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「Subject-to-AI」でAIをストーリーに取り入れる

AI駆動型プロダクトのためのストーリーボード作成 ― 第3回:AIを表現する「Subject-to-AI:サブジェクト・トゥ・AI」でAIをストーリーに取り入れる

「UX for AI」のグレッグ・ヌーデルマン(Greg Nudelman)氏のブログ記事の翻訳です。
原文:https://www.uxforai.com/p/how-to-tell-your-story-using-subject-to-ai-and-other-storyboard-transitions-part-3
2024年8月15日

第3回では、ストーリーボードの物語がパネルからパネルへ進む――「切り替え」の仕組みについて学びます。これらの「切り替え」は物語の文法的な役割で、物語にさまざまな効果を加えることができます。もちろん、AIをどのように登場させるかも紹介しています。

これらの文法は、カートゥーン作家であるスコット・マクラウド(Scott McCloud)氏が、6種類の切り替えを、著書『Making Comics』 の中で分類しました。それを参考に、「UX for AI」のストーリーボードでは以下、4種を紹介します。

  • アクション・トゥ・アクション:同じ登場人物の一連の動作をつなぐ。
  • サブジェクト・トゥ・サブジェクト:同じ場面の中で視点を別の人物に移す。
  • シーン・トゥ・シーン:時間や場所を大きく飛ばす。
  • サブジェクト・トゥ・AI:人物とAIのやりとりを表す。

例として、前回までに取り上げた「Mood Ring」のストーリーボードを引き続き使用します。これは、シャイな青年がAIの助けを借りて恋を見つける物語です。

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アクション・トゥ・アクション

まず、アクション・トゥ・アクションは、1人の登場人物が1つの連続した動作を示しています。例えば、1コマ目の導入のシーン、次の2コマ目で青年がコーヒーを飲む場面へ移る部分がそれに当たります。

また、青年がついに勇気を出して女性に自己紹介する場面もそれにあたります。

ストーリーボード 付箋2枚 Coffee Nerd

ストーリーボード グラス 付箋2

いずれの場合も、物語を進めるために登場人物が取る行動そのものを指します。連続したシーンが並べられるだけでちゃんと物語が進んでいる感じがします。

サブジェクト・トゥ・サブジェクト

サブジェクト・トゥ・サブジェクトは、映画のカメラアングルが切り替わることをイメージしてください。同じシーンの中で、青年が一人でコーヒーを飲んでいる表情を写した次のコマで、女性が一人で同じようにコーヒーを飲んでいる表情や様子を映す。こうすることで、二人のやり取りや空気感を描くことができます。

ストーリーボード 付箋2枚 飲んでるところから変化

ただし、ストーリーボードの場合、映画と異なるため、あまり多くの場面を作りだす必要はありません。ストーリーはできるだけ簡潔に、4〜6枚のパネルで表現するのが理想です。

シーン・トゥ・シーン

シーン・トゥ・シーンは、タームマシーンみたいなものです。これは「その日の夜」「自宅で」など、時間や場所を大きく飛ばすことができます。物語のテンポをよくすることができます。

Mood Ringの物語では、若いカップルがハート型の風船を手に夕日に向かって歩いていく場面がありますが、これは、コーヒーショップの出来事の「少し後」であり、しかも「別の場所」で起きています。

ストーリーボード 付箋紙
ハートの風船を男女がもつ

シーン・トゥ・シーンにおいては、キャプション(文字表現)を使うことができます。しかしそれ以外の場面でキャプションを多用するのはおすすめできません。無理やりナレーションで説明すると、読者が物語から引き離されてしまうからです。その代わりに、登場人物の行動や表情、セリフを通じて物語を進めましょう。

サブジェクト・トゥ・AI

AIプロダクトデザインで重要なサブジェクト・トゥ・AI は、人間とAIとのやり取りを描く特別な切り替えです。ポイントは、AIを単なる道具じゃなくて、物語に登場するもう一人のキャラクターとして扱うことです。ユーザーからAIに視点が移ることでAIとの対話が生き生きとしてきます。

サブジェクト・トゥ・AI の例

以下は、タコの怪物が現れて困っている主人公:ロビンソンと、AIロボットのB-9とのやり取りをストーリーボードにしたものです。

ストーリーボード B-9 付箋5枚

  1. タコの怪物が現れる
  2. ロビンソン(人間):「あああああーーー!!!」
  3. B-9(AIロボット):「あぶない、ロビンソン、あぶない」
  4. ロビンソン(人間):「そんな離れたところにいて助けになるのか?」
  5. B-9(AIロボット):「そんなの知りません」

スマート スピーカーAlexa(アレクサ)を登場させたサブジェクト・トゥ・AI のストーリーボードの例も描いてみました。

ストーリーボード 付箋5枚
  1. タコの怪物が現れる
  2. ロビンソン(人間):「あああああ!!!」
  3. アレクサ(AI):「ケニーGが新しいアルバムをリリースしました」
  4. ロビンソン(人間):「それが、助けになるのか?」
  5. アレクサ(AI):「そんなの知りません」

アレクサ(AI)はロビンソンの状況を理解せず、ケニーGの新しいアルバムをお勧めしています。でも、タコの怪物に襲われている最中に意味はないことが表されています。前例と同じ結末ではありますが、アレクサがコンテキストを理解していないことがわかります。

この2つのストーリーボードには共通する付箋があります。つまり、私たちは付箋を再利用して別のストーリーボードを作ることができます。付箋を使う理由でもあります。何度も描き直す必要はありません。円を描くときはコインやオフィスの小物を使い、直線は定規や付箋の束で引けば十分です。時間とコストを効率的に使いましょう。

AIの描写は映画の主人公をデザインするように

AIの表現方法は何でもOKです。映画「アイアンマン」の主人公トニースタークをデザインするようにデザインしましょう。以下のものはどうでしょう。

  • 惑星規模の巨大AI(マトリョーシカ・ブレイン https://en.wikipedia.org/wiki/Matrioshka_brain)
  • 人型ロボット(ターミネーター)
  • 宇宙船や施設を制御するAI(HAL-9000や『スタートレック』のコンピューター)
  • 別次元に存在する非実体のAI(『ハイペリオン』『攻殻機動隊』)
  • 私は『宇宙家族ロビンソン(アメリカのSFドラマ)』のジュピター2号に登場する環境制御ロボットB-9をよくモデルに想像します。あの有名なセリフ「危険だ、ウィル・ロビンソン、危険だ!」で知られるロボットです。

まとめ

ストーリーボードは、ユーザーの体験を示すものであるため、必ずしもプロダクトデザインを表すものではありません。第2回で説明していますが、ユーザーの心理が現実と離れているものは価値を産まないので注意が必要です。

ストーリーボードについてさらに深く学びたい方には、Nathan ShedroffとChristopher Noesselによる『Make It So: Interaction Design Lessons from Science Fiction』(https://a.co/d/bjYuDPx) を強くおすすめします。

AI駆動型プロダクトのためのストーリーボード作成 ― 第4回に続く

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UX DAYS TOKYO (代表) 見た目のデザインだけでなく、本質的な解決をするためにはコンサルティングが必要だと感じ、本格的なUXを学ぶため”NNG”に通い日本人としてニールセンノーマンの資格を取得。 業績が上がる実装をモットーにクライアントから喜ばれる仕事をしています。

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