この記事は、UX DAYS TOKYO 2025に来日するJanna Bastow(ジャナ・バストウ)氏が作った「ProdPad」のブログ記事です。講演内容やワークショップをサポートするものです。予習にお役立てください。

Simon Cast (サイモン・キャスト )
原文(2021年9月8日 ):https://www.prodpad.com/blog/prioritization-lean-roadmap/
タイムライン型ロードマップの「暗黙の仮定」が優先順位を歪めるリスクを考えたことはありますか?
リーン(LEAN:「無駄がない」「無駄をなくす」)なロードマップ形式を採用する以前、私たちは頻繁にロードマップの項目を先送りしたり、順序を変更したりしていました。
本来、提供内容やその順序・タイミングを明確に示すはずのロードマップが、常に見直しを迫られていたのです。
この頻繁な変更の背景には、リリース後のフィードバックを通じて、当初の仮定が誤りであったと判明するケースが多かったことが挙げられます。
優先順位付けの基礎となる仮定が崩れるたびに、ガントチャート形式のロードマップ全体に影響が及び、度重なる修正が必要となりました。その結果、タイムライン型のロードマップは次第に意味をなさなくなりました。
これらの経験から、プロダクトロードマップを真に価値あるものとするためには、不確実性を受け入れ、変化を前提とした柔軟な姿勢が不可欠であるという重要な教訓を得ました。
タイムラインロードマップにおける課題

タイムライン型ロードマップやガントチャートの問題点を理解していますか?
タイムライン形式のロードマップやガントチャートは、「何を最初に、次に構築すべきか」があらかじめ明確であることを前提としています。
しかし実際には、プロダクトマネージャーは膨大なバックログを抱えており、それらをどの順序で実行すべきかについて、明確な答えを持っていないことがほとんどです。
プロダクトマネージャーが優先順位を決定する際に使用するRICEスコアやWeight Shiftedなどのフレームワークは、「この機能が最も重要で、次に優先すべきはこれ」といった、絶対的な優先順位が存在することを前提としています。
そして、タイムライン形式やガントチャート形式のロードマップは、こうした優先順位が確定し、時間の経過によって変化しないという前提に基づいています。これらのロードマップでは、機能を時系列で順番に配置するため、優先順位の「絶対性」と「不変性」が求めらます。
しかし、実際のプロダクト開発では、市場環境の変化やユーザーの成長に伴い、優先順位は絶えず変動します。ユーザーのニーズや市場の力学が刻一刻と変わる中で、機能の開発順序を固定することは、現実的ではありません。
このため、タイムライン形式のロードマップやガントチャートは、真のロードマップとは言えず、単なる「実装すべき機能の一覧」に過ぎない場合があります。
無駄のないロードマップを描き、不確実性を柔軟に受け入れる

Current(現在)、Near Term(近い将来)、Future(未来)
リーンなロードマップの柔軟性と問題解決へのフォーカス
一方、リーンなロードマップは、不確実性を前提とし、変化を受け入れる柔軟性を重視します。そのため、具体的な機能ではなく、解決すべき「問題」に焦点を当てる点が特徴です。
リーンなロードマップにおいても、どの問題にいつ取り組むかという順序を決定する必要があります。しかし、RICEやWeight Shiftedといったフレームワークは、絶対的な優先順位を前提としているため、リーンなアプローチには適していません。リーンなロードマップでは、他の戦略的な課題と相対的に比較しながら、優先順位を柔軟に調整していくことが求められます。
問題の優先順位を決定する際には、それが製品や企業の戦略にどのように貢献するかを評価することが不可欠です。さらに、市場の動向やプロダクトへのフィードバックを考慮することで、より精度の高い判断が可能になります。
詳細については、こちらの記事『Putting it all Together – Creating a Lean Objective-Based Product Roadmap』をご覧ください。
概要
プロダクト開発の計画を立てる際、ロードマップにはいくつかの種類があります。中でも、タイムライン形式のロードマップは、開発の順番や期日が明確に設定されているため、一見すると分かりやすく、管理しやすいように思われます。
しかし、実際の製品開発では、予定通りに進まないことが多く、優先順位も常に変化するのが現実です。そのため、タイムライン形式のロードマップでは、こうした変化に柔軟に対応することが難しく、計画に固執しすぎることで、かえって混乱を招く可能性があります。
こうした課題を踏まえ、近年では「リーンなロードマップ」や、相対的な優先順位付けを重視するアプローチが注目されています。これらの手法は、変化に柔軟に対応でき、より現実的な製品開発の進め方として、多くの企業に採用されています。
Read more: Feature prioritization principles in Product Management(製品管理における機能の優先順位付けの原則)
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