社の「Hook & Loop」というクリエイティブラボで働いています。

エンタープライズアプリケーションはサイロ型(情報システムでいう巨大縦割り構造のこと)で作成されていました。

プロダクトマネージャーが機能の一覧を広げ、開発者は動作がフロントとセンターできちんと動くようにし、その後デザイナーが(もし関わっているならば)技術必要条件が画面上でなんとか保たれるよう努力をしていました。

プロジェクトの誰もが自分の中で制作してしまい、ソフトウェアを使う人々(看護師、製造ライン上の作業員、店員ー端的に言えば働く人々)がステークホルダー(利害関係者)である、ことを考えもしませんでした。ユーザーが、ステークホルダーだと考えていなかったのです。

3年前、Inforは、自社製品のユーザーエクスペリエンスを強化すると公約を掲げました。Hook & Loopの私たちはその使命を果たすために、製品開発の伝統的なサイロ型開発を打破する必要があり、決まり事を超え常にユーザのために主唱するため、すべての役割を追求しました。

どのようにして我々はそれを達成することができるのか?
それは、ユーザーを知ることです。

私達は研究結果をデザイナーや情報アーキテクト、開発者と共有することだけでなく、彼らを現地へ送ることにも価値があると信じています。ユーザー調査の他のどのタイプより、現地での実際の体験は「わたし達(制作者)は我々のユーザーではない」、という事実を確かなものにしてくれます。

ユーザーを知ることです!

最初にInforのUIパラダイムを再設計したとき、我々はネガティブスペースより、正確には、ホワイトスペースの重要性を強調しました。ほとんどのエンタープライズアプリケーションは、データとフィールドの列に列が並びぎゅう詰めな状態です。我々は、情報を呼吸できるようなすっきりとしたアプローチを支持しました。

しかし、我々が新しいパラダイムをデプロイしたあとすぐ、ユーザーからの意見が届きました。1日8時間・週五日、10年もののモニターで作業している間に、白いスクリーンが目を痛めてくるというのです。これは我々が自分たちの作業場では確実に再現しなかったであろう経験でした。わたし達(制作者)は本当に我々のユーザーではないのです。

これが、わたし達(制作者)が全ての案件において現場訪問を始める理由です。ユーザーを観察し彼らが働く場所を見ることは、我々を彼らの世界へ入り込ませ、どのようにして我々が彼らによりシームレスな体験を与えることができるかについてきちんとした根拠から考えることができます。

企業ユーザーが使っている設備、それは大抵の場合何世代も古いものですが、これらについて詳しくなるようにします。わたし達(制作者)は彼らのオフィスの照明について精通するようになります。コンピュータ外のどんなものが彼らのワークフローに影響を与えるか、理解します。

あるユーザーは、常に何かをプリントアウトします。多くは、名刺からデータを入力するために週に何時間も費やします。わたし達(制作者)は、彼らがどんな時に、より良いインターフェースが必要なのかを理解します。
それはデスクにいるときか、会議中か、現場へ行っている時か。それぞれのシチュエーションは違います。なぜならそれぞれのユーザーグループが違うからです。

多様なユーザーのためにエクスペリエンスを設計することで、わたし達(制作者)のお気に入りのデザイン要素の多くは本当にただの美的松葉杖でしかなかった、ということに我々は気づきました。

真の使いやすさを実現するために、我々の最善慣行を脇へ置き、試行錯誤を積極的に取り入れました。現在、すべてのプロジェクトはユニークな問題を解くための実験であり、我々は失敗することを恐れないようにしています。

なぜなら時には失敗が、予期せず最適なソリューションを引き出してくれるからです。プロセスにおいて、すべての人が、すべてにおける役割のなかで、すべての意思決定に疑問を投げかけることをわたし達(制作者)はすすめています。そして、コンセンサスを得られない時は、ユーザーのもとへ戻るのです。究極のステークホルダーに。

菊池 聡

UX DAYS TOKYO (代表)
見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通いニールセンノーマンの資格を取得。
業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。