TOP お知らせ UX DAYS 本編 「アイディアがあるだけじゃダメ!」NASA流・イノベーションのリアルな学び

「アイディアがあるだけじゃダメ!」NASA流・イノベーションのリアルな学び

─ 実践者が語る、現場で活かすイノベーションの極意

UX DAYS TOKYO 2025 チャールズさんのワークショップレポート

こんにちは!UX DAYS TOKYO オーガナイザの大本です。
UX DAYS TOKYO 2025に開催されたのワークショップは、元NASAであり、元アップルのチャールズさんのワークショップを受講しました。

日本ではここ数十年、イノベーションが起こりにくいと言われる中で、まさに今受けておくべき内容だとおすすめしていたこのワークショップ。とはいえ近年のAIブームもあって、GoogleのAIを活用したワークショップが人気を集めていました。
しかし、前日のカンファレンスを受講して「やっぱりチャールズさんのセッションに参加したい」と変更する人も現れ、最終的には私を含む8名での開催に。人数こそ少なかったですが、お茶を片手にじっくり話し合えるスタイルは、この規模だからこそ実現できたもので、結果的にはとても贅沢な時間となりました。

イノベーションで大事なのは「アイディアだけ」じゃない

アイディアは誰にでもある。でも、それだけではイノベーションにはならない。」そんな印象的な言葉から始まった、チャールズさんのワークショップは、脳内が一新されるような感じを受けました。

私自身、アイディアが次々と浮かぶタイプではあるのですが、それを実現しなければ意味がない。それは当たり前のように思えるけれど、つい忘れてしまいがちな視点でした。私はどこかで、「アイディア=イノベーション」と思い込んでいたのだと気づかされました。

この1日のワークショップで私たちは、「思いつき」を「価値ある成果」に変えるための具体的な考え方とアプローチを学びました。それは、実際に企業の中でイノベーションを生み出してきたチャールズさんだからこその、深く実践的な学びでした。

アイディアだけでないイノベーションに必要なのは”組織に届ける力”

日々生まれる大小さまざまなアイディア。
それをどうやって職場やプロダクトに活かせばいいのか。どう伝えれば、組織に採用されるのか。
あるいは、上層部から出てきたアイディアをどう形にしていけばいいのか――。

つまりコミュニケーション!
このワークショップでは、アイディアを出すだけで終わらせず、それを組織の中でどう機能させていくかという実践的な視点を中心に展開されました。さらに、アイディアを形にする前に「テストする」という重要なステップについても丁寧に学ぶことができました。

アイディア出しの“思考のクリニック”

印象的だったのが、参加者一人ひとりのプロダクトやビジネスに対してチャールズさんがその場で“クリニック”をしてくれたこと。
小売業、自動車メーカー、測量機器メーカーなど、多様な業界の参加者が、それぞれの課題やアイディアを持ち寄り、チャールズさんのフィードバックを受けながら「それをどうイノベーションにつなげるか?」を深く掘り下げていきました。(贅沢〜ぅ)

小売業の事例では、アマゾンの戦略やNASAで実際に起きた失敗事例をどう自社の現場に活かせるかといった話もあり、NASAで働いた経験のあるチャールズさんならではの説得力のある話が、参加者の納得感を高めていました

特に、チャールズさんの失敗としてNASAに2回解雇されたこともまさに、アイディアだけでは駄目で上司・ステークホルダとのコミュニケーションが重要であるということでした。その失敗を元に、今ならどうすべきだったか、という考え方についても議論されました。

イノベーションはアイディアより、“コミュニケーション”が大切

私たちは、プロダクト進行の問題があれば、問題を改善することだけが自分の仕事だとフォーカスしてしまっていると気がつくことができました。できないものを出来ないと表面化せずに、自分の中で抱えてしまうのです。ですが、チャールズさんは、以下のように解説し、上司やチームメンバーにリスクを伝えることが、まずは仕事であることを、以下の言葉を持って丁寧に教えてくれました。

(チャールズさんの助言)
あなたの仕事、そしてあなたが果たすべき役割は、リスクを明確に伝えること尽きます
それさえできていれば、あとは2つの可能性しかありません。

物事がうまくいくか、うまくいかないか。
ハッピーエンドになるか、悲しい結末になるか。

どちらに転んだとしても、リスクをきちんと伝えていれば、あなたの役目はきちんと果たされたことになります。

では、どのようにそれを伝えるかを考えてみましょう。
まず、上司に明確に伝えること。そして、何らかの形で記録に残すことが大切です。
記録が残っていれば、たとえ最悪の事態になったとしても、「自分は最善を尽くした」と胸を張って言えるでしょう。

メールなどでリスクを伝える際には、想定されるすべてのリスクを具体的に書き出しておきましょう。また、その情報は、上司をはじめ他の関係者にも簡単に共有できるようにしておくと効果的です。
そうすれば、情報がチーム全体に行き渡り、関係者全員がリスクを把握した上で、「リスクを軽減するのか、受け入れるのか」という判断ができるようになります。(ここまで)

これは単に「仕事としてリスクを伝える」だけでなく、自分のミッションを意識しながら、何をすべきかを検討し、その上で上司にリスクを伝えるという行動が、仕事の第一歩として紹介されていました。

立場によって受け取り方は異なる——だからこそ、「どうすれば伝えられるか」を工夫することが重要です。

コミュニケーションを上手に行うには、相手の立場を理解することが欠かせません。請負での立場や、所属する部署・職位によって、同じ内容でも伝わり方が変わります。そのため、「どう伝えれば伝わるのか」を考え、具体例を交えながら伝える方法についても解説されました。

ワークショップでは、伝え方のロールプレイなども実施され、参加者が「なるほど」と納得し、自信を持っていく様子が印象的でした。さらに、理解が深まるにつれ、質問もより実践的・具体的なものへと進み、「どうやってアイディアをテストするのか?」「相手がどう理解したかをどう確認するのか?」など、現場での経験や課題に根ざした活発な議論が展開されていました。

チャールズさんは実践例として、ビジョンデッキを用いてステークホルダーにコンセプトをプレゼンし、さらには経営幹部(最高情報責任者)に直接報告したことで、承認プロセスが大幅にスピードアップしたという事例も紹介してくれました。

ゆっくり、じっくり。思考がほぐれていく学びのスタイル

ワークショップは、チャールズさんの穏やかな語り口で進みました。焦らせることなく、考える時間をしっかり確保してくれるそのスタイルは、「答えをすぐ出す」のではなく「思考を耕す」ことを目的にしているようでした。

そのため、受講生たちの思考がみるみるうちに柔らかくなり、新たな発想へとつながっていく様子が目に見えて分かる、そんな時間になりました。

そして、この体験を通して、コミュニケーション方法を学ぶことができたと感じました。事実、参加者の中には、それを鋭く察知し、チャールズさんの言葉の運びや、雰囲気づくり、お茶を飲むというワークショップスタイルについて非常に感銘を受けていた方がいました。その方の言葉でより私は、このワークショップの良さを感じることができました。

リアルだからこその学び

お茶を飲みながらリラックスした雰囲気で進んだ今回のワークショップは、まるで1on1のような贅沢な時間でした。こうした“場の空気”や、ふとした会話の中にこそ、深い気づきがあるものです。
オンラインでは味わえない、リアルな場だからこそ得られる学びがありました。

まとめ

冒頭でも述べたように、私自身、「革新的なアイディアがあれば、それだけで価値がある」と思い込んでいたところがありました。
しかし今回の学びを通じて、プロダクトを前に進めるためには、企業のミッションを軸に、ステークホルダーと丁寧にコミュニケーションを取ることが非常に重要であると実感しました。

マインドセットが整っても、それを実際の現場で活かせるかどうかは、自分次第です。
ただ受講して終わるのではなく、この貴重な体験と学びを次の行動につなげていくことが、参加者一人ひとりに求められているのだと感じました。
そして私自身も、今の仕事をどう進めていくべきか、多くのヒントを得ることができ、「実際にやってみよう」と思えるきっかけになりました。

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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